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章1
チートスキル持ちが勇者の息子だか孫だかに転生したら環境チートに分類されるんでしょうか(2)
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思えば、ダンジョンに入ってからほとんど戦闘なしの徒歩移動が続いている。
詩絵里の提案に、暇をもてあました前衛組が乗ってきた。
「じゃあまず、私がよく聞く信憑性の高い噂からいきますね!
勇者の子エリアスは五歳の頃、奇策をもちいて住んでいる土地の不作を解消した……」
「それ、その土地で育てていた作物の種類がちょくちょく変わるようになったとかいう話とセットじゃない?」
「ですです」
聞いただけでもう察せてしまう。
連作障害とかそういう類のお約束だ。
これだけ日本人転生者が何年も前から世に溢れているというのに、未だに定番の連作障害で悩む稀有な地域があるとは思わなかったが。
「次はですね、六歳になる頃、町の闘技大会で高ランク冒険者を圧倒して優勝……」
「赤ん坊の頃から勇者に鍛えられて、六歳でレベルめちゃくちゃ高かったって可能性は?」
「ゼロじゃないけど、それなら勇者が戦った先の戦争で効率のいいレベルの上げ方、訓練の仕方を広めてるはずじゃないかしら?」
「おお……そういえば……」
年老いたから勇者の秘伝の技を養子に授けたい、という話は分かる。
だが、戦争という国の一大事に、一般人どころか幼児でも効率よく強くなれる方法を国に献上しないとは考えにくい。
勇者が戦争にノータッチの姿勢でいたならまだしも、本人はがっつり参戦していたという話だ。
「他にはですね、八歳の時に面白い発明をしたとかで王様に呼び出されて、その道中で襲われてたお姫様をオークの群れから救ったとか……」
「まさか、マヨネーズを発明しました、とかじゃないわよね?」
「えっと確か、作ったのは紙でしたね。和紙だったと思います」
国の偉い人たちが目の色変えて製法を秘匿するとか言ってました、軍事機密にとかなんとか。
数年したら他の転生者も他国で和紙作ってましたけど。
ルイーザによって、オチまで綺麗に語られる。
転生者全員が和紙の作り方を覚えているとは言い切れないが、日本人転生者がたくさん居ると、一部でそうなってしまうのは当然だろう。
「ていうか、その時の国の偉い人たちの話ってなんでルイーザが知ってるんだ?」
「人の口に戸は立てられないのですよー」
しかし、ここまで聞く限りではどこからどう考えても日本人転生者だとしか思えない経歴である。
これで転生者としての記憶がないなら、神からのお告げか何かで行動を誘導されていると考えるしかないほどだ。
「ここまでで、エリアスが転生者の可能性はほぼ百パーセントだと思うんだけど。この情報だと、肝心のスキルが推測できないわね」
「うーん……あ! 死んでも生き返るって聞きました」
「リセットリングじゃないの?」
「違うと思います。生き返ったあとも武器を使って継戦したみたいなんで」
リセットリングは、一度だけ死をなかったことにできるマジックアイテムだ。
無論、市販ではまず入手できない。
現状の入手方法は、商売系ならびに鍛冶生産系スキルを持った転生者が作って売りに出したものを買うか、今回のようにイベントの報酬で手に入れるかの二択だろう。
死をなかったことにする代わりに、服以外の装備品やアイテムボックスの中身が消滅してしまう。
ルイーザの言葉が正しければ、それと同じ不死系の効果を、デスペナルティなしで使える能力というわけだ。
戦いで命を落とすことがない、というだけで、勇者の過酷な修行も転生者バトルもずいぶん難易度が下がる。
「死んでも生き返る……それがスキルなら、面倒な能力ね。他の転生者とバトルで負けた場合はどうなのかしら」
「そこまでは、私にも……」
「まあ、仕方ないわよね。一応、ポイント取得スキルの一覧の中に載ってるかもしれないし。探してみましょう」
言って、詩絵里が抱えていたクロを下ろした。
そして、何かをごにょごにょと指示している。
クロは一人乗りのサイズになって、詩絵里を背中に歩き出した。
翼を使わず、徒歩移動だ。
「クロの上でリストチェックしておくから、戦闘が必要になったら声掛けてね」
「了解ですー!」
なるほど。
歩きスマホならぬ、歩きステータス画面になりかねないのでクロに運んでもらおうというわけだ。
ここはダンジョン34階層目。
一般の冒険者は周辺にはもうほとんど居ない。
歩きながらステータス欄を確認したところで、ぶつかろうにもぶつかれる相手がいないわけだが……詩絵里の頭脳で答え合わせができるなら、気が散る徒歩よりも考えに集中していただきたい。
「次はボスフロアだな。あいつらも休憩取るみたいだけど、どうする?」
「もちろん休みましょう! 徹底的に寄生してしまいますよー」
勝宏に言われて前方を見ると、エリアスたちは35層への扉の前で座り込んで休憩を始めた。
エリアスの手元では、何もないところからできたての食べ物が取り出される。
食べ物の温度までそっくりそのまま時間停止してしまえるとなると、やはり転生者特典のアイテムボックスだろう。
彼らの食事のメニューは、少しいびつな形のからあげ……のように見える。
魔物の肉を日本の調理方法で揚げたのかもしれない。
「そっか、そろそろお昼だね。何食べたい?」
「んー、俺も揚げ物食べたい気分!」
「そうだ透さん、今こそ料理チートを発揮する場面ですよ! あの人たちの食べてるからあげよりおいしくて見た目も綺麗な揚げ物を!」
勝宏とルイーザが、エリアスたちの食事に対抗心を燃やしている。
詩絵里はというと、ステータス画面を見たまま真剣な表情である。
こちらの話は聞こえていないらしい。
詩絵里の提案に、暇をもてあました前衛組が乗ってきた。
「じゃあまず、私がよく聞く信憑性の高い噂からいきますね!
