人生初の友達ができたので一緒に世界救ってきます (せかます)

す!ず!は!

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章1

美しい人魚だと思っていたら本体は下半身の巨大な口腔だったみたいな話(2)

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(せ、セイレン。今の、ウルティナのところに行ってたりしないよね?)

『あのまがいもののことですの? 少なくとも、トールの知り合いには付いていないはずですわ』

(そっか……ありがとう、助かったよ)

 よかった。
 これで種子がウルティナのところに飛んでいってしまっていたら本末転倒だった。

 嫉妬の種を放った男は、再度光球を生成しようというそぶりは見せない。
 一度きりしか撃てないか、連発できないほどMPを消耗する代物なのだろう。

 建物の奥から爆発音が聞こえてきた。
 勝宏がここに一人で乗り込んできたということは、この音は詩絵里たちか。

 ウィルもまだ帰ってきていないところを考えると、施設内部を彼が案内しているのかもしれない。

 半分解決したような心境の透だったが、駆け寄ってきた勝宏は透の状況を間近に見て顔色を失った。

 勝宏には以前にも貞操を心配されたことがあったが、この状況は言い逃れのしようがないほど明らかにレイプ後である。
 透は一応された側のはずだが、なんとなく未遂であることを釈明しないといけないような気分になる。

「ごめん。透。また……守ってやれなかった。俺……」

 大丈夫、と言葉にしようとしても、声は出ないままだ。

 スキルによって生成された剣で手足の拘束が断たれる。
 上は若干心もとないが、着ないよりはましだろう。
 散らばった服をかき集める。

 勝宏が男に向けて剣を構えた。
 彼のスキルが、手先から徐々に勝宏を装甲でつつんでいく。

 スマホの画面に目を落としていた男は、にたりと笑って口を開いた。

「偽善にかまけている間に自分の女を手篭めにされるというのは、どんな気分だ?」

 分かりやすい挑発だ。
 しかし、透の惨状を見たあとで気が立っていた勝宏にはそれさえ分からなかったのだろう。

「この野郎……!」

「世界のありようを変えるつもりなら、女など作るべきじゃない。自分の女を守る気なら、他の人間など見捨てるつもりでいろ。一人の英雄の手が世界全てに回るなど幻想だ」

「透を襲ったおまえらに……言われる筋合いはない……!」

 地を這うような咆哮とともに、勝宏が男へ切りかかっていく。
 スマホをタップして、男が何かの召喚魔法を発動させた。

 魔方陣とともに現れたのは三人の美少女だ。

 騎士風の少女、小悪魔のような羽が生えた少女、機械っぽさが見られるアンドロイドの少女。
 まるでスマホのアプリゲームで使われるビジュアルカードイラストである。

 目の前の男は、いうなれば「ガチャスキルで装備や仲間ユニットを手に入れて戦うチート」持ちの転生者なのだろう。
 とすると、男のスキルは手元のスマホに依存することになる。

 本人や召喚された少女たちを狙うより、スマホの奪取もしくは破壊を狙った方が効率的だが――それを戦闘中の勝宏に伝える手段が無い。

 男への攻撃を阻害してくる小悪魔を蹴り飛ばして、騎士の剣を叩き折る勝宏は、怒りに支配されているように見えた。
 荒々しい大振りの攻撃には隙が多く、間隙に差し込まれる敵からの攻撃を避けようともしない。

「そうだ、もっと狂え。感情こそが発芽の引き金になる」

 勝宏と少女たちの戦いを傍観しながら、男が楽しげに笑う。

 その男の意図は分からないが、このまま勝宏ひとりに任せて良い結果になるとは思えない。
 少し考えて、セイレンに確認を取った。

(あの男の人の持ってるスマホを奪いたいんだけど、ここから遠隔で相手を痺れさせるとか、できる?)

