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「し、師匠」
「なんですか?」
お互いベトベトだった体はすでに洗浄魔法をかけられてスッキリしている。
師匠の中に吐き出して、違う意味でもスッキリしているシア、というのは閑話休題。
「その、このあと、俺に…」
「ああ、今はもうシませんよ?」
挿れるのも、挿れられるのも、といい方をしていたユージーンだったので、このあとすぐに、先程の師のように後ろに挿れられるのか、と覚悟していたシアは、少し拍子抜けをする。
「そうなのか?」
「ええ。シアくんの魔力の溜まり具合が、思っていたより多かったので、もしこれ以上溜まってしまうと、慣れないうちは大暴走してしまう可能性があるかな、と思いまして」
さっきまであんなに喘いでいたとは思えない普通さで、ユージーンはズボンを履きながらそう答えた。
「それに、私も思いがけず腰にきてますし」
最後あんなふうにシアに積極的に来られるとは、流石に想定外だった、とユージーンが笑って、シアは真っ赤になって俯く。
だって師匠が、とか、俺のせいじゃねぇし、などどぶつぶつ言っている弟子をユージーンは微笑んで見つめる。
その視線が妙に生暖かく感じて、ちぇっとシアはソッポを向いた。
「腰にくるとか、何歳なんだよ師匠」
シアからの照れ隠しの問いに、ユージーンはきょとんとしてから真剣な顔をになり、すこし考えてから、
「えーと、何歳でしょうね」
と返した。
「は?」
「私、長命種なんですよ。200超えたあたりから数えるの面倒になりまして」
「え、師匠ってそんなジジィなの?」
「ジジィってあなた、仮にも師匠に向かってなんですか」
口では文句を言いつつ、ユージーンは別に怒ってはいないようだった。
(長命種って、何歳くらいまで生きるんだっけ)
そんなことを考えつつ、「とにかく、今日は何するんだ?」とシアが聞くと、ユージーンは顎に手を当てて「そうですねぇ」と考えた後、にっこりと笑った。
「せっかく魔力も溜まりましたし、ここらで一度思い切りぶっ放してみましょうか」
まだお昼には少し早い時間だったが、ユージーン曰く「魔力量が多い状態から一気に魔力切れになると、かなりキツいことがある」らしく、昼ごはんが食べられなくならないように、と2人は早めの昼食をすました。
そして、普段魔力のコントロール修行に使っている広場へと移動する。
シアはさっそく魔法を使うのかと思ったが、ユージーンが止めた。
「ちょっと待ってくださいね。結界準備しますので」
「結界?でもいつもそんなんしてなくね?」
シアが首を傾げる。
「いつもよりあなたの魔力量は多いので、万が一大暴走したときのため、ですかね」
ユージーンが水を掬うようにゆっくりと手を合わせて魔力を溜める。
チカチカとひかる魔力はやがて霧のようにあたりに満ちていき、ユージーンを中心に、球体に魔力の層が出来上がった。
「はい、これで大丈夫ですよ。たとえドラゴンの息吹でも、外には漏れません」
「…すっげぇ」
ユージーンはいつも軽ーく魔法を使うので忘れがちになるが、彼が使う魔法はどの系統のものも、“極めた”というレベルだ。
(いつか俺も師匠みたいに)
そう心に決めて、ユージーンを振り向く。
「師匠!俺どんな魔法使ったらいいの!」
急にやる気に満ちた弟子に、目をぱちくりとさせた後、ユージーンは「では、ずっと練習してきた水の魔法にしましょうか」と返事を返した。
「今回はコンロトールは無視して構いません。それより、いつも以上に体にある魔力をしっかり感じ取ってください。それを全て水に変えるイメージで。いつものように水球ではなく、そうですね。魔力で洪水を作るイメージのほうが近いでしょうか」
(魔力で、洪水を)
シアは体の中の魔力に集中する。いつもより熱く渦巻いているそれが、やがて手に集まってきたのを感じ、その魔力を水へと、変換しようとして、「うわあ!?」と声を上げた。
手に集まった魔力が全く言うことを聞かない上に、多すぎて扱うどころじゃない。
イメージが中途半端だったのか、シアの手の上にどんどんと巨大な水球が膨らんでいく。
そしてその水球はなぜか炎を纏っていて、水球自体はぐつぐつと煮えたぎっているようだった。
これには流石のユージーンも驚いた。
(彼は、水よりも火のほうに適性があるのでしょうか。いえ、そんなことより、このままじゃ彼が熱湯を浴びてしまう!)
