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 2人で深夜まで一緒にデータを取って整理して、論文を探して、研究について議論して。
 資料を探しに遠い場所の農場まで行って、その帰りの飛行機が暴風雨で飛ばなくなり、近くのホテルで一緒の部屋に泊まった事もあった。
 高蔵君は色とりどりの女の子を相手にしているから、佳奈みたいな華やかさもない私の事なんて女扱いしていないだろうと思って何の警戒も無く同じ部屋に泊まった。
 高蔵君はずっと違う部屋にしようかと言ってきたけれど、ダブルの部屋の安さに釣られて同じ部屋の同じベッドに寝ることにしてしまった。高蔵君が「先輩の事は何もしませんから安心してください」と言うので、「そうだね。私、おっぱいだけはちょっと自信あるけど、他が残念だから襲う気も起きないよねぇ」と冗談で返した。

 実際に間違いなんて何も起きなかった。
 というか私が疲れ過ぎて直ぐに寝てしまったからその時の高蔵君の様子はよく覚えていない。

 あの頃は楽しかったな。
 就活も上手くいって、卒業研究も成果が出せそうな資料が集まって。優秀な後輩もいて。
 今頃高蔵君が佳奈に嵌ってしまうとは思いも……ちょっとは思ったけれども、私の方に何かさせてくるとは思っていなかったのだ。
 細マッチョイケメンの高蔵君は佳奈のどストライクなのだから。こんな関係になる前に、早く卒業して少し仲のいい先輩後輩の関係を続けていたかった。

 本棚に、高蔵君から借りた本があった。
 ずっと前に読み終わっていたけれども、何度も読み返していた本。
 高蔵君の家に行った時に借りたものだ。これはちゃんと返しておかなきゃ。
 その他にも、高蔵君の服や持ち物が時折出てくる。
 この2週間で私の部屋には高蔵君の持ち物が沢山増えた。それを分けながら、ダンボールにすぐに使わないものを整理していく。

 きっと弟がいたらこんな感じなんだろうな、と思っていた。本当に弟になるかもしれないんだ、としみじみ思う。
 でも高蔵君が佳奈と籍を入れる頃には、私は実家と絶縁しているだろうからきっと結婚式も参加できないだろうな。
 結婚かぁ。
 佳奈はちゃんと高蔵君のご両親とやって行けるのだろうか。
 高蔵君のお家にお邪魔した時、高蔵君のご両親ともお会いした。高蔵君のお母さんが料理を振舞ってくれると言うのでお手伝いしたら、すごく切り方が上手で手際がいいって褒めて貰えたな。高蔵君のお母さんはタカクラ食研主催のお料理教室で主任講師を務めるほどお料理のプロだから凄く嬉しかった。高蔵君のお父さんにも、私の研究の事にすごく興味を持って頂いて……
 大学生活の事や研究の事でずっと話は尽きなかった。

 とっても優しいご両親だった。あの人達が本当の両親だったら良かったのにな、と思ってしまうほど。
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