2 / 25
2
しおりを挟む翌日、朝食の片付けをしているフライディの後ろから声をかける。
「フライディ、出掛けるぞ」
「はぁい!あれ、随分とラフな格好っスね。デートじゃないんっすか?」
「デートにお前連れてくわけねぇだろ。仕事だよ」
それもそうっスね、とフライディは残りの片付けをちゃちゃっと済ませると、つけていたエプロンを外す。
外出用の帽子を被り、尾が隠れる大きなコートを羽織ってとてとてと走ってきた。
隠す必要もないのだが、フライデイはなぜか耳や尾に注目されるのを嫌がるので、これがいつもの外出スタイル。
「魔力は満タンか」
「バッチリっす!昨日いっぱい貰ったんで!」
「おう、じゃあ行くぞ」
満面の笑みで右手をピンと上げたフライデイの頭をポンと撫でて、俺たちは外へ出た。
「えーっと。七体のドールには、それぞれマスターがいる。曜日を名とするドールたちの所有者はドールの名に因み、○曜日の魔術師と呼ばれ、曜日の魔術師になることは魔術師の目標であり誉れである」
目的地への歩きながらフライディは本を音読している。
「ドールには得意分野があり、戦闘能力はマンディを最弱、曜日順に強くなりサンデイが最強であると言われている。……なんかこれ照れるっすねー!」
……うるせぇ。
フライデいが持っている本のタイトルを覗き込むと『魔術師の心得』と書いてあった。
魔術師を目指す卵の教科書として扱われることもある本だが……。
「なんで突然そんなモン読んでるんだ、フライディ」
少なくとも俺は与えた覚えはない。
「この間ウェンズディがくれたんっす。フライディはもう少し色々勉強したほうがいいわ、って言われて」
「……とりあえず、今音読しながら歩くのはやめろ。うるせぇし危ねぇだろ」
「イエス、マイマスター!」
ドールは命令に逆らえないというのもあるが、フライディは素直に本を俺のかばんにしまった。
俺もそうだが、曜日を冠する魔術師の仕事は基本的に国から指示され、断ることは難しい。
内容は、色々。
治療系の話から盗賊の討伐、崖を塞いだ岩を壊してくれなんてのもあったか。
それぞれ得意な分野というのもあり、俺はもっぱら戦闘系なのだが、まあ、曲がりなりにも俺は金曜日。大体の分野の魔術は取得している。
今回は、俺が滞在している街の東側にある森に妙な魔力の揺れが観測されたから確認してこいという内容だった。
魔力の揺れ、ねぇ。
こういう仕事、大抵の場合は誰かが新しい魔術を開発しようとして失敗した後始末か、ドールを取得して曜日付きの魔術師になりたい魔術師からの挑戦状か。
前者だといいと思う。
戦うのは面倒くさい。
「! マスター止まって!」
急に鋭い声をあげたフライディを見ると、ふーっと言いながら帽子もコートも脱ぎ捨てて戦闘モードに入っていた。
それもそのはず。
魔力の揺らぎがあるとされていたそこには、みたことのない質を持った魔力の塊が鎮座していたからだ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ガテンの処理事情
雄
BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。
ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる