上 下
73 / 193
章1

幕間 【俺しか入れないダンジョンで安全圏からダンジョンマスターします】 (2)

しおりを挟む
 居住空間に、500E使って宝箱を設置。
 こちらは時間経過で中身が変わり、いくら開けても次の日には中身が何かしら入っているというダンジョン専用の不思議な宝箱だ。

 俺の部屋に設置することで、現代人あこがれの「寝て起きたら日常生活のログインボーナスが貰える環境」の完成である。

 ゲームの通りならば、中身は主に以下の通り。



 ・装備類
 ・装飾品、マジックアイテム類
 ・ダンジョンの外に転移できる「帰還石」
 ・保存食
 ・ポーション類



 宝箱を開閉すると、この中のどれかが一日ひとつ、宝箱から出てくるというガチャ仕様だ。
 10個くらい設置したら10連ガチャできるんだけど、私室に10個も宝箱を設置する気はない。
 やるなら別のフロアだな。

 早速開けてみる。
 出てきたのは炎のような刀身を持つ剣だった。
 鑑定スキルは持っていないので、ためしに装備してみてからステータス欄で装備の詳細を確認する。

 魔剣イフリート。
 SSSR(神器級装備)。
 おお、これは絶対売れる。

 よしよし、こいつはしばしの生活費になってくれるぞ。

 あとは人型の魔物でも作って、町まで売りに行かせれば完全に引きこもり生活が――魔物……?

「あああああエネルギー使い切っちまったあああああああ」

 使い魔を作るエネルギーくらい残しておけと数分前の自分に突っ込みを入れたいが、凝って家具をあれこれ作ってしまった時点で既に詰んでいた。

 計画性はない。


 魔剣の売却は一旦諦め、スキルを使ってできることをもう少し確認していく。

 ダンジョンコアを作る――つまり、ダンジョン自体を新規作成する分には、ダンジョンエネルギーは消費されない。
 使うのは自分のMPだけだ。
 そして、他のダンジョンで集めたエネルギーを、拠点登録したダンジョンに集めることも可能……。

 ということはだよ。
 この「はじまりのエデン」を拠点登録して、各地に仮設ダンジョンを作りまくってはした金ならぬはしたエネルギーを集めれば、ここもっとラクに強化できるのでは?

 あれだ。
 ソシャゲでサブ垢作りまくって新規登録特典のアイテムを本垢にかき集めるみたいな戦法だ。
 規約でそういう行為がNGになっているゲームも多いが、ここはゲームの世界ではない。
 誰にも怒られない。
 MPが許す限り、作り放題である。

 新設ダンジョンはそのまんまだと全部で20階層。
 ダンジョン1つ作るたびに貰える10000Eのうち、魔物の配置などの初期投資を除いて、宝箱を申し訳程度に配置して残りを拝借するという寸法だ。

 雑魚魔物なら10Eで作れる。
 考え無しに1層あたり50匹配置すると10000Eなど20層で使い切ってしまうわけだが、5層ごとにボスフロアを用意してゆけばエネルギーは使い切らずに済む。

 ボスフロアの予算は150Eくらいにしておこう。
 最初は50Eで作れるちょっと強い魔物を3匹配置、次から150Eで作れる強い魔物を1匹ずつだ。

 ふふふ。
 長年、ゲームをするためだけに女の子の家を渡り歩いた俺だ。
 こういうせせこましいことは得意だよ。

 雑魚フロアが合計8000E、ボスフロアが合計600Eということで、余りは1400E。

 1000Eで宝箱を2つ設置して、端数の400Eを本垢――もとい、「はじまりのエデン」に着服。

 MPが回復次第、ダンジョンを乱立させていくとして。
 とりあえず目標100箇所くらい作るかな。
 頑張ろう。労働はいいものだ。

 ここから出る気一切ないけど。




 そんなわけで、各地に「弱くはないが強くもない」というなんとも絶妙なできばえのサブ垢――もとい搾取用ダンジョンをぽこぽこ作りまくってエネルギーを稼ぎ、俺の城の内装を整え終えた頃。

 ある日、神サマからイベント開始の通知が届いた。

 ダンジョン防衛とダンジョン攻略で転生者が分かれて争う? マジかよ。

 慌てて「はじまりのエデン」に他の転生者が侵入可能になっていないか設定を確認したが、この場所はチュートリアル専用で特別なのか、やはり俺しか入れない仕様なのは変わっていなかった。

 念のため、小物作成で設置した周辺監視カメラを使って「はじまりのエデン」周辺も確認する。
 異常なし。

 よしよしよし。
 俺の城が無事ならなんでもいいや。

 転生者ゲーム関連のことは全部シカトするつもりだったけど、ダンジョンを使ったイベントならちょっと興味がある。

 サブ垢量産でスキルレベルが上がって、<都市建設>に「拠点登録したダンジョンへはどこからでも転移で帰還可能」という能力が備わったことだし、そこらに増やしまくったダンジョンのうちひとつをイベント用に改装してみるか。