「し、し、師匠ぉ…っ助けて…っ」
泣きそうな声でシアが言った瞬間、巨大な熱湯水球ははじける。
熱いのがくる、と反射的に目を閉じたシアを、ユージーンが覆いかぶさるように庇った。
そして、かぶるより先にユージーンは自分たちの周りにも強固な結界をはり、熱湯を弾き飛ばす。
地面に落ちた熱湯たちは、しゅわしゅわと湯気を立てていたが、シアとユージーンには怪我はない。
「ふう、間一髪でしたね、シア君」
怪我の有無を確認してから、ユージーンは微笑む。
「ご、ごめんなさ…」
「謝ることはありませんよ。むしろ、私の方こそ、あのような暴走が起きると予想できずに、君を危険に晒してしまいました。すみません」
ユージーンがそんなふうに頭をさげたので、シアは慌てて首を振った。
「し、ししし、師匠は助けてくれたから!!頭下げるとか、やめてくれ!!」
ユージーンは少し考えてから、「まあ、とにかく、あなたの魔力のタンクが大きいことは、これで自覚できたかな、と思います」と言った。
ここまでの検証で、シアの魔力タンクが大きいことは説明していたが、いまいちピンときていなかったらしい。だが、今回のことでよくやくわかったらしく、シアは神妙な顔で頷いた。
「立てます?」
ユージーンが手を貸そうとしたが、シアは全く体に力が入らないことに気が付き、ええと…と口ごもる。
「ふむ。わかりました。少しだけにしておきますが、ここで補充してから帰りましょう」
魔法で浮かせて家に帰ってからでもいいが、反動が来る前に少しでも回復しておいた方が楽だろう、とユージーンは考える。
「は!?外で!?」
「嫌ですか?」
「嫌に決まってンだろクソジジィ!」
さっきまで助けてくれた…などと言っていた口は、外でセックス(どこまでするのはかわからないが)をすると言われたことで、暴言モードに切り替わる。
余談だが、彼が初めてユージーンをクソジジィとよんだのは、これが初めてのことである。
「でも、この後のこと考えると、いつやるの、いまでしょ、という感じなんですよ。というわけで、ほら、本番はしませんから。ちょっと気持ちよくなっときましょう」
本番、という言葉に、今朝のユージーンを思い出したのか、赤くなって俯いたシアがちょっと笑えたが、ユージーンは手際良く、まだやわらないシアのそれをとりだし、そして服の上から胸の突起をかりっと優しく引っ掻いた。
「っ!」
ぴくんっとはねる肩に、これなら嫌悪より快感が勝てるな、と踏み、ユージーンはそのままシアの口を己の口で塞いだ。
「なんですか?」
お互いベトベトだった体はすでに洗浄魔法をかけられてスッキリしている。
師匠の中に吐き出して、違う意味でもスッキリしているシア、というのは閑話休題。
「その、このあと、俺に…」
「ああ、今はもうシませんよ?」
挿れるのも、挿れられるのも、といい方をしていたユージーンだったので、このあとすぐに、先程の師のように後ろに挿れられるのか、と覚悟していたシアは、少し拍子抜けをする。
「そうなのか?」
「ええ。シアくんの魔力の溜まり具合が、思っていたより多かったので、もしこれ以上溜まってしまうと、慣れないうちは大暴走してしまう可能性があるかな、と思いまして」
さっきまであんなに喘いでいたとは思えない普通さで、ユージーンはズボンを履きながらそう答えた。
「それに、私も思いがけず腰にきてますし」
最後あんなふうにシアに積極的に来られるとは、流石に想定外だった、とユージーンが笑って、シアは真っ赤になって俯く。
だって師匠が、とか、俺のせいじゃねぇし、などどぶつぶつ言っている弟子をユージーンは微笑んで見つめる。
その視線が妙に生暖かく感じて、ちぇっとシアはソッポを向いた。
「腰にくるとか、何歳なんだよ師匠」
シアからの照れ隠しの問いに、ユージーンはきょとんとしてから真剣な顔をになり、すこし考えてから、
「えーと、何歳でしょうね」
と返した。
「は?」
「私、長命種なんですよ。200超えたあたりから数えるの面倒になりまして」
「え、師匠ってそんなジジィなの?」
「ジジィってあなた、仮にも師匠に向かってなんですか」
口では文句を言いつつ、ユージーンは別に怒ってはいないようだった。
(長命種って、何歳くらいまで生きるんだっけ)
そんなことを考えつつ、「とにかく、今日は何するんだ?」とシアが聞くと、ユージーンは顎に手を当てて「そうですねぇ」と考えた後、にっこりと笑った。
「せっかく魔力も溜まりましたし、ここらで一度思い切りぶっ放してみましょうか」
まだお昼には少し早い時間だったが、ユージーン曰く「魔力量が多い状態から一気に魔力切れになると、かなりキツいことがある」らしく、昼ごはんが食べられなくならないように、と2人は早めの昼食をすました。