勇者の子エリアスは五歳の頃、奇策をもちいて住んでいる土地の不作を解消した……」
「それ、その土地で育てていた作物の種類がちょくちょく変わるようになったとかいう話とセットじゃない?」
「ですです」
聞いただけでもう察せてしまう。
連作障害とかそういう類のお約束だ。
これだけ日本人転生者が何年も前から世に溢れているというのに、未だに定番の連作障害で悩む稀有な地域があるとは思わなかったが。
「次はですね、六歳になる頃、町の闘技大会で高ランク冒険者を圧倒して優勝……」
「赤ん坊の頃から勇者に鍛えられて、六歳でレベルめちゃくちゃ高かったって可能性は?」
「ゼロじゃないけど、それなら勇者が戦った先の戦争で効率のいいレベルの上げ方、訓練の仕方を広めてるはずじゃないかしら?」
「おお……そういえば……」
年老いたから勇者の秘伝の技を養子に授けたい、という話は分かる。
だが、戦争という国の一大事に、一般人どころか幼児でも効率よく強くなれる方法を国に献上しないとは考えにくい。
勇者が戦争にノータッチの姿勢でいたならまだしも、本人はがっつり参戦していたという話だ。
「他にはですね、八歳の時に面白い発明をしたとかで王様に呼び出されて、その道中で襲われてたお姫様をオークの群れから救ったとか……」
「まさか、マヨネーズを発明しました、とかじゃないわよね?」
「えっと確か、作ったのは紙でしたね。和紙だったと思います」
国の偉い人たちが目の色変えて製法を秘匿するとか言ってました、軍事機密にとかなんとか。
数年したら他の転生者も他国で和紙作ってましたけど。
ルイーザによって、オチまで綺麗に語られる。
転生者全員が和紙の作り方を覚えているとは言い切れないが、日本人転生者がたくさん居ると、一部でそうなってしまうのは当然だろう。
「ていうか、その時の国の偉い人たちの話ってなんでルイーザが知ってるんだ?」
「人の口に戸は立てられないのですよー」
しかし、ここまで聞く限りではどこからどう考えても日本人転生者だとしか思えない経歴である。
これで転生者としての記憶がないなら、神からのお告げか何かで行動を誘導されていると考えるしかないほどだ。
「ここまでで、エリアスが転生者の可能性はほぼ百パーセントだと思うんだけど。この情報だと、肝心のスキルが推測できないわね」
「うーん……あ! 死んでも生き返るって聞きました」
「リセットリングじゃないの?」
「違うと思います。生き返ったあとも武器を使って継戦したみたいなんで」
リセットリングは、一度だけ死をなかったことにできるマジックアイテムだ。
無論、市販ではまず入手できない。
現状の入手方法は、商売系ならびに鍛冶生産系スキルを持った転生者が作って売りに出したものを買うか、今回のようにイベントの報酬で手に入れるかの二択だろう。
死をなかったことにする代わりに、服以外の装備品やアイテムボックスの中身が消滅してしまう。
ルイーザの言葉が正しければ、それと同じ不死系の効果を、デスペナルティなしで使える能力というわけだ。
戦いで命を落とすことがない、というだけで、勇者の過酷な修行も転生者バトルもずいぶん難易度が下がる。
「死んでも生き返る……それがスキルなら、面倒な能力ね。他の転生者とバトルで負けた場合はどうなのかしら」
「そこまでは、私にも……」
「まあ、仕方ないわよね。一応、ポイント取得スキルの一覧の中に載ってるかもしれないし。探してみましょう」
言って、詩絵里が抱えていたクロを下ろした。
そして、何かをごにょごにょと指示している。
クロは一人乗りのサイズになって、詩絵里を背中に歩き出した。
翼を使わず、徒歩移動だ。
「クロの上でリストチェックしておくから、戦闘が必要になったら声掛けてね」
「了解ですー!」
なるほど。
歩きスマホならぬ、歩きステータス画面になりかねないのでクロに運んでもらおうというわけだ。
ここはダンジョン34階層目。
一般の冒険者は周辺にはもうほとんど居ない。
歩きながらステータス欄を確認したところで、ぶつかろうにもぶつかれる相手がいないわけだが……詩絵里の頭脳で答え合わせができるなら、気が散る徒歩よりも考えに集中していただきたい。
「次はボスフロアだな。あいつらも休憩取るみたいだけど、どうする?」
「もちろん休みましょう! 徹底的に寄生してしまいますよー」
勝宏に言われて前方を見ると、エリアスたちは35層への扉の前で座り込んで休憩を始めた。
エリアスの手元では、何もないところからできたての食べ物が取り出される。
食べ物の温度までそっくりそのまま時間停止してしまえるとなると、やはり転生者特典のアイテムボックスだろう。
彼らの食事のメニューは、少しいびつな形のからあげ……のように見える。
魔物の肉を日本の調理方法で揚げたのかもしれない。
「そっか、そろそろお昼だね。何食べたい?」
「んー、俺も揚げ物食べたい気分!」
「そうだ透さん、今こそ料理チートを発揮する場面ですよ! あの人たちの食べてるからあげよりおいしくて見た目も綺麗な揚げ物を!」
勝宏とルイーザが、エリアスたちの食事に対抗心を燃やしている。
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こちらの話は聞こえていないらしい。
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