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章1
幕間 【俺しか入れないダンジョンで安全圏からダンジョンマスターします】 (2)
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居住空間に、500E使って宝箱を設置。
こちらは時間経過で中身が変わり、いくら開けても次の日には中身が何かしら入っているというダンジョン専用の不思議な宝箱だ。
俺の部屋に設置することで、現代人あこがれの「寝て起きたら日常生活のログインボーナスが貰える環境」の完成である。
ゲームの通りならば、中身は主に以下の通り。
・装備類
・装飾品、マジックアイテム類
・ダンジョンの外に転移できる「帰還石」
・保存食
・ポーション類
宝箱を開閉すると、この中のどれかが一日ひとつ、宝箱から出てくるというガチャ仕様だ。
10個くらい設置したら10連ガチャできるんだけど、私室に10個も宝箱を設置する気はない。
やるなら別のフロアだな。
早速開けてみる。
出てきたのは炎のような刀身を持つ剣だった。
鑑定スキルは持っていないので、ためしに装備してみてからステータス欄で装備の詳細を確認する。
魔剣イフリート。
SSSR(神器級装備)。
おお、これは絶対売れる。
よしよし、こいつはしばしの生活費になってくれるぞ。
あとは人型の魔物でも作って、町まで売りに行かせれば完全に引きこもり生活が――魔物……?
「あああああエネルギー使い切っちまったあああああああ」
使い魔を作るエネルギーくらい残しておけと数分前の自分に突っ込みを入れたいが、凝って家具をあれこれ作ってしまった時点で既に詰んでいた。
計画性はない。
魔剣の売却は一旦諦め、スキルを使ってできることをもう少し確認していく。
ダンジョンコアを作る――つまり、ダンジョン自体を新規作成する分には、ダンジョンエネルギーは消費されない。
使うのは自分のMPだけだ。
そして、他のダンジョンで集めたエネルギーを、拠点登録したダンジョンに集めることも可能……。
ということはだよ。
この「はじまりのエデン」を拠点登録して、各地に仮設ダンジョンを作りまくってはした金ならぬはしたエネルギーを集めれば、ここもっとラクに強化できるのでは?
あれだ。
ソシャゲでサブ垢作りまくって新規登録特典のアイテムを本垢にかき集めるみたいな戦法だ。
規約でそういう行為がNGになっているゲームも多いが、ここはゲームの世界ではない。
誰にも怒られない。
MPが許す限り、作り放題である。
新設ダンジョンはそのまんまだと全部で20階層。
ダンジョン1つ作るたびに貰える10000Eのうち、魔物の配置などの初期投資を除いて、宝箱を申し訳程度に配置して残りを拝借するという寸法だ。
雑魚魔物なら10Eで作れる。
考え無しに1層あたり50匹配置すると10000Eなど20層で使い切ってしまうわけだが、5層ごとにボスフロアを用意してゆけばエネルギーは使い切らずに済む。
ボスフロアの予算は150Eくらいにしておこう。
最初は50Eで作れるちょっと強い魔物を3匹配置、次から150Eで作れる強い魔物を1匹ずつだ。
ふふふ。
長年、ゲームをするためだけに女の子の家を渡り歩いた俺だ。
こういうせせこましいことは得意だよ。
雑魚フロアが合計8000E、ボスフロアが合計600Eということで、余りは1400E。
1000Eで宝箱を2つ設置して、端数の400Eを本垢――もとい、「はじまりのエデン」に着服。
MPが回復次第、ダンジョンを乱立させていくとして。
とりあえず目標100箇所くらい作るかな。
頑張ろう。労働はいいものだ。
ここから出る気一切ないけど。
そんなわけで、各地に「弱くはないが強くもない」というなんとも絶妙なできばえのサブ垢――もとい搾取用ダンジョンをぽこぽこ作りまくってエネルギーを稼ぎ、俺の城の内装を整え終えた頃。
ある日、神サマからイベント開始の通知が届いた。
ダンジョン防衛とダンジョン攻略で転生者が分かれて争う? マジかよ。
慌てて「はじまりのエデン」に他の転生者が侵入可能になっていないか設定を確認したが、この場所はチュートリアル専用で特別なのか、やはり俺しか入れない仕様なのは変わっていなかった。
念のため、小物作成で設置した周辺監視カメラを使って「はじまりのエデン」周辺も確認する。
異常なし。
よしよしよし。
俺の城が無事ならなんでもいいや。
転生者ゲーム関連のことは全部シカトするつもりだったけど、ダンジョンを使ったイベントならちょっと興味がある。
サブ垢量産でスキルレベルが上がって、<都市建設>に「拠点登録したダンジョンへはどこからでも転移で帰還可能」という能力が備わったことだし、そこらに増やしまくったダンジョンのうちひとつをイベント用に改装してみるか。
別にこのイベントで負けても「はじまりのエデン」が何か損壊するというわけでもなし、ホームがあるというのは心の余裕を生むものだ。
「……ん? なんだこれ」
妄想半分のイベント計画を立てながらカメラを覗いていると、俺しか入れない俺の城の入り口に、なにやら張り紙がしてあるのを見つけた。
紙に書かれているのは日本語だ。
「ダンジョン攻略側に割り振られた日本人だ。防衛側の報酬の方が必要なため、防衛イベントの方に協力させてほしい。本日昼にこの張り紙を回収しに来るので、NOなら返事を書いて貼り付け、YESなら拠点へ招待してくれ」
……ほんとかね。
通知来たの一時間前なんだけど、その一時間のうちに「はじまりのエデン」に来て入れないことを悟って手紙を残した?
