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 当たり前だが、ほとんど表出魔力のなかったシアは、魔法のコントロールが恐ろしく下手だった。
 たとえば水の初期魔法を唱えようとすると、蛇口を最大に捻ったみたいな形で噴き出すか、逆に絞りすぎてチョロチョロとしか出ないか。
 それでも、魔力を魔法に変えられることが、シアは嬉しくて仕方なかった…が、彼は“快感が魔力に変わる”と発覚した次の日から「修行なのこれ?」という生活を送ることになる。
 まず、師匠にヤられて魔力を貯めて、それを使い切るよう指示をだされ、使い切ったらまたヤられ…。
 検証だ、と言われて自慰も強要された。
 流石にしている間ずっと見られているようなことはなかったが、多種多様な性癖のエロ本をどさっと置かれて「どれが好みです?」と言われた時にはシアはキレた。
 恥ずかしすぎてキレた。

 さて、そんな日々をひと月ほど過ごしてユージーンは、こんなまとめをする。
①快感を感じることで、体内魔力が分裂するような形で増える。
②もともとの魔力を貯める体内タンクはユージーンと同じくらいある。(これはとんでもないことだそうだ)
③自慰でも魔力の多少の回復は見込めるが、他者に触れられるほうがより回復率がいいこと。
 結局、シアが魔術師として生きていくには、誰かと頻繁にセックスをしないといけないのでは、という結論だった。
「でも、まだ試してないことがあるんですよね」
 そう、セックス、と言ったがシアにはまだオーラルセックスしか試したことがない。
 挿れたことも、挿れられたこともないのだ。
(挿れたいなーと思うことはあったんですけどねぇ)
 この行為自体に恐怖を覚えてしまえば、シアの魔力回復が見込めなくなる。
 つまり、それはシアの魔術師としての死を意味していた。
 興味の対象としても、彼の師匠としても、それは良しとできない。
 けれど、もし本番ありのセックスをすることで一回の魔力の回復が大きくなるのであれば、そっちのほうが彼の体の負担も減る。
 魔力が少なければ、魔力切れを起こすことも増えるのだ。それは、ちゃんとコントロールをできるようになったとしても同じこと。
(うーん、まずは、淹れる方の経験してもらいましょうかね)
 ユージーンはそう結論を出し、自身の準備を行なうことにする。
 ユージーンの手でイクあの様子を見るに、男同士ということに抵抗があるようには思えないが、と後ろに洗浄魔法をかけて、ローションをつけ、解す。
「ん、っ」
 後ろでするなど、いつぶりだろうか、と考えつつ、思いの外問題なさそうで少しだけ安心する。今回挿れられる予定の自分が苦痛を感じてしまえば、次に彼に挿れるときの弊害になる。それはよろしくない。
(まあ、私で勃たないなら、色街とかでプロに頼むことにしましょう)
 準備が終わったユージーンは、ふぅ、と一息ついてから、シアの部屋部屋へと向かった。

 こんこん、とノックすると、「師匠?」と返事が返ってきた。
「シア君、ちょっといいですか?」
「おう、なに?」
(散々私にヤられているにも関わらず、シア君のこの警戒心のなさは、なぜなんでしょう)
 すぐに開けられたその扉に、ユージーンは少し苦笑する。
「魔力の回復、しませんか?」
「え」
「快感が魔力に変わるということは間違いない、と結論が出ましたが、まだ試してないことがありまして」
 ぎくり、と体をこわばらせたシアの頭をなでて、ベッドに座るように伝える。
 そして、彼の横にユージーンも座って続けた。
「シアくん、童貞でしょう?」
「っ!?」
「いえ、すみません。別にそれを笑うとかそんなんじゃないんですよ?ただ、挿れてイく、という行為と、挿れられてイく、という行為はしたことないじゃないですか。もし、そっちのほうが魔力の回復が見込めるなら、試す価値はあるかと思って」
 さぁ、とシアの顔色が青くなった。
 ああ、挿れられると思っている、と瞬時にユージーンは理解する。だからすぐに続けた。
「なので、今回、私に挿れてみませんか、シア君」
「……、へ?」
 シアが返せたのは、その一言と、非常に間抜けな顔だけだった。


***
次回、シア×ユージーンになります。ご注意ください。
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