人生初の友達ができたので一緒に世界救ってきます (せかます)

す!ず!は!

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章1

幕間 【小学生が異世界に行ってひと夏の冒険をしてくるのは昔からわりとよくある話】 (2)

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 それから何年か過ぎて、十五、六にもなると学校の友人と猥談をする機会が増えた。

 とはいえ成人向け雑誌が堂々と買える年齢でもない。
 友人のうちの一人がどこからか探してきたエロ動画のURLをラインで回して一緒に鑑賞する、というパターンが多い。

 回ってくる動画は、どれもあまりピンとこない。
 そのまんまの感想をグループでコメントすると、参加している友人全員から「お子様」と笑われてしまった。

 友人が、じゃあ趣向を変えてこういうのは? と、新しい動画を貼り付けてきた。

 なんの気なしに開いてみると、一人の女性を複数の男が取り囲んでいるシーンから始まって……いわゆるレイプものだ。

 女優名が動画のタグにつけられていたから、本当に強姦されているのではなくあくまでもそういう演技なのだろう。
 けれど。

 そのAV女優の泣き顔が、なんとなく気になる。

 今度もそのまま、ちょっと気になるとコメントを残す。
 するとグループのメンバーは「おまえ善良な顔しといてこういうハードなやつが好きなの?」みたいな反応をした。

 こうなると、もうエロ動画鑑賞会というよりは俺の性癖調査大会みたいな雰囲気だ。

 メンバー全員が知りうる限りのエロ動画のURLを送りつけてきた。
 女の子を縛ってつるし上げて服を破いたりとか、裸の女の子に首輪をつけて四つんばいで外を歩かせるようなやつとか。
 ラインナップは女の子が酷い目に遭うものばかり。
 先ほどの不用意な発言のせいで、そういう方向のものが好みだと思われたのかもしれない。

 別に、女の子をいじめるようなシチュエーションが好きなわけじゃない。
 ていうか、演技にしたってちょっと可哀想だ。

 でも。
 ……なんだろう。
 男たちの暴行に弱々しく抵抗しながら泣いているAV女優の顔を見ていると、なんか、もやもやしてきて。

 このもやもや、知ってる気がする。



 性癖調査大会は一旦終了。
 俺はそのもやもやの既視感に首をかしげながら風呂に入って、布団にもぐりこんだ。

 変な動画ばっかり見ていたから。
 その夜、酷い夢を見た。

 今の……十六歳の俺が、あの頃の姫野を無理矢理犯す夢だった。

 そして、思い出す。
 エロ動画を見た時に感じたもやもやの正体。
 俺はそいつをよく知っていた。

 小学生の頃、姫野の涙を見た時に感じていたものと全く同じだった。

 俺は、知らずに、姫野の泣き顔に欲情していたんだ。

「……俺、最低」

 恋ならまだよかった。
 俺の、姫野を追い回した理由が、初恋だったならまだいくらかマシだった。

 追い回した結果があれで。

 追い回した理由が恋じゃなくてただの性欲だったなんて、俺最低すぎるだろ。

 姫野は生きている、と、思いたい。

 引っ越す前に住んでいたあたりは、今の家から頑張って自転車をこげば2、3時間で到着するくらいの距離しかない。
 行こうと思えばいつでも行ける。

 でも、姫野が今もそこに居る確証はない。
 確かめる方法が俺にはない。

 ……それから一回だけ、姫野の顔で抜いた。

 想像の中のあいつは、俺に犯されながらずっと泣いていて、イッたあとの賢者タイムは本当にキツかった。

 けど、気付いてしまったあとになってはもう、送ってもらっていたエロ動画じゃ少しも反応しない。

 ひょっとしたら泣いている人を見ればだれかれ構わず興奮するのかもしれないけど、それを試したいとは思わなかった。

 罪悪感で死にたくなるから、いっそ恋でもして感情を上書きできればとも思った。
 が、それはそれで相手に失礼だろう。
 これ以上オナりたくないから恋人になってくれって字面だけ見ると身体目的かよって話じゃん。

