the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

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「ドールを壊せと言ってきたことを考えると、改めてその塊を確認するまでは聖女の宮にドールを連れていくわけにはいかねぇな」
「そうねぇ」

 俺とグレイシアがそう呟いた瞬間、ドールたちが一斉に反発する。

「でも、マスターをあんな危ない場所に一人で行かせるなんてやだよ!」
「マスター、ワタシを一人になんてしないわよねぇ?」
「マスター、まさか僕をおいていく気っすか⁉︎」
「マスター、俺、置いてかれるの?」
「マスター、私も一緒に行きたいです」
「マスター、私も連れて行って」

 サンディ、サタディ、フライディ、マンディ、ウェンズディ、チューズディ、の順番に、マスターから離れる気はないと抗議されて、マスターである俺たちのは目を見合わせる。

 ドールがマスターに逆らうことはない。だが、こんなふうに意見することはある。(特に、考えるという所が特化しているフライディは顕著だ)
 それに、ドールは「置いていかれる」ということに敏感だからな。
 理由は諸説あるが、ドールの最初のマスターが聖女だったためではないか、という説が有力だ。マスターが代わる際、基本的に記憶の継承はされないが、最初のマスターに死を持って置いていかれたというのが、はっきりとした記憶ではないなにかトラウマのように残っているのではないか、と言われている。
 俺は、フライディをぽんと撫でた。

「確認してくるだけだ。すぐに戻る」
「でもっ」
「フライディ、ここで待っていろ」

 命令を下すと、一瞬泣きそうになってから、「イエス、マイマスター」とフライディが頷いた。
 周りからもドールの了承の返事が聞こえてくるから、大体似たようなやりとりがあったのだろう。

「なんにしても、曜日の魔術師が木曜日以外全員揃ってるんだよ。これで対処できないことが起きたらもう、どうしようもないでしょ。災害だよ災害、ねー?」

 イーサンがケラケラと笑って、サンディがそりゃあそうだけど…と少しむくれた。
 イーサンのいうことは最もで、俺たちは自他共に認めるこの国のトップ魔術師だ。ユウイチはまあ、除くとしても。
 これで俺たちがどうにもできないと言うのなら、他の魔術師を総動員しても、どうにかなるものでもない。

「ユウイチは待っておくか?」

 俺がそう声をかけるが、それを否定したのは、先ほどまでニコニコと微笑んで座っていたエリオットだった。

「だめだよ、ユウイチくんは異質だろう?」

 エリオットは微笑みを崩さずに続ける。

「今回の出来事、タイミング的にユウイチくんが全くの無関係とは思えない。彼の意思かどうかは疑問だけどね。とにかく、もしそうなら連れていくべき…というか、僕らのそばから離さないほうがいいと思うよ」

 エリオットが、ごめんね、とユウイチにいう。

「いえ…」

 困ったように俺をみてくるユウイチに、ため息を吐いてから、俺は「行く時は、俺から離れるな」とだけ返す。

「ああでも、先にユウイチの魔力はなんとかしねぇとな」
「魔力?」

 エリオットが首を傾げたので、ユウイチの魔力が体外に漏れ出ていることと、循環はだいぶできるようになったが、一度完全に体の中に魔力を閉じ込めてほしい旨を伝えた。

「ユラもできるでしょ?なんでエリオットにしてほしいの?」

 イーサンに覗き込まれて、ため息で返事を返す。

「俺よりエリオットの方が得意だろ、その手の魔術は」

 返してから、ふ、と思い至る。

「もしかして、今日はもう“限度”迎えていたか?」
「いいや。大丈夫だよ」

 エリオットは首を横に振り、ユウイチに向き直した。



***
エリオットの空気感がやっとなくなりました。
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