 別にこのイベントで負けても「はじまりのエデン」が何か損壊するというわけでもなし、ホームがあるというのは心の余裕を生むものだ。

「……ん? なんだこれ」

 妄想半分のイベント計画を立てながらカメラを覗いていると、俺しか入れない俺の城の入り口に、なにやら張り紙がしてあるのを見つけた。

 紙に書かれているのは日本語だ。
 「ダンジョン攻略側に割り振られた日本人だ。防衛側の報酬の方が必要なため、防衛イベントの方に協力させてほしい。本日昼にこの張り紙を回収しに来るので、NOなら返事を書いて貼り付け、YESなら拠点へ招待してくれ」
 ……ほんとかね。
 通知来たの一時間前なんだけど、その一時間のうちに「はじまりのエデン」に来て入れないことを悟って手紙を残した?

 若干うさんくさい気もするが、攻略者側の話が聞けるというのは興味深い。
 護衛の魔物を作成して、進入不可のトラップごしに話を聞くのはアリかもしれない。
 現段階ではYESでもNOでもないが、手紙は書いておくことにしよう。

 とはいえ、俺の城にこいつを入れることは出来ない。
 手近なところで――そうだな。

「ひとまず話を聞かせてください、ナトリトン地下遺跡ダンジョンの10層目で、お待ちしています……っと」

 日本語で返信を書いて、使い魔に入り口の張り紙の上へ貼りに行かせる。

 昼まであと二時間くらいだな。
 寝るか。

 突然襲われたりしないように、ナトリトン地下遺跡ダンジョンの10層目にギミックだけ用意してベッドに転がった。

 そういえばもう俺の城になっているこの「はじまりのエデン」、15層しかないから即日で全域マッピングを済ませたんだけど、マップ的にはどうやっても行けない謎空間があるんだよな。

 そこに行くために結構なダンジョンエネルギーを費やして通路を繋げたりもしたが、壁と壁の隙間にズレが作られていてうまいとこ通路が繋げられず、動かすことも出来ない。

 その空間にダンジョンコアや俺の私室を置ければ安全度はアップするだろうに。
 まあ、このイベントが終わったらダンジョンエネルギーをまた集め直して再度謎空間に挑戦するのもアリだろう。

 これからイベント用に育て直すサブダンジョンも、うまくいったら別荘扱いにするのもいいな。
 これでもかと夢を広げながら、俺は異世界をすこしも感じさせないワンルームで眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

短編エロ

黒弧 追兎
BL
ハードでもうらめぇ、ってなってる受けが大好きです。基本愛ゆえの鬼畜です。痛いのはしません。 前立腺責め、乳首責め、玩具責め、放置、耐久、触手、スライム、研究 治験、溺愛、機械姦、などなど気分に合わせて色々書いてます。リバは無いです。 挿入ありは.が付きます よろしければどうぞ。 リクエスト募集中!

EDEN ―孕ませ―

豆たん
BL
目覚めた所は、地獄(エデン)だった―――。 平凡な大学生だった主人公が、拉致監禁され、不特定多数の男にひたすら孕ませられるお話です。 【ご注意】 ※この物語の世界には、「男子」と呼ばれる妊娠可能な少数の男性が存在しますが、オメガバースのような発情期・フェロモンなどはありません。女性の妊娠・出産とは全く異なるサイクル・仕組みになっており、作者の都合のいいように作られた独自の世界観による、倫理観ゼロのフィクションです。その点ご了承の上お読み下さい。 ※近親・出産シーンあり。女性蔑視のような発言が出る箇所があります。気になる方はお読みにならないことをお勧め致します。 ※前半はほとんどがエロシーンです。

皇帝の肉便器

眠りん
BL
 この国の皇宮では、皇太子付きの肉便器というシステムがある。  男性限定で、死刑となった者に懲罰を与えた後、死ぬまで壁尻となる処刑法である。  懲罰による身体の傷と飢えの中犯され、殆どが三日で絶命する。  皇太子のウェルディスが十二歳となった時に、肉便器部屋で死刑囚を使った自慰行為を教わり、大人になって王位に就いてからも利用していた。  肉便器というのは、人間のとしての価値がなくなって後は処分するしかない存在だと教えられてきて、それに対し何も疑問に思った事がなかった。  死ねば役目を終え、処分されるだけだと──。  ある日、初めて一週間以上も死なずに耐え続けた肉便器がいた。  珍しい肉便器に興味を持ち、彼の処刑を取り消すよう働きかけようとした時、その肉便器が拘束されていた部屋から逃げ出して……。 続編で、『離宮の愛人』を投稿しています。 ※ちょっとふざけて書きました。 ※誤字脱字は許してください。

処理中です...