 結局、学校以外の時間全部にアルバイトを入れまくって、毎朝新聞配達で走り回った。
 体を動かしていれば気が紛れたから。

 それでもやっぱりこの年齢で完全オナ禁は難しいもんで、どうしようもなくなると、頭の中で姫野を犯しながら謝り続けた。

 罪悪感から逃れるように、手当たり次第「人の役に立つだろうこと」に奔走した。
 カルマとか業とかそういう感じの、償いっていうか禊ぎみたいな、ほとんどそんな気分だった。

 誰かが泣くのを見るのも恐怖で、テレビ越しのドラマでさえも目を逸らした。

 姫野のことは、たぶんこれからもずっとこのまま抱えて生きていくことになる。

 それくらい俺の中の奥深くを、姫野への罪悪感が占領していて、新しい恋をするのだって諦め半分だった。



 高三になって、俺はバイト代を全額寄付に回すという禊ぎの手段を学んだ。

 学校にお礼の電話が入って、バイトにばかりかまけているのは褒められたことじゃないがその行動は評価に値するとかなんとか、なんか朝会で先生から表彰された。

 七夕の夏祭りの夜も、俺は普通にバイトを入れていた。
 で、バイト帰り、夏祭りにはしゃいだ八歳くらいの女の子が車道に飛び出して転倒するところに出くわしてしまった。

 思わず体が動いた。
 その瞬間、女の子があの日の姫野に見えてしまったのだ。

 駆け寄って、女の子を歩道側に転がして。
 ……今度は俺が事故の被害者になる番だった。



 死んだか。
 まあいいや、女の子は助けられたから。

 事故に遭いかけた少女を助けたことで、何をやっても目減りしなかった俺の中の罪悪感は少し軽くなっていた。

 自分の命を張るまでやってなお解消しきれない罪の意識って、すごい厄介だ。

 とはいえ、俺はまだ償わなきゃならないのかもしれない。

 トラックにぶつかって死んだはずの俺は、謎のラノベ展開で記憶を保ったまま異世界に転生させられたのである。

 記憶を保ったまま、っていうのが重要。
 つまり俺は転生しても姫野の涙から逃れられず、二度と会うこともない、幼い彼の泣き顔を今生もまたずーっと抱えて生きなきゃならないらしい。



「お兄さん、日本人だよな? 俺はマサヒロ。勝つに、うかんむりの宏で勝宏ね。お兄さんの名前は?」



 転生先でドラゴンと戦っている途中、人助けのつもりで声を掛けた、少し年上の男性。

 透、と名乗った彼は、印象が記憶の中の姫野と似ていた。

 姫野も確か、「とおる」って名前だったはず。
 でも年上っぽいし、と思って念のため年齢を聞いてみたらやっぱり二十歳。
 別人だ。

 同じ転生者のはずなのに戦う力をなにも持たない彼に同行して、彼をそばで守ること。
 それが次の俺の禊ぎミッションとなった。

 助けたり、助けられたりを繰り返しながら、少しずつ彼との距離が縮まっていく。
 向こうはどう思っているか知らないが、俺にとってはもう友達だ。

 ……で、友達と話す感覚で下ネタを振ったら、透は羞恥で泣き出してしまった。

 あ、やばい。

 俺はこういう男の泣き顔が駄目なんだった。

 最近あんまり楽しかったもんだから、頭から抜け落ちていた。

 姫野のこと。
 罪の意識。
 なにもかもぜんぶ。

 なんだかんだで、姫野以外の人間の涙を見るのも久しぶりだ。
 だからやっぱり、泣き顔に欲情するのか、こういう顔が好みなだけなのか、どっちなのか俺には分からない。

 それでも俺にとっては、姫野以外の人間に興味を持てたというのは大きな進歩だった。

 恋になればいい。
 今度こそ、ただ性欲の対象にするんじゃなくて。

 透と、恋ができればいい。
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