11 / 30
本編
11話
しおりを挟む
ヴィオーラを呼んでほしいという頼みに、ローザはすぐに頷いたが、同時に今彼が調べ物をしていることを思い出す。
少し考えてから、「アルジェント、魔力落ち着いたら、呼ぶ」と伝えた。
アルジェントはその言葉に頷いて、「少し、眠ります」と目を閉じる。
彼の額に浮かんでいる汗をそっと拭いながら、ローザはその寝顔をみて、また少しだけ、泣いた。
ローザがヴィオーラを呼ぶ。
それは文字通り、「ヴィオーラ、きて」と部屋から窓の外に向けて呼ぶことで、呼び声を受けてヴィオーラはすぐに「参上したよ、私の愛しの君」とやってきた。
これは、二人が使う特殊な通信魔法のひとつなのだと、ローザが言っていたことがある。
何度か見たことがあったので、それには特に驚かず、アルジェントは「呼ぶよう頼んだのは私です」と言った。
アルジェントをみると、ヴィオーラはいつものように大袈裟な身振りで礼をする。
「やあやあ、我が友アルジェント。調子はどうだい?」
「あまり、良いとは言えませんね」
苦笑しながらそう返してきたアルジェントに、ヴィオーラはおや?と首を傾げた。
不調は基本隠そうとするのが今までの彼だ。
「珍しいね。君がそういう素直さを見せるのは」
「先ほど、ローザに馬鹿だと叱られてしまいまして」
「まさか、泣かせたんじゃないだろうね」
ぎくり、と震えた肩にヴィオーラはむぅ、と眉を寄せたものの、まあ、今は本調子じゃないしね、とため息ひとつで流すことにした。
「で、私を呼んだのはどうしてだい?」
「私の身に起きていることで、ヴィオーラが気付いていることを教えて欲しくて」
「ふむ」
ローザがくいくい、とヴィオーラの裾を引く。
「ヴィオーラ呼ぶ前、ちょっと、アルジェントと、話した。アルジェント、気づいてる、呪い」
「え?」
「自分に、何か魔法、かかってる。それ、自分でかけた、そこまで、気づいてる」
ローザの言葉に驚きつつ、ヴィオーラは、そうか、と納得もしていた。
アルジェントは馬鹿じゃない。
「じゃあ、呪いについてわかったことをいくつか伝えようか。まず、呪い自体を解除する方法はあるみたいだね。一つは人間の教会にいる“解呪師”に依頼すること。詳しいやり方はわからないけれど、どうやら聖なる魔力とかいうもので呪いを打ち消すらしい。…この聖なる魔力って言い方、私はどうにも綺麗な泥水みたいな感じがして気持ち悪いのだけれど、どう思う?」
「そこについて異論はありませんね。で、もうひとつの方法は」
「かけた本人が解く、以上だね」
「そんな、ざっくり、なんだ」
ローザの言葉に、苦笑を返してヴィオーラは言った。
「ああ。ざっくりなんだよ、愛しの君。具体的にどうするのか、という情報は一切ない。まあ、もともとスキルや魔力は感覚に依存するものだから仕方ないとも言えるのだけれど」
「とりあえず、私が私自身で解くことが可能ということが分かっただけでも、一歩前進ですね」
アルジェントがそうまとめた時、突然ローザが「きゃぁあああああ」と悲鳴を上げた。
「「ローザ!?」」
慌ててローザの方を見ると、両腕でからだを抱きしめてうずくまっている。
「いやっ、それ、いやっ熱い、いやあああああっ」
次の瞬間、ローザの姿が消える。
詳しい状況はわからなくても、彼女の本体に何かあり、本体の方に人型が引っ張られたというのはすぐにわかった。
咄嗟に彼女の元へ行こうとするヴィオーラをアルジェントが止める。
「なぜ止めるんだアルジェント!」
「私が行きます!状況は分かりませんが、おそらく今のローザにあなたが近づくのは危険です!」
「君も不調だろう!?」
「ヴィオーラは魔王様のところへ!!ローザに、私と同じ思いをさせる気ですか!!」
弱ったローザは、翼のある魔物であるヴィオーラの魔力を、喰い尽くすかもしれない。
ヴィオーラは血が出るほど唇を噛んで、「すぐに呼んでくるから」と玉座へと飛んだ。
それと同時にアルジェントは、窓に足をかける。
飛び降りるのが1番早いからだ。
「ローザ、無事でいてください…っ」
呟くと同時に、アルジェントは体を宙に投げ出した。
少し考えてから、「アルジェント、魔力落ち着いたら、呼ぶ」と伝えた。
アルジェントはその言葉に頷いて、「少し、眠ります」と目を閉じる。
彼の額に浮かんでいる汗をそっと拭いながら、ローザはその寝顔をみて、また少しだけ、泣いた。
ローザがヴィオーラを呼ぶ。
それは文字通り、「ヴィオーラ、きて」と部屋から窓の外に向けて呼ぶことで、呼び声を受けてヴィオーラはすぐに「参上したよ、私の愛しの君」とやってきた。
これは、二人が使う特殊な通信魔法のひとつなのだと、ローザが言っていたことがある。
何度か見たことがあったので、それには特に驚かず、アルジェントは「呼ぶよう頼んだのは私です」と言った。
アルジェントをみると、ヴィオーラはいつものように大袈裟な身振りで礼をする。
「やあやあ、我が友アルジェント。調子はどうだい?」
