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「ああ、終わりました、か…」
戻ってきたシアの目が赤い様子をみて、ユージーンは眉を寄せる。
「ちょっとシエル、私の弟子を泣かせたんですか」
「うん、ばっちり!」
シエルが悪びれもなく笑うものだから、ユージーンは深くため息をついた。
「で、結果は…」
「うん。ちゃんと伝えてあげるから、次はユージーンが奥に来てよ」
「あの汚い部屋にですか」
「えー、失礼だなぁもう」
笑いながらユージーンの返事を待たずにシエルは奥の部屋へを入っていく。
ため息をついてから、ユージーンも立ち上がり、
「シア君、ちょっとここでゆっくりしていてください。ダイス、頼みます」
とシエルに続く。
パタン、と扉を後ろ手で閉め、ユージーンはため息をついた。
「その様子だと、ダイス君から聞いたの?解呪の方法」
「…ええ」
この部屋は特殊な魔法がかけられていて、外に音が漏れることはない。
だから声を潜めないシエルを咎めはしなかったが、ユージーンからもう一度ため息が溢れる。
不死である自分が嫌だった。
ちゃんと死にたかった。
今だって死にたいという気持ちは消えていない。
けれど。
「“愛し、愛される人に殺されること”かー。真実の愛がキーだなんて、わりとオーソドックスな解呪法だったね」
シエルがいつの間に持ってきたのか、シアに出したのは違う飲み物が入ったカップをユージーンに渡す。ユージーンは素直にそれを受け取り、ひと口のんだ。
「でも、それが本当に正しい解呪法とはまだ限りません」
「ううん。間違いないよ」
「え…」
自分もぐびぐびと飲み物を煽るシエルは、飲みながら何度か目を擦りつつ続けた。
「だって、ユージーン、呪いがほどけかけてるもの」
「!!」
ユージーンは思わず自分の胸元に目をむける。
魔眼もちでない自分には何も変わったように見えないが、魂を見ることについて、シエルは絶対に嘘をつかない。
「愛し、愛される人。心当たりあるんでしょ?」
「……」
ある、と肯定したくなかった。
けれど、生まれて初めて、愛おしいと、抱きたいと、抱かれたいと、ずっと繋がっていたいと願った子が、ユージーンにはいる。
「でも、シアくんに、私の命を背負わせるなんて」
「おや、ちゃんと認めるのは予想外」
シエルは少し笑う。
解呪方法が正しいなら、シアがユージーンを殺せば、ユージーンは死ねる。
ずっと願ってきたことなのに、それをシアに言うのは、どうしても躊躇われた。
シアに自分を殺させるなんて残酷なこと、させたくなかった。
死にたい。殺させたくない。
自分の1番の願いがなんなのか、揺らいだのは死を願い始めてから初めてで、ユージーンは唇を噛む。
シエルはそんなユージーンを見ながら、もう一度目を軽く擦って、頭を書いてから、「でもねユージーン」と声をかける。
「シアくんの命、そんなに猶予ないよ」
戻ってきたシアの目が赤い様子をみて、ユージーンは眉を寄せる。
「ちょっとシエル、私の弟子を泣かせたんですか」
「うん、ばっちり!」
シエルが悪びれもなく笑うものだから、ユージーンは深くため息をついた。
「で、結果は…」
「うん。ちゃんと伝えてあげるから、次はユージーンが奥に来てよ」
「あの汚い部屋にですか」
「えー、失礼だなぁもう」
笑いながらユージーンの返事を待たずにシエルは奥の部屋へを入っていく。
ため息をついてから、ユージーンも立ち上がり、
「シア君、ちょっとここでゆっくりしていてください。ダイス、頼みます」
とシエルに続く。
パタン、と扉を後ろ手で閉め、ユージーンはため息をついた。
「その様子だと、ダイス君から聞いたの?解呪の方法」
「…ええ」
この部屋は特殊な魔法がかけられていて、外に音が漏れることはない。
だから声を潜めないシエルを咎めはしなかったが、ユージーンからもう一度ため息が溢れる。
不死である自分が嫌だった。
ちゃんと死にたかった。
今だって死にたいという気持ちは消えていない。
けれど。
「“愛し、愛される人に殺されること”かー。真実の愛がキーだなんて、わりとオーソドックスな解呪法だったね」
シエルがいつの間に持ってきたのか、シアに出したのは違う飲み物が入ったカップをユージーンに渡す。ユージーンは素直にそれを受け取り、ひと口のんだ。
「でも、それが本当に正しい解呪法とはまだ限りません」
「ううん。間違いないよ」
「え…」
自分もぐびぐびと飲み物を煽るシエルは、飲みながら何度か目を擦りつつ続けた。
「だって、ユージーン、呪いがほどけかけてるもの」
「!!」
ユージーンは思わず自分の胸元に目をむける。
魔眼もちでない自分には何も変わったように見えないが、魂を見ることについて、シエルは絶対に嘘をつかない。
「愛し、愛される人。心当たりあるんでしょ?」
「……」
ある、と肯定したくなかった。
けれど、生まれて初めて、愛おしいと、抱きたいと、抱かれたいと、ずっと繋がっていたいと願った子が、ユージーンにはいる。
「でも、シアくんに、私の命を背負わせるなんて」
「おや、ちゃんと認めるのは予想外」
シエルは少し笑う。
解呪方法が正しいなら、シアがユージーンを殺せば、ユージーンは死ねる。
ずっと願ってきたことなのに、それをシアに言うのは、どうしても躊躇われた。
シアに自分を殺させるなんて残酷なこと、させたくなかった。
死にたい。殺させたくない。
自分の1番の願いがなんなのか、揺らいだのは死を願い始めてから初めてで、ユージーンは唇を噛む。
シエルはそんなユージーンを見ながら、もう一度目を軽く擦って、頭を書いてから、「でもねユージーン」と声をかける。
「シアくんの命、そんなに猶予ないよ」
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