若干うさんくさい気もするが、攻略者側の話が聞けるというのは興味深い。
護衛の魔物を作成して、進入不可のトラップごしに話を聞くのはアリかもしれない。
現段階ではYESでもNOでもないが、手紙は書いておくことにしよう。
とはいえ、俺の城にこいつを入れることは出来ない。
手近なところで――そうだな。
「ひとまず話を聞かせてください、ナトリトン地下遺跡ダンジョンの10層目で、お待ちしています……っと」
日本語で返信を書いて、使い魔に入り口の張り紙の上へ貼りに行かせる。
昼まであと二時間くらいだな。
寝るか。
突然襲われたりしないように、ナトリトン地下遺跡ダンジョンの10層目にギミックだけ用意してベッドに転がった。
そういえばもう俺の城になっているこの「はじまりのエデン」、15層しかないから即日で全域マッピングを済ませたんだけど、マップ的にはどうやっても行けない謎空間があるんだよな。
そこに行くために結構なダンジョンエネルギーを費やして通路を繋げたりもしたが、壁と壁の隙間にズレが作られていてうまいとこ通路が繋げられず、動かすことも出来ない。
その空間にダンジョンコアや俺の私室を置ければ安全度はアップするだろうに。
まあ、このイベントが終わったらダンジョンエネルギーをまた集め直して再度謎空間に挑戦するのもアリだろう。
これからイベント用に育て直すサブダンジョンも、うまくいったら別荘扱いにするのもいいな。
これでもかと夢を広げながら、俺は異世界をすこしも感じさせないワンルームで眠りについた。
こちらは時間経過で中身が変わり、いくら開けても次の日には中身が何かしら入っているというダンジョン専用の不思議な宝箱だ。
俺の部屋に設置することで、現代人あこがれの「寝て起きたら日常生活のログインボーナスが貰える環境」の完成である。
ゲームの通りならば、中身は主に以下の通り。
・装備類
・装飾品、マジックアイテム類
・ダンジョンの外に転移できる「帰還石」
・保存食
・ポーション類
宝箱を開閉すると、この中のどれかが一日ひとつ、宝箱から出てくるというガチャ仕様だ。
10個くらい設置したら10連ガチャできるんだけど、私室に10個も宝箱を設置する気はない。
やるなら別のフロアだな。
早速開けてみる。
出てきたのは炎のような刀身を持つ剣だった。
鑑定スキルは持っていないので、ためしに装備してみてからステータス欄で装備の詳細を確認する。
魔剣イフリート。
SSSR(神器級装備)。
おお、これは絶対売れる。
よしよし、こいつはしばしの生活費になってくれるぞ。
あとは人型の魔物でも作って、町まで売りに行かせれば完全に引きこもり生活が――魔物……?
「あああああエネルギー使い切っちまったあああああああ」
使い魔を作るエネルギーくらい残しておけと数分前の自分に突っ込みを入れたいが、凝って家具をあれこれ作ってしまった時点で既に詰んでいた。
計画性はない。
魔剣の売却は一旦諦め、スキルを使ってできることをもう少し確認していく。
ダンジョンコアを作る――つまり、ダンジョン自体を新規作成する分には、ダンジョンエネルギーは消費されない。
使うのは自分のMPだけだ。
そして、他のダンジョンで集めたエネルギーを、拠点登録したダンジョンに集めることも可能……。
ということはだよ。
この「はじまりのエデン」を拠点登録して、各地に仮設ダンジョンを作りまくってはした金ならぬはしたエネルギーを集めれば、ここもっとラクに強化できるのでは?
あれだ。
ソシャゲでサブ垢作りまくって新規登録特典のアイテムを本垢にかき集めるみたいな戦法だ。
規約でそういう行為がNGになっているゲームも多いが、ここはゲームの世界ではない。
誰にも怒られない。
MPが許す限り、作り放題である。
新設ダンジョンはそのまんまだと全部で20階層。
ダンジョン1つ作るたびに貰える10000Eのうち、魔物の配置などの初期投資を除いて、宝箱を申し訳程度に配置して残りを拝借するという寸法だ。
雑魚魔物なら10Eで作れる。
考え無しに1層あたり50匹配置すると10000Eなど20層で使い切ってしまうわけだが、5層ごとにボスフロアを用意してゆけばエネルギーは使い切らずに済む。
ボスフロアの予算は150Eくらいにしておこう。
最初は50Eで作れるちょっと強い魔物を3匹配置、次から150Eで作れる強い魔物を1匹ずつだ。
ふふふ。
長年、ゲームをするためだけに女の子の家を渡り歩いた俺だ。
こういうせせこましいことは得意だよ。
雑魚フロアが合計8000E、ボスフロアが合計600Eということで、余りは1400E。
1000Eで宝箱を2つ設置して、端数の400Eを本垢――もとい、「はじまりのエデン」に着服。
MPが回復次第、ダンジョンを乱立させていくとして。
とりあえず目標100箇所くらい作るかな。
頑張ろう。労働はいいものだ。
ここから出る気一切ないけど。
そんなわけで、各地に「弱くはないが強くもない」というなんとも絶妙なできばえのサブ垢――もとい搾取用ダンジョンをぽこぽこ作りまくってエネルギーを稼ぎ、俺の城の内装を整え終えた頃。
ある日、神サマからイベント開始の通知が届いた。
ダンジョン防衛とダンジョン攻略で転生者が分かれて争う? マジかよ。
慌てて「はじまりのエデン」に他の転生者が侵入可能になっていないか設定を確認したが、この場所はチュートリアル専用で特別なのか、やはり俺しか入れない仕様なのは変わっていなかった。
念のため、小物作成で設置した周辺監視カメラを使って「はじまりのエデン」周辺も確認する。
異常なし。
よしよしよし。
俺の城が無事ならなんでもいいや。
転生者ゲーム関連のことは全部シカトするつもりだったけど、ダンジョンを使ったイベントならちょっと興味がある。
サブ垢量産でスキルレベルが上がって、<都市建設>に「拠点登録したダンジョンへはどこからでも転移で帰還可能」という能力が備わったことだし、そこらに増やしまくったダンジョンのうちひとつをイベント用に改装してみるか。
別にこのイベントで負けても「はじまりのエデン」が何か損壊するというわけでもなし、ホームがあるというのは心の余裕を生むものだ。
「……ん? なんだこれ」
妄想半分のイベント計画を立てながらカメラを覗いていると、俺しか入れない俺の城の入り口に、なにやら張り紙がしてあるのを見つけた。
紙に書かれているのは日本語だ。
「ダンジョン攻略側に割り振られた日本人だ。防衛側の報酬の方が必要なため、防衛イベントの方に協力させてほしい。本日昼にこの張り紙を回収しに来るので、NOなら返事を書いて貼り付け、YESなら拠点へ招待してくれ」
……ほんとかね。
通知来たの一時間前なんだけど、その一時間のうちに「はじまりのエデン」に来て入れないことを悟って手紙を残した?
若干うさんくさい気もするが、攻略者側の話が聞けるというのは興味深い。
護衛の魔物を作成して、進入不可のトラップごしに話を聞くのはアリかもしれない。
現段階ではYESでもNOでもないが、手紙は書いておくことにしよう。
とはいえ、俺の城にこいつを入れることは出来ない。
手近なところで――そうだな。
「ひとまず話を聞かせてください、ナトリトン地下遺跡ダンジョンの10層目で、お待ちしています……っと」
日本語で返信を書いて、使い魔に入り口の張り紙の上へ貼りに行かせる。
昼まであと二時間くらいだな。
寝るか。
突然襲われたりしないように、ナトリトン地下遺跡ダンジョンの10層目にギミックだけ用意してベッドに転がった。
そういえばもう俺の城になっているこの「はじまりのエデン」、15層しかないから即日で全域マッピングを済ませたんだけど、マップ的にはどうやっても行けない謎空間があるんだよな。
そこに行くために結構なダンジョンエネルギーを費やして通路を繋げたりもしたが、壁と壁の隙間にズレが作られていてうまいとこ通路が繋げられず、動かすことも出来ない。
その空間にダンジョンコアや俺の私室を置ければ安全度はアップするだろうに。
まあ、このイベントが終わったらダンジョンエネルギーをまた集め直して再度謎空間に挑戦するのもアリだろう。
これからイベント用に育て直すサブダンジョンも、うまくいったら別荘扱いにするのもいいな。
これでもかと夢を広げながら、俺は異世界をすこしも感じさせないワンルームで眠りについた。
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