「あまり、良いとは言えませんね」
苦笑しながらそう返してきたアルジェントに、ヴィオーラはおや?と首を傾げた。
不調は基本隠そうとするのが今までの彼だ。
「珍しいね。君がそういう素直さを見せるのは」
「先ほど、ローザに馬鹿だと叱られてしまいまして」
「まさか、泣かせたんじゃないだろうね」
ぎくり、と震えた肩にヴィオーラはむぅ、と眉を寄せたものの、まあ、今は本調子じゃないしね、とため息ひとつで流すことにした。
「で、私を呼んだのはどうしてだい?」
「私の身に起きていることで、ヴィオーラが気付いていることを教えて欲しくて」
「ふむ」
ローザがくいくい、とヴィオーラの裾を引く。
「ヴィオーラ呼ぶ前、ちょっと、アルジェントと、話した。アルジェント、気づいてる、呪い」
「え?」
「自分に、何か魔法、かかってる。それ、自分でかけた、そこまで、気づいてる」
ローザの言葉に驚きつつ、ヴィオーラは、そうか、と納得もしていた。
アルジェントは馬鹿じゃない。
「じゃあ、呪いについてわかったことをいくつか伝えようか。まず、呪い自体を解除する方法はあるみたいだね。一つは人間の教会にいる“解呪師”に依頼すること。詳しいやり方はわからないけれど、どうやら聖なる魔力とかいうもので呪いを打ち消すらしい。…この聖なる魔力って言い方、私はどうにも綺麗な泥水みたいな感じがして気持ち悪いのだけれど、どう思う?」
「そこについて異論はありませんね。で、もうひとつの方法は」
「かけた本人が解く、以上だね」
「そんな、ざっくり、なんだ」
ローザの言葉に、苦笑を返してヴィオーラは言った。
「ああ。ざっくりなんだよ、愛しの君。具体的にどうするのか、という情報は一切ない。まあ、もともとスキルや魔力は感覚に依存するものだから仕方ないとも言えるのだけれど」
「とりあえず、私が私自身で解くことが可能ということが分かっただけでも、一歩前進ですね」
アルジェントがそうまとめた時、突然ローザが「きゃぁあああああ」と悲鳴を上げた。
「「ローザ!?」」
慌ててローザの方を見ると、両腕でからだを抱きしめてうずくまっている。
「いやっ、それ、いやっ熱い、いやあああああっ」
次の瞬間、ローザの姿が消える。
詳しい状況はわからなくても、彼女の本体に何かあり、本体の方に人型が引っ張られたというのはすぐにわかった。
咄嗟に彼女の元へ行こうとするヴィオーラをアルジェントが止める。
「なぜ止めるんだアルジェント!」
「私が行きます!状況は分かりませんが、おそらく今のローザにあなたが近づくのは危険です!」
「君も不調だろう!?」
「ヴィオーラは魔王様のところへ!!ローザに、私と同じ思いをさせる気ですか!!」
弱ったローザは、翼のある魔物であるヴィオーラの魔力を、喰い尽くすかもしれない。
ヴィオーラは血が出るほど唇を噛んで、「すぐに呼んでくるから」と玉座へと飛んだ。
それと同時にアルジェントは、窓に足をかける。
飛び降りるのが1番早いからだ。
「ローザ、無事でいてください…っ」
呟くと同時に、アルジェントは体を宙に投げ出した。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
とろけてなくなる
瀬楽英津子
BL
ヤクザの車を傷を付けた櫻井雅(さくらいみやび)十八歳は、多額の借金を背負わされ、ゲイ風俗で働かされることになってしまった。
連れて行かれたのは教育係の逢坂英二(おうさかえいじ)の自宅マンション。
雅はそこで、逢坂英二(おうさかえいじ)に性技を教わることになるが、逢坂英二(おうさかえいじ)は、ガサツで乱暴な男だった。
無骨なヤクザ×ドライな少年。
歳の差。
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
山本さんのお兄さん〜同級生女子の兄にレ×プされ気に入られてしまうDCの話〜
ルシーアンナ
BL
同級生女子の兄にレイプされ、気に入られてしまう男子中学生の話。
高校生×中学生。
1年ほど前に別名義で書いたのを手直ししたものです。
僕の彼氏はヤンデレ
ゆか
BL
華野 夜黒(はなの やく)にはヤンデレな彼氏がいる。
その彼氏の名は、西銅路 虎(さいどうじ とら)。
この物語は、ヤンデレ彼氏から逃げる夜黒を虎があの手この手を使って依存させる物語。
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
逢瀬はシャワールームで
イセヤ レキ
BL
高飛び込み選手の湊(みなと)がシャワーを浴びていると、見たことのない男(駿琉・かける)がその個室に押し入ってくる。
シャワールームでエロい事をされ、主人公がその男にあっさり快楽堕ちさせられるお話。
高校生のBLです。
イケメン競泳選手×女顔高飛込選手(ノンケ)
攻めによるフェラ描写あり、注意。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる