人生初の友達ができたので一緒に世界救ってきます (せかます)

す!ず!は!

文字の大きさ
51 / 193
章1

札束で殴るイベを無課金で突っ切る鬼のような所業(4)

しおりを挟む
 詩絵里の待つ階層へ戻ると、そこには既に勝宏とルイーザが戻ってきていた。

 完全に行き違いだったようだ。
 転移ですぐに戻ることのできる自分が一人で様子を見に行っていて正解だったと思う。

「え、じゃあその落とし穴から落ちればこのダンジョンクリア扱いになるってこと?」
「ああ、そういや詩絵里には踏破通知来てないんだな。今度は皆で降りるか?」

 勝宏とルイーザが階下に落ちてからの話をしている。
 透はゲーム参加者ではないので分からなかったが、あのフロアに下りるだけで踏破報酬が貰えるなら詩絵里も貰っておいた方がいい気がする。

 しかし、今度は皆で、というが、全員で降りても安全に帰還できると分かっているのは透だけである。

「透さんは一度降りてますからね。詩絵里さんの分の帰還魔方陣が出るかもしれないし、降りちゃいます?」
「いや、皆で降りてもし帰還魔方陣出なかったら困るじゃない」

「大丈夫だと思うけどなあ。透さんの時どうでした? あの、転生者がダンジョン踏破した時に出てくる魔方陣」
「あ……えっと……」

 まずい。
 自分の時にそんなものが出てきたはずがない。

 だがここで答えるのがYESでもNOでも、言い訳のしづらい方向に転がりそうである。

「……そんな面倒なことしなくていいわよ」

 詩絵里もその案については即座に却下した。

「でも……うーん、そうね。勝宏くんMP余ってる?」

「うん? 結構あると思うけど。あと2、3戦はスキル使ってボスバトルできそう」
「じゃあちょっと協力してちょうだい」

 言って、詩絵里が魔法を発動させた。

 このあいだも見た、哲司を拘束していた蔓の魔法だ。
 蔓が絡みあい、太いロープ状になって詩絵里の腰と勝宏の腕に巻きつく。

「降りて、踏破通知が確認できたら花を咲かせて合図するから、そのタイミングで引っ張り上げて」

「了解。着地は大丈夫か?」
「平気よ。魔法使い舐めないで」

 にやりと笑う詩絵里に、勝宏とルイーザが尊敬の眼差しを向ける。
 が、透は知っている。
 彼女の「着地」は魔法技術1割、度胸9割の代物であることを。

「が……頑張ってください……」

 詩絵里がサムズアップをして躊躇いなく奈落の底へ飛び込んでいく。
 なんともいえない気持ちで彼女を見送って、勝宏の手元にある蔓の開花を待つ。

「いやあ、でもどうにかなってよかったです!」
「そうだな」

「このダンジョンの次はどこ行きます? 一応、次に選ぶのに効率よさそうなダンジョンっていえばアポセカリの町にある氷のダンジョンですけど」

 落とし穴に落下して以降二人で行動していたからか、勝宏とルイーザは結構気軽に話す関係になっていた。

 もともと魔物を切り伏せながら雑談していたような仲だ。
 親密になるまでも早い。

「どんな町なんだ?」

「おそらくこの世界でもっとも医学が発展しているって言われている町です。なんでも、前世では医療関係のお仕事されてた転生者がその町に住んでるらしいですよ」

「医療……」

 ちろ、と勝宏がこちらに視線を向ける。
 勝宏の考えていることになんとなく見当がついて、そんなこと気にしなくていい――と伝えようとしたところで、合図の花が咲いた。

「あ、きましたね。私手伝います?」
「いやいいよ。詩絵里ひとりくらい引き上げられるし」

 詩絵里は変身スキルを使用する前提で勝宏に協力を頼んだようだが、スキルを使うまでもなく彼なら引き上げられるだろう。

 穴の中から蔦がみるみる回収されていく様子を眺めていると、ルイーザが透の隣にやってくる。

「勝宏さん、すごい心配してましたよ」
「……あ、あの」

 いま、美少女が至近距離で耳打ちしてくるというある意味貴重な経験をさせてもらっているが、人見知りレベルカンストの透には体を強張らせるくらいしかできない。

「透さんのこと大好きなんですねー。ちょっと行き過ぎてる感じもしますけど、仲が良いのはいいことです」

 半分混乱しながら彼女への返答に迷う。

 気さくな声掛けからして、勝宏と同じように、分け隔てなく透とも親しくしてくれるつもりなのだろう。
 せっかく話しかけてくれているのに、話の内容はさっぱり頭に入ってこない。

