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章1
引きこもりに適したチート能力(4)
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さて、実力を見る、と言っていた詩絵里の期待を裏切って、戦闘はあっという間に終わってしまった。
生成した大剣を振り上げたエリアスが、フロアのほとんどのスペースを占領するほど巨大な亀を一刀のもとに切り伏せてしまったのである。
見た目からしても、いかにも防御力とHPの高さが特徴ですといわんばかりのフロアボスだったが……。
「やっぱり、エリアスはすごい……」
「S級魔物、砲台トータスを一撃で……」
唯一の純粋な地元人、ネールとヤヨイが、彼の戦いを見て目を輝かせている。
エリアスは意中の相手であると同時に、冒険者として目指す頂の存在でもあるのだろう。
あの魔物、砲台トータスって名前なのか。
ウサギ魔物の時も思ったことだが、ネーミングは結構そのまんまだ。
「二人の今のステータスでは、60層までってところか」
「うーん、悔しいけど、そうね……」
「これでも常識的には、二人だけで60層まで潜るだなんて異常なのですが……エリアスくんのいう、神の戦いの足手まといにならないようにするにはまだまだ……でしょうね」
エリアスパーティーの会話が聞こえてくる。
どうやら転生者ゲームの件は、神の戦いと表現しているようだ。
神様主催のゲームであることを考えると、まあ間違ってはいない。
「気にするな。透たちが神の戦いの影響を受けない拠点を提供してくれるかもしれないって話だから。焦らずいこう」
あ、それは普通に言ってしまうんですね。
見つけられなかったらどうしよう、と今更ながらに胃が痛んできた。
以降は、基本的にエリアスが一人でダンジョンを攻略していった。
ネールとヤヨイは補助に回っている。
この世界のレベルシステムがどうなっているのか分からないが、パーティー登録をするとか、経験値を分け与えるマジックアイテムを装備するとかでパワーレベリングができるのかもしれない。
ステータスというものが存在せず、勝宏と一緒にそれなりに魔物を倒してきたはずの透はレベルアップした気がしないので、あまり自分には関係のない話ではあるが。
「詩絵里、今のボスは強いのか?」
「フレアドラゴン基準でいくと、あれと同じくらいね。でも特殊攻撃がない分、攻略はしやすいはずよ」
完全に観戦モードの透たちは、エリアスパーティーが倒すフロアボスたちのステータスを詩絵里に確認するくらいしかやることがない。
いま、目の前でエリアスが倒したのが95層目のフロアボスである。
漫画やゲームなどに出てくる、ミノタウロスのような外見だ。
巨体から繰り出される強攻撃が厄介な敵……と分析したくなるところだが、詩絵里のスキルで調べた限りではフレアドラゴンよりも攻略しやすい相手。
透はこの世界の住民ではないが、なるほどチートスキル持ちの転生者基準だと、常識があてにならないものである。
そうなるとますます謎だ。
ナトリトンで遭遇したフレアドラゴンや、ドラゴンよりも強敵に思えた蛇の魔物はいったいなんだったのだろうか。
詩絵里が言うには、攻略しやすいダンジョンだという話だったはず。
「それにしても、全部普通の攻略方法で倒しちゃうわね。こんなに敵が弱いんじゃ、不死系のスキル、使われそうにないじゃない……」
ため息まじりに、詩絵里が小さく呟く。
彼女の言う通り、自分たちが警戒すべきはそこだ。
だからといってエリアスに直接攻撃を仕掛けるわけにはいかない。
お人よしの勝宏やルイーザはまず難色を示しそうだし、不死系のスキルを本当に持っているかどうか調べるために相手を殺すのは、透としてもちょっと寝覚めが悪そうだ。
実際のところは、契約のマジックアイテムで制限がかかっているため手出しすることはできないのだが。
「イベント終了まであと一時間ですねー! 残り5層、いけますかー?」
ステータス画面を見て、ルイーザがエリアスに問いかける。
「余裕だ、気にせずついてきてくれ」
「はーい!」
ミノタウロスもどきの巨体をそのままアイテムボックスに回収したエリアスが、次の階層への階段を下り始めた。
素材として使う部分があるのだろう。
残り一時間の攻略が余裕だといっても、さすがにこの場で解体までするには時間が惜しい。
「でも、本当に戦わずにここまで来ちゃったわね」
「これでいいのかなーって気はするけど、まあエリアスもいいやつっぽいし、いいんじゃないか?」
「ぎゃう?」
前半は作業のため、後半はエリアスの戦闘の様子をスキルでチェックするため。
詩絵里はこのダンジョンのほとんどをクロに乗ったまま移動しており、ろくに歩いてすらいない。
勝宏の言葉にあわせて、真似をしたクロが首をかしげる。
ちょっとかわいい。
姿は人間とドラゴンで全く異なっているのに、こうまで仕草が一緒だとなんだか似ているような気がしてくる。
エリアスたちに続いて下層へ進む。
ボスフロア以外の有象無象は皆雑魚ばかりだといわんばかりの無双である。
「このフロアの魔物たちも、ほんとは町の近くに出たら討伐隊が組まれるくらいの脅威なんですけどねー。全く、チートはこれだから……」
エリアスに一撃で倒されていく熊のような魔物は、ルイーザには見覚えがあるようだ。
商人である彼女には、どんな魔物が脅威となるか、対策するならどれほどの備えになるかを把握しておく必要があるのかもしれない。
しかし、てっきり力が強くなるスキルと縁を切りたいだけなのだと思っていたが。
