43 / 49
43
しおりを挟む
2人が目覚めたのは翌日の昼を過ぎた頃だった。
シアは気絶するように眠ってしまったから、いつのまに洗浄魔法をかけられて、いつのまにベッドに運ばれたのか全く記憶がないのだが、確かにベッドで、同じベッドの上で2人は一緒目覚めた。
「シアくん、もうちょっと寝ませんか」
「!!? 師匠なんで服着てねぇの!?俺もだけど!」
「着替える力なんて残ってませんでしたし、シアくんは寝てましたし」
シアの横で気怠げに微笑むユージーンは、妙に色っぽく、シアはそそくさとベッドから出ようとする。
「どこ行くんですか」
「え、いや」
ユージーンは寝転がったまま、こいこいと手招きして、シアは少し考えてから、それに従ってベッドに戻る。
布団を二人で被り直して、ユージーンはシアをぎゅう、と抱き締めた。
「師匠?」
「昨日できなかった話、このまましていいですか」
「ここで!?素っ裸で!?」
シアの反応にユージーンは薄く笑って、「改まりすぎると、私が言えなくなりそうなんですよ」と返す。
心の中だけで(それに、これは君の体温のそばで話したい)と付け足す。
「そ、そういうもん?」
「そういうものです。…、私の話もですし、…シアくん、君の話もあるんですよ」
静かな声には悲しみが滲んでいて、シアは気づく。
自分の話のほうも“いい話”ではないのだと。
「わかった」
ぎゅう、とユージーンを抱きしめ返すと、ユージーンはほぅ、と一つ息を吐いてから、ゆっくりと口を開いた。
「まず、シアくんが昨日どれくらい聞いていたか分からないので、私の話からしますね」
「うん」
神妙に頷くシア。
ユージーンは微笑みを作って、シアの髪を撫でながら話だす。
「私の解呪の条件は、“愛し、愛された人に殺されること“でした。シエル曰く、まず間違いないだろうと」
「愛し、愛されたひと」
「シアくんのことですね」
「っっ」
かぁ、と赤くなるシアに、可愛いなぁとユージーンは思う。
あれだけ体を重ねていても、心はずっと素直なままだ。
「つまり、シアくんに殺されれば、私は死ねる、というわけです」
「っ、師匠、俺…」
何かを言いかけたシアを制して、ユージーンは続ける。
「その答えは、シアくんの話も、してからにしましょう」
ユージーンの目が悲しげに揺れて、それが、とても美しくてシアは息を呑んだ。
笑っている顔の方が好きだけれど、ユージーンは憂う顔の似合う人だな、と言語化できているわけでないがシアはそう感じていた。
今まで自分に見せてこなかった表情だから、余計にドキドキとしてしまうのかもしれない。
その顔から自分に告げられようとしている話が決して明るいものでないことはわかるのに、シアはそんなふうに思ってしまった。
***
今日は短めです。
「シアくん、もうちょっと寝ませんか」
「!!? 師匠なんで服着てねぇの!?俺もだけど!」
「着替える力なんて残ってませんでしたし、シアくんは寝てましたし」
シアの横で気怠げに微笑むユージーンは、妙に色っぽく、シアはそそくさとベッドから出ようとする。
「どこ行くんですか」
「え、いや」
ユージーンは寝転がったまま、こいこいと手招きして、シアは少し考えてから、それに従ってベッドに戻る。
布団を二人で被り直して、ユージーンはシアをぎゅう、と抱き締めた。
「師匠?」
「昨日できなかった話、このまましていいですか」
「ここで!?素っ裸で!?」
シアの反応にユージーンは薄く笑って、「改まりすぎると、私が言えなくなりそうなんですよ」と返す。
心の中だけで(それに、これは君の体温のそばで話したい)と付け足す。
「そ、そういうもん?」
「そういうものです。…、私の話もですし、…シアくん、君の話もあるんですよ」
静かな声には悲しみが滲んでいて、シアは気づく。
自分の話のほうも“いい話”ではないのだと。
「わかった」
ぎゅう、とユージーンを抱きしめ返すと、ユージーンはほぅ、と一つ息を吐いてから、ゆっくりと口を開いた。
「まず、シアくんが昨日どれくらい聞いていたか分からないので、私の話からしますね」
「うん」
神妙に頷くシア。
ユージーンは微笑みを作って、シアの髪を撫でながら話だす。
「私の解呪の条件は、“愛し、愛された人に殺されること“でした。シエル曰く、まず間違いないだろうと」
「愛し、愛されたひと」
「シアくんのことですね」
「っっ」
かぁ、と赤くなるシアに、可愛いなぁとユージーンは思う。
あれだけ体を重ねていても、心はずっと素直なままだ。
「つまり、シアくんに殺されれば、私は死ねる、というわけです」
「っ、師匠、俺…」
何かを言いかけたシアを制して、ユージーンは続ける。
「その答えは、シアくんの話も、してからにしましょう」
ユージーンの目が悲しげに揺れて、それが、とても美しくてシアは息を呑んだ。
笑っている顔の方が好きだけれど、ユージーンは憂う顔の似合う人だな、と言語化できているわけでないがシアはそう感じていた。
今まで自分に見せてこなかった表情だから、余計にドキドキとしてしまうのかもしれない。
その顔から自分に告げられようとしている話が決して明るいものでないことはわかるのに、シアはそんなふうに思ってしまった。
***
今日は短めです。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】姉の彼氏がAV男優だった
白霧雪。
BL
二卵性双生児の鳴現と恵夢。何処へ行くにも何をするにも一緒だった双子だけれど、ある日、姉の鳴現が彼氏を連れてやってくる。暁と名乗った五つも年上の色男は「よろしくね」と柔らかく笑った。*2017/01/10本編完結*

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる