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本編とは関係あるようでない小話
シアの怪我ネタ
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あ、やばい。
シアがそう思った次の瞬間には相手の尻尾に弾き飛ばされていた。
「シアくん!」
ユージーンの叫び声とこちらへ駆け寄ってくる動きが妙にゆっくりと見えて、背中に大きな衝撃が走る。
「がっ、は」
やばい、とシアはまた思った。
ぶつかったのとは違う、何かが食いこんで皮膚を突き破る感覚があった。
尖った岩でもあったのか。
ごぽり、と口から何かが漏れて、鉄臭い匂いでそれが血だと理解する。
「シアくん動いてはいけません」
「し、しょ…」
「喋らないで」
ユージーンは眉を顰め、何かを唱えたあと「一瞬、我慢してくださいね」と言う。
シアが頷くのを確認してから、シアの背中から突き刺さっている岩を砕いて、体に残らないように取り除く。
「う“あ」
「とりあえず傷を塞ぎます」
(…中まで治療するのはきびしいですね)
使うことはできても、ユージーンは治療系の専門魔術師ではないし、適正が高いわけでもない。
できるだけ早く、きちんとした医者に見せたい、とユージーンは小さくため息をついた。
「ししょ、あいつ」
「わかっています。すぐに片付けますから。あと、シアくんは治ったらお説教ですよ?」
「うぇ、…はぁい」
とりあえず、自分の大事な弟子を傷つけたモンスターはぼこる。
言語化はしていないものの、ユージーンはそう決めて、モンスターのまわりに結界を張る。
(結界?)
シアがぼんやりと霞む目でユージーンの魔術展開をみて首を傾げる。
が、次の瞬間にはちゃんと理解した。
結界の中が高温すぎて青くみえる炎で満たされたからだ。
一瞬で焼け焦げ崩れていくモンスター。
(師匠、キレてる)
傷と出血のせいでクラクラしてきた頭でそう理解したあとは、その事実に少しだけ嬉しくなって、この後に待っているお説教を思い出して、気が重くなる。
「さて。シアくん、意識飛ばしていいですよ」
「え?」
「ちゃんと運んであげますから。安心して。おやすみなさい、シアくん」
ユージーンがそうつぶやいてシアの目に手を翳し、シアの意識はそこで途切れた。
シアがそう思った次の瞬間には相手の尻尾に弾き飛ばされていた。
「シアくん!」
ユージーンの叫び声とこちらへ駆け寄ってくる動きが妙にゆっくりと見えて、背中に大きな衝撃が走る。
「がっ、は」
やばい、とシアはまた思った。
ぶつかったのとは違う、何かが食いこんで皮膚を突き破る感覚があった。
尖った岩でもあったのか。
ごぽり、と口から何かが漏れて、鉄臭い匂いでそれが血だと理解する。
「シアくん動いてはいけません」
「し、しょ…」
「喋らないで」
ユージーンは眉を顰め、何かを唱えたあと「一瞬、我慢してくださいね」と言う。
シアが頷くのを確認してから、シアの背中から突き刺さっている岩を砕いて、体に残らないように取り除く。
「う“あ」
「とりあえず傷を塞ぎます」
(…中まで治療するのはきびしいですね)
使うことはできても、ユージーンは治療系の専門魔術師ではないし、適正が高いわけでもない。
できるだけ早く、きちんとした医者に見せたい、とユージーンは小さくため息をついた。
「ししょ、あいつ」
「わかっています。すぐに片付けますから。あと、シアくんは治ったらお説教ですよ?」
「うぇ、…はぁい」
とりあえず、自分の大事な弟子を傷つけたモンスターはぼこる。
言語化はしていないものの、ユージーンはそう決めて、モンスターのまわりに結界を張る。
(結界?)
シアがぼんやりと霞む目でユージーンの魔術展開をみて首を傾げる。
が、次の瞬間にはちゃんと理解した。
結界の中が高温すぎて青くみえる炎で満たされたからだ。
一瞬で焼け焦げ崩れていくモンスター。
(師匠、キレてる)
傷と出血のせいでクラクラしてきた頭でそう理解したあとは、その事実に少しだけ嬉しくなって、この後に待っているお説教を思い出して、気が重くなる。
「さて。シアくん、意識飛ばしていいですよ」
「え?」
「ちゃんと運んであげますから。安心して。おやすみなさい、シアくん」
ユージーンがそうつぶやいてシアの目に手を翳し、シアの意識はそこで途切れた。
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