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「で、なんでそんなことになってるか、というとなんだけど。貴女のそれは一種呪いだね」
「呪い!?」
思いがけないワードにダイスが目を開く。
呪いだって?じゃあ、自分に何とかできる話なのかもしれない、と思うが先ほど「どちらかになりたいわけではない」といっていユカリ=ケンジロウを思い出し、それは口に出さずにおいた。
「そう、魂に刻まれるタイプの。ある意味ユージーンと同じだねー。とはいっても、貴女のは誰かが故意にかけたものじゃないよ。すごくすごくすごーく稀だけど、たまにあるんだ。いろんな偶然が重なって、自然発生的に”呪い“に近いことが起きるの。だから、種類わけすると”呪い“に該当するんだけど、すごーく厳密にいうと呪いじゃない、みたいな。でもややこしいから、呪いで統一されてる現象だよ」
またずずず、と紅茶を飲んで、シエルは続けた。
「で、さっきも言ったけど、お姉さんのその呪いは魂に刻まれているし、そもそも厳密にいうと呪いだけど呪いじゃないし、まあ、解呪は不可能に近いね。だからどちらかの性別になりたいわけじゃない、というのはちょっと安心な感じかなー。付き合い方というなら、もう今の通りでいいと思うよ。朝目が覚めた方の性別に合わせた自分でいるっていうのが1番心にも魂にも負担がかからない。体の性別に合わないときにすごくしんどいとかはなぁい?」
「え、ええと」
ユカリ=ケンジロウはちら、とダイスを見る。
この年まで付き合ってきた体だから、日常生活における違和感は大体克服している。
強いていうなら、セックスだ。
女性の心のときは、どうしても男性の体であることへの違和感が強すぎてできない。
それについてダイスは文句を言ったことは一度だってないが。
「あ、あー、もしかしてえっち?」
「ぶっ」
シエルのみもふたもない言い方に吹き出したのダイスだ。
「うーん、それはもうどうしようもないなぁ。ユージーン、性転換の魔法ってあったっけ?」
「あるにはありますが、一度しか使えませんし不可逆なのでおすすめはできませんよ」
「そっかー、じゃあやめておいた方が無難かな。えっちのときだけ我慢するっていうのもおすすめはできないよ。あ、でも入れないならいけんじゃない?お姉さんがお兄さんにご奉仕する感じの」
シエルの言い方があけすけすぎて、もう恥ずかしいやらどうしたらいいかわからない、とユカリ=ケンジロウとダイスは頭をかかえる。
そんな二人を見てユージーンはこっそり笑った。
「ああ、そうだ。名前!」
「え?」
シエルがポンっと手を叩いた。
「お姉さん、ユカリ=ケンジロウ、でしょ?ユカリがファミリーネームだよね?」
「え、ええ、そうですね」
「あのさ。魂がね、不思議な揺らぎをしてるんだよ。多分だけど、ユカリ、のほうに女性性が、ケンジロウのほうに男性性がくっついてる。何でかはわかんないけど。そう呼ばれた方が楽だったことない?」
「…、ありますね」
「でしょ?だから、今後、まあ、親しい人限定でもいいや。名前を呼んでもらうときは女性の時はユカリ、男性の時はケンジロウって読んでもらったら、魂への負担がずっと楽になるからオススメー」
「わかりました」
ユカリ=ケンジロウ、ユカリは素直にそう頷いた。少なくとも、ダイスはいまそう呼び分けてくれている。
改めてダイスに感謝をしながら、微笑みかけると、ダイスも優しく笑い返してくれた。
「呪い!?」
思いがけないワードにダイスが目を開く。
呪いだって?じゃあ、自分に何とかできる話なのかもしれない、と思うが先ほど「どちらかになりたいわけではない」といっていユカリ=ケンジロウを思い出し、それは口に出さずにおいた。
「そう、魂に刻まれるタイプの。ある意味ユージーンと同じだねー。とはいっても、貴女のは誰かが故意にかけたものじゃないよ。すごくすごくすごーく稀だけど、たまにあるんだ。いろんな偶然が重なって、自然発生的に”呪い“に近いことが起きるの。だから、種類わけすると”呪い“に該当するんだけど、すごーく厳密にいうと呪いじゃない、みたいな。でもややこしいから、呪いで統一されてる現象だよ」
またずずず、と紅茶を飲んで、シエルは続けた。
「で、さっきも言ったけど、お姉さんのその呪いは魂に刻まれているし、そもそも厳密にいうと呪いだけど呪いじゃないし、まあ、解呪は不可能に近いね。だからどちらかの性別になりたいわけじゃない、というのはちょっと安心な感じかなー。付き合い方というなら、もう今の通りでいいと思うよ。朝目が覚めた方の性別に合わせた自分でいるっていうのが1番心にも魂にも負担がかからない。体の性別に合わないときにすごくしんどいとかはなぁい?」
「え、ええと」
ユカリ=ケンジロウはちら、とダイスを見る。
この年まで付き合ってきた体だから、日常生活における違和感は大体克服している。
強いていうなら、セックスだ。
女性の心のときは、どうしても男性の体であることへの違和感が強すぎてできない。
それについてダイスは文句を言ったことは一度だってないが。
「あ、あー、もしかしてえっち?」
「ぶっ」
シエルのみもふたもない言い方に吹き出したのダイスだ。
「うーん、それはもうどうしようもないなぁ。ユージーン、性転換の魔法ってあったっけ?」
「あるにはありますが、一度しか使えませんし不可逆なのでおすすめはできませんよ」
「そっかー、じゃあやめておいた方が無難かな。えっちのときだけ我慢するっていうのもおすすめはできないよ。あ、でも入れないならいけんじゃない?お姉さんがお兄さんにご奉仕する感じの」
シエルの言い方があけすけすぎて、もう恥ずかしいやらどうしたらいいかわからない、とユカリ=ケンジロウとダイスは頭をかかえる。
そんな二人を見てユージーンはこっそり笑った。
「ああ、そうだ。名前!」
「え?」
シエルがポンっと手を叩いた。
「お姉さん、ユカリ=ケンジロウ、でしょ?ユカリがファミリーネームだよね?」
「え、ええ、そうですね」
「あのさ。魂がね、不思議な揺らぎをしてるんだよ。多分だけど、ユカリ、のほうに女性性が、ケンジロウのほうに男性性がくっついてる。何でかはわかんないけど。そう呼ばれた方が楽だったことない?」
「…、ありますね」
「でしょ?だから、今後、まあ、親しい人限定でもいいや。名前を呼んでもらうときは女性の時はユカリ、男性の時はケンジロウって読んでもらったら、魂への負担がずっと楽になるからオススメー」
「わかりました」
ユカリ=ケンジロウ、ユカリは素直にそう頷いた。少なくとも、ダイスはいまそう呼び分けてくれている。
改めてダイスに感謝をしながら、微笑みかけると、ダイスも優しく笑い返してくれた。
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