ルイーザの言いようを考えると、チート自体あんまり好きじゃなさそうだ。
イベントランキング一位が取れれば、彼女も好きなスキルを選び直せる。
もうちょっとの辛抱です。
-----
クロ デザインイメージ
生成した大剣を振り上げたエリアスが、フロアのほとんどのスペースを占領するほど巨大な亀を一刀のもとに切り伏せてしまったのである。
見た目からしても、いかにも防御力とHPの高さが特徴ですといわんばかりのフロアボスだったが……。
「やっぱり、エリアスはすごい……」
「S級魔物、砲台トータスを一撃で……」
唯一の純粋な地元人、ネールとヤヨイが、彼の戦いを見て目を輝かせている。
エリアスは意中の相手であると同時に、冒険者として目指す頂の存在でもあるのだろう。
あの魔物、砲台トータスって名前なのか。
ウサギ魔物の時も思ったことだが、ネーミングは結構そのまんまだ。
「二人の今のステータスでは、60層までってところか」
「うーん、悔しいけど、そうね……」
「これでも常識的には、二人だけで60層まで潜るだなんて異常なのですが……エリアスくんのいう、神の戦いの足手まといにならないようにするにはまだまだ……でしょうね」
エリアスパーティーの会話が聞こえてくる。
どうやら転生者ゲームの件は、神の戦いと表現しているようだ。
神様主催のゲームであることを考えると、まあ間違ってはいない。
「気にするな。透たちが神の戦いの影響を受けない拠点を提供してくれるかもしれないって話だから。焦らずいこう」
あ、それは普通に言ってしまうんですね。
見つけられなかったらどうしよう、と今更ながらに胃が痛んできた。
以降は、基本的にエリアスが一人でダンジョンを攻略していった。
ネールとヤヨイは補助に回っている。
この世界のレベルシステムがどうなっているのか分からないが、パーティー登録をするとか、経験値を分け与えるマジックアイテムを装備するとかでパワーレベリングができるのかもしれない。
ステータスというものが存在せず、勝宏と一緒にそれなりに魔物を倒してきたはずの透はレベルアップした気がしないので、あまり自分には関係のない話ではあるが。
「詩絵里、今のボスは強いのか?」
「フレアドラゴン基準でいくと、あれと同じくらいね。でも特殊攻撃がない分、攻略はしやすいはずよ」
完全に観戦モードの透たちは、エリアスパーティーが倒すフロアボスたちのステータスを詩絵里に確認するくらいしかやることがない。
いま、目の前でエリアスが倒したのが95層目のフロアボスである。
漫画やゲームなどに出てくる、ミノタウロスのような外見だ。
巨体から繰り出される強攻撃が厄介な敵……と分析したくなるところだが、詩絵里のスキルで調べた限りではフレアドラゴンよりも攻略しやすい相手。
透はこの世界の住民ではないが、なるほどチートスキル持ちの転生者基準だと、常識があてにならないものである。
そうなるとますます謎だ。
ナトリトンで遭遇したフレアドラゴンや、ドラゴンよりも強敵に思えた蛇の魔物はいったいなんだったのだろうか。
詩絵里が言うには、攻略しやすいダンジョンだという話だったはず。
「それにしても、全部普通の攻略方法で倒しちゃうわね。こんなに敵が弱いんじゃ、不死系のスキル、使われそうにないじゃない……」
ため息まじりに、詩絵里が小さく呟く。
彼女の言う通り、自分たちが警戒すべきはそこだ。
だからといってエリアスに直接攻撃を仕掛けるわけにはいかない。
お人よしの勝宏やルイーザはまず難色を示しそうだし、不死系のスキルを本当に持っているかどうか調べるために相手を殺すのは、透としてもちょっと寝覚めが悪そうだ。
実際のところは、契約のマジックアイテムで制限がかかっているため手出しすることはできないのだが。
「イベント終了まであと一時間ですねー! 残り5層、いけますかー?」
ステータス画面を見て、ルイーザがエリアスに問いかける。
「余裕だ、気にせずついてきてくれ」
「はーい!」
ミノタウロスもどきの巨体をそのままアイテムボックスに回収したエリアスが、次の階層への階段を下り始めた。
素材として使う部分があるのだろう。
残り一時間の攻略が余裕だといっても、さすがにこの場で解体までするには時間が惜しい。
「でも、本当に戦わずにここまで来ちゃったわね」
「これでいいのかなーって気はするけど、まあエリアスもいいやつっぽいし、いいんじゃないか?」
「ぎゃう?」
前半は作業のため、後半はエリアスの戦闘の様子をスキルでチェックするため。
詩絵里はこのダンジョンのほとんどをクロに乗ったまま移動しており、ろくに歩いてすらいない。
勝宏の言葉にあわせて、真似をしたクロが首をかしげる。
ちょっとかわいい。
姿は人間とドラゴンで全く異なっているのに、こうまで仕草が一緒だとなんだか似ているような気がしてくる。
エリアスたちに続いて下層へ進む。
ボスフロア以外の有象無象は皆雑魚ばかりだといわんばかりの無双である。
「このフロアの魔物たちも、ほんとは町の近くに出たら討伐隊が組まれるくらいの脅威なんですけどねー。全く、チートはこれだから……」
エリアスに一撃で倒されていく熊のような魔物は、ルイーザには見覚えがあるようだ。
商人である彼女には、どんな魔物が脅威となるか、対策するならどれほどの備えになるかを把握しておく必要があるのかもしれない。
しかし、てっきり力が強くなるスキルと縁を切りたいだけなのだと思っていたが。
ルイーザの言いようを考えると、チート自体あんまり好きじゃなさそうだ。
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