the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

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 翌日、朝食の片付けをしているフライディの後ろから声をかける。
「フライディ、出掛けるぞ」
「はぁい!あれ、随分とラフな格好っスね。デートじゃないんっすか?」
「デートにお前連れてくわけねぇだろ。仕事だよ」

 それもそうっスね、とフライディは残りの片付けをちゃちゃっと済ませると、つけていたエプロンを外す。
 外出用の帽子を被り、尾が隠れる大きなコートを羽織ってとてとてと走ってきた。
 隠す必要もないのだが、フライデイはなぜか耳や尾に注目されるのを嫌がるので、これがいつもの外出スタイル。

「魔力は満タンか」
「バッチリっす!昨日いっぱい貰ったんで!」
「おう、じゃあ行くぞ」

 満面の笑みで右手をピンと上げたフライデイの頭をポンと撫でて、俺たちは外へ出た。



「えーっと。七体のドールには、それぞれマスターがいる。曜日を名とするドールたちの所有者はドールの名に因み、○曜日の魔術師と呼ばれ、曜日の魔術師になることは魔術師の目標であり誉れである」

 目的地への歩きながらフライディは本を音読している。

「ドールには得意分野があり、戦闘能力はマンディを最弱、曜日順に強くなりサンデイが最強であると言われている。……なんかこれ照れるっすねー!」

 ……うるせぇ。
 フライデいが持っている本のタイトルを覗き込むと『魔術師の心得』と書いてあった。
 魔術師を目指す卵の教科書として扱われることもある本だが……。

「なんで突然そんなモン読んでるんだ、フライディ」

 少なくとも俺は与えた覚えはない。

「この間ウェンズディがくれたんっす。フライディはもう少し色々勉強したほうがいいわ、って言われて」
「……とりあえず、今音読しながら歩くのはやめろ。うるせぇし危ねぇだろ」
「イエス、マイマスター!」

 ドールは命令に逆らえないというのもあるが、フライディは素直に本を俺のかばんにしまった。
 俺もそうだが、曜日を冠する魔術師の仕事は基本的に国から指示され、断ることは難しい。
 内容は、色々。
 治療系の話から盗賊の討伐、崖を塞いだ岩を壊してくれなんてのもあったか。
 それぞれ得意な分野というのもあり、俺はもっぱら戦闘系なのだが、まあ、曲がりなりにも俺は金曜日。大体の分野の魔術は取得している。
 今回は、俺が滞在している街の東側にある森に妙な魔力の揺れが観測されたから確認してこいという内容だった。

 魔力の揺れ、ねぇ。

 こういう仕事、大抵の場合は誰かが新しい魔術を開発しようとして失敗した後始末か、ドールを取得して曜日付きの魔術師になりたい魔術師からの挑戦状か。
 前者だといいと思う。
 戦うのは面倒くさい。

「! マスター止まって!」

 急に鋭い声をあげたフライディを見ると、ふーっと言いながら帽子もコートも脱ぎ捨てて戦闘モードに入っていた。
 それもそのはず。
 魔力の揺らぎがあるとされていたそこには、みたことのない質を持った魔力の塊が鎮座していたからだ。


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