『すまほ? あの魔法の媒体になっている光る板ですの? その程度、容易いことですわ』

 言い終わるやいなや、男の頭を白いもやが包み込んだ。
 ぐらりとよろける男に向かって駆け出す。
 少女たちが勝宏と戦っている間に、あれを奪うのだ。

 ウィルの補助なしで混戦のそばを突っ切るのには勇気が要ったが、どうにかかすり傷で抜けることができた。
 やればできるものである。
 倒れた男の手元から、画面のバックライトがついたままのスマホを取り上げる。

 ちょうどそのタイミングで、勝宏が召喚少女を全員蹴散らした。

 これでここに関しては一件落着。
 あとは詩絵里たちの援護へ――そう安堵しかけた透のすぐ横で、勝宏が剣を振り上げた。

 セイレンによって既に戦闘不能になっている男に追いうちをかけようとしている。

 咄嗟に、勝宏の体にしがみついた。
 無防備な状態で斬り付ければ、いくら転生者といえども命を落とすだろう。

 彼の本意ではないことを、みすみすやらせるわけにはいかない。

「おれが、おれがまもる、だれにも、わたさない、おれが……」

 勝宏の無感情な呟きが、繰り返し聞こえてくる。
 これまで怒りで我を忘れているのかと思っていたが、何かがおかしい。

 それなのに、今の自分では声をかけてやることができない。
 壊れたロボットのように同じ言葉を紡ぎ続ける勝宏を、せめて、強く抱きしめる。

「……とお、る」

 呟きが遠ざかり、名前を呼ばれて顔を上げる。
 いつのまにか変身の解けていた彼と目が合った。

「あ、あれ? 俺、……とっ、透!? ちょ、その格好で抱きつ、!? あわわわわ離して、離して!」

 透の体に不用意に触らないようにか、勝宏が両腕をあげて思い切り顔を逸らす。
 たった今まで手にされていた剣ががらん、と音を立てて床に転がった。

 戻ってきた。
 いつもの勝宏だ。

 感極まってもう一度腕に力を込めてしまう。
 透の力など、攻撃量上昇のリングをつけていたところでたいした腕力ではないはずだが、教会内には「ああー! むねー!」と勝宏の泣きそうな悲鳴が響き渡った。




 施設内の構成員は、転生者とそうでないものとが混じっている状態だった。
 詩絵里たちの話では、転生者メンバーはほとんどが既に騒動中に脱出を済ませており、もともとこの世界の人間だった構成員だけを捕縛したようなものだったらしい。

 透の側としても、いくつか報告がある。
 筆談ではあるが、嫉妬の種と呼ばれた呪物がどこかへ姿を消したことを話すと、ウルティナは喜色満面で「本当ですか!」と声を上げた。

「それは朗報です。これで少なくとも、嫉妬の種による破滅への道は免れたはず。皆さん、ありがとうございます」

「免れた、って、どういうこと?」

「嫉妬の種は、一度術者の手から離れると寄生先を自力で見つけられないのです。どこに飛んでいったかは分かりませんが、偶然種子を拾いでもしない限り転生者を蝕むことはないでしょう」

 構成員たちを縛り上げながら、ウルティナが笑顔で答える。

「それはつまり……」

「ええ、婚約の件はもう結構です。破棄させていただきます」

 その場に、微妙な空気が流れていく。
 勝宏も透も、その場に動きを止めた。

 空気を読まないルイーザが、文字にすればプークスクスとしか表現できないだろう笑い声を上げる。

「勝宏さん、ふられちゃいましたねー」

「よかったのかもしれないわよ」
「なんでですか?」

「勝宏くんには、好きな人がいるみたいだから」

 詩絵里が、さらりと衝撃の事実をぶちまけてきた。
 ルイーザが顔色を変える。

「え! そうなんですか! そうと知らず、変な提案しちゃってすみません! お相手さんに今回の婚約のこと、バレないといいですね……」

 ……そうだったんだ。

 勝宏、好きな人、いるんだ。
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