the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

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「それじゃあ、始めようか。ユラ、ユウイチくんの魔力見てて。もしもの時はフォローよろしくね」
「…わかった」

 なんでわざわざ俺を指名する、と思わなくもなかったが、断る理由もない。
 杖を構え、ユウイチの方を向く。
 若干不安そうなユウイチに、「お前も杖準備しろ」と声をかけ、ついでに「大丈夫だ。お前なら問題なく循環できる」と付け加えた。
 フライディが後ろでニヤニヤしている気配があって、若干イラっとしたが、あえて無視して魔力を見る魔術式を展開する。
 俺の魔術が発動したのを確認して、エリオット口の中で小さく詠唱をした。ユウイチの足元に先ほどとは違う魔法陣が発動する。
 いつ見ても、エリオットの魔術はお手本のようで美しい。弟子を取らないと公言していることがなければ、ユウイチの師匠に丁度イイんだろうがな。

「よし、いくよ。深呼吸して魔力の循環に集中していてね」

 ふわり、と風がふいて、ユウイチが小さく唸った。おそらく、魔力が封じ込められた反動だろう。それでも目を閉じたまま、ゆっくりと呼吸を再開して魔力の循環を再開する。
 ぐらぐらと揺れていた魔力がゆっくりと杖へ移動し、またユウイチの体の中へ戻っていく。行き来するうちに、少しずつ少しずつ魔力が安定していき、おそらく10分足らずで完全に循環が整った。

「あの…」
「ああ、整ったな。体に不調はねぇか?」

 息苦しさがなくなったのだろう。ユウイチが俺を見てきたのでそう問うと、ユウイチは一つ頷いた。

「わあ、すごい!魔術使い始めて数日とは思えないねっ。ねぇねぇ。やっぱり僕のところで修行しない?厳しくしちゃうけど、きっと大成できると思うんだ!ねえ、ユラもそう思うでしょ!」

 短時間での循環成功に、イーサンが楽しそうに飛び跳ねながらそう言ってくる。お前何歳だよ。子どもか。

「イーサンの弟子とか、俺なら御免だがな。うるせぇし」
「えーっ⁉︎ひっどーい!」

 ケラケラと楽しそうに笑うイーサンを横目に、オロオロしているユウイチに声をかける。

「まあ、いずれにせよ誰かを師事する必要はあるから、どういう系統の魔術師になりてぇかだけは考えとけ」
「は、はい…」

 困ったように眉を下げつつ、ユウイチはこくんと小さく頷いた。


***

 
「じゃ、さっそく聖女の宮いっちゃう?」

 イーサンの言葉に、曜日の魔術師がまあそうだな、と頷きかけたが待ったをかけたのがグレイシアだった。

「緊急性が高いとはいえ、万全を期した方がいいとおもうのぉ」
「どういうこと?」

 イーサンが首を傾げる。

「ユウイチくんは魔力を体内だけで循環させられるようになったばかりでしょぉ?エリオットも少なくとも一回分魔術使ってるし、私たちも移動してきたばかりで体力万全じゃないから、せめて明日、できれば二日後くらいがいいと思うのだけれど」

 おっとりと続けたグレイシアの言葉に、それもそうか、と納得する。
 エリオットの「一回分」というのは、あいつは一日(二十四時にリセットされるらしい)に使える魔術回数に限度があるタイプだからだ。

「そっか、そうだね!結界になにか変化があったら緊急招集するかもだけど、とりあえず二日後の十時に集合ってことで!あ、ユラ、ユウイチくんに簡単な魔術指導しておいてね!」
「はぁ?なんで俺が」
「本当は僕がしたいところだよ?したいところだけど、現時点でユウイチくんと一番信頼関係ができてるの君でしょ?一ヶ月二ヶ月と時間があるならともかく、二日後なんだし、なら、信頼関係構築する時間もったいないじゃない。それに、グレイシアは回復特化型だし、エリオットは弟子を取らないし、ヤンは論外でしょ?ユウイチくんだって、この中ならユラがいいよねぇ?もちろん僕でもいいんだよ!選んでくれても!」

 勝手に俺たちの間に信頼関係とか決めつけるな、と文句を言おうとしたが、ユウイチが俺の方をみて小さく頷いたので、受け入れざるを得なくなった。
 おいこらフライディ、にやにやすんな、顔がうるせぇ。

 はあ。

 めんどくせぇ…。
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