そして、普段魔力のコントロール修行に使っている広場へと移動する。
シアはさっそく魔法を使うのかと思ったが、ユージーンが止めた。
「ちょっと待ってくださいね。結界準備しますので」
「結界?でもいつもそんなんしてなくね?」
シアが首を傾げる。
「いつもよりあなたの魔力量は多いので、万が一大暴走したときのため、ですかね」
ユージーンが水を掬うようにゆっくりと手を合わせて魔力を溜める。
チカチカとひかる魔力はやがて霧のようにあたりに満ちていき、ユージーンを中心に、球体に魔力の層が出来上がった。
「はい、これで大丈夫ですよ。たとえドラゴンの息吹でも、外には漏れません」
「…すっげぇ」
ユージーンはいつも軽ーく魔法を使うので忘れがちになるが、彼が使う魔法はどの系統のものも、“極めた”というレベルだ。
(いつか俺も師匠みたいに)
そう心に決めて、ユージーンを振り向く。
「師匠!俺どんな魔法使ったらいいの!」
急にやる気に満ちた弟子に、目をぱちくりとさせた後、ユージーンは「では、ずっと練習してきた水の魔法にしましょうか」と返事を返した。
「今回はコンロトールは無視して構いません。それより、いつも以上に体にある魔力をしっかり感じ取ってください。それを全て水に変えるイメージで。いつものように水球ではなく、そうですね。魔力で洪水を作るイメージのほうが近いでしょうか」
(魔力で、洪水を)
シアは体の中の魔力に集中する。いつもより熱く渦巻いているそれが、やがて手に集まってきたのを感じ、その魔力を水へと、変換しようとして、「うわあ!?」と声を上げた。
手に集まった魔力が全く言うことを聞かない上に、多すぎて扱うどころじゃない。
イメージが中途半端だったのか、シアの手の上にどんどんと巨大な水球が膨らんでいく。
そしてその水球はなぜか炎を纏っていて、水球自体はぐつぐつと煮えたぎっているようだった。
これには流石のユージーンも驚いた。
(彼は、水よりも火のほうに適性があるのでしょうか。いえ、そんなことより、このままじゃ彼が熱湯を浴びてしまう!)
「し、し、師匠ぉ…っ助けて…っ」
泣きそうな声でシアが言った瞬間、巨大な熱湯水球ははじける。
熱いのがくる、と反射的に目を閉じたシアを、ユージーンが覆いかぶさるように庇った。
そして、かぶるより先にユージーンは自分たちの周りにも強固な結界をはり、熱湯を弾き飛ばす。
地面に落ちた熱湯たちは、しゅわしゅわと湯気を立てていたが、シアとユージーンには怪我はない。
「ふう、間一髪でしたね、シア君」
怪我の有無を確認してから、ユージーンは微笑む。
「ご、ごめんなさ…」
「謝ることはありませんよ。むしろ、私の方こそ、あのような暴走が起きると予想できずに、君を危険に晒してしまいました。すみません」
ユージーンがそんなふうに頭をさげたので、シアは慌てて首を振った。
「し、ししし、師匠は助けてくれたから!!頭下げるとか、やめてくれ!!」
ユージーンは少し考えてから、「まあ、とにかく、あなたの魔力のタンクが大きいことは、これで自覚できたかな、と思います」と言った。
ここまでの検証で、シアの魔力タンクが大きいことは説明していたが、いまいちピンときていなかったらしい。だが、今回のことでよくやくわかったらしく、シアは神妙な顔で頷いた。
「立てます?」
ユージーンが手を貸そうとしたが、シアは全く体に力が入らないことに気が付き、ええと…と口ごもる。
「ふむ。わかりました。少しだけにしておきますが、ここで補充してから帰りましょう」
魔法で浮かせて家に帰ってからでもいいが、反動が来る前に少しでも回復しておいた方が楽だろう、とユージーンは考える。
「は!?外で!?」
「嫌ですか?」
「嫌に決まってンだろクソジジィ!」
さっきまで助けてくれた…などと言っていた口は、外でセックス(どこまでするのはかわからないが)をすると言われたことで、暴言モードに切り替わる。
余談だが、彼が初めてユージーンをクソジジィとよんだのは、これが初めてのことである。
「でも、この後のこと考えると、いつやるの、いまでしょ、という感じなんですよ。というわけで、ほら、本番はしませんから。ちょっと気持ちよくなっときましょう」
本番、という言葉に、今朝のユージーンを思い出したのか、赤くなって俯いたシアがちょっと笑えたが、ユージーンは手際良く、まだやわらないシアのそれをとりだし、そして服の上から胸の突起をかりっと優しく引っ掻いた。
「っ!」
ぴくんっとはねる肩に、これなら嫌悪より快感が勝てるな、と踏み、ユージーンはそのままシアの口を己の口で塞いだ。
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