 詩絵里と会った時の方がまだましだったように思うが、勝宏たちと一緒にいてわずかながら改善されたと思っていたコミュニケーションレベルはひょっとして悪化していたのだろうか。

「ほんとに踏破通知きたわねー!」

 勝宏に引っ張り上げられた詩絵里がほくほく顔でフロアに戻ってくる。
 幸い、ルイーザの興味はすぐにそちらへ向かっていった。

「おかえりなさーい! でも、どうして詩絵里さんだけ降りたんです? 帰還魔方陣の方が早くないです?」

「あー、っとね、透くんの場合ちょっとイレギュラーが多くて、彼に起きたことがそのまま私にも当てはまるとは限らないっていうか」

「うーん……よく分かりませんけど……」

 言い訳が苦しくなってきた。
 視線を泳がせる詩絵里に、勝宏が声を掛ける。

「さっき、ルイーザと次どこ行こうかって話してたんだけどさ」
「あ、そうね。帰り道がてらその辺も決めちゃいましょ」

 ルイーザへの回答は流れたまま、大蛇の素材を回収して、20層目をあとにする。

 魔物のリポップされていないフロアを素通りしながら、ルイーザの勧めていたダンジョンを詩絵里にも説明した。

「日本の医学が正確に伝わってる町って話ならありがたいわね。精神科についてどうだか分からないけど、透くん一回行ってみる? ドラゴンダメなんでしょ?」

 その言葉に、勝宏があっと声を上げた。

「あのさ詩絵里……透のことなんだけど」

 勝宏が詩絵里にぼそぼそと話しているのは、おそらく宝石化の副作用の件だ。
 取れる選択肢としては、イベントが終わるまで秘匿し続けるか、きりのいいところで話してしまうかのどちらか。

 打ち明けるのなら、ひとつめのダンジョン踏破が完了したこのタイミングがいいだろう。

 話を終えたところで、詩絵里がこちらの手を取った。

「暗がりで分からなかったけど……なるほどね」
「す、すみません」

「いや、いいわ。で、治療のあてもあるのよね?」
「はい。でも、確実に治療できると分かっている場所まで、移動するには時間がかかるみたいで」

「かといって透くんだけ転移じゃ、契約のマジックアイテムがいつ作動するか分からないと」

 詩絵里が大きくため息ひとつ。

 次から次へと厄介ごとを運んできてしまって、パーティーのブレーンには非常に申し訳なく思う。

「あの、何か……?」

「いやね、透くんちょっと身体の調子が悪いらしいの。次のダンジョン、医療の町なんでしょ? どうにかならないかなって話をしてたのよ」

「そうなんですね。あ、でもその町の転生者さん、状態異常を完全に治せるって聞きましたよ」

「え!?」

 ルイーザの何気ない一言に、勝宏と詩絵里が同時に彼女を二度見した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

逃げる銀狐に追う白竜~いいなずけ竜のアレがあんなに大きいなんて聞いてません!~

結城星乃
BL
【執着年下攻め🐲×逃げる年上受け🦊】  愚者の森に住む銀狐の一族には、ある掟がある。 ──群れの長となる者は必ず真竜を娶って子を成し、真竜の加護を得ること──  長となる証である紋様を持って生まれてきた皓(こう)は、成竜となった番(つがい)の真竜と、婚儀の相談の為に顔合わせをすることになった。  番の真竜とは、幼竜の時に幾度か会っている。丸い目が綺羅綺羅していて、とても愛らしい白竜だった。この子が将来自分のお嫁さんになるんだと、胸が高鳴ったことを思い出す。  どんな美人になっているんだろう。  だが相談の場に現れたのは、冷たい灰銀の目した、自分よりも体格の良い雄竜で……。  ──あ、これ、俺が……抱かれる方だ。  ──あんな体格いいやつのあれ、挿入したら絶対壊れる!  ──ごめんみんな、俺逃げる!  逃げる銀狐の行く末は……。  そして逃げる銀狐に竜は……。  白竜×銀狐の和風系異世界ファンタジー。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

処理中です...