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章1
死に戻りの有無は?(4)
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宿の従業員たちもこの騒動には頭を抱えていたらしく、問題の旅人が泊まっている部屋の番号は教えてもらうことができた。
といっても一応は利用客。宿の体裁上、それ以上のことまでは協力してもらえそうにない。屋内で荒事にはしないようにと強く念押しされてしまった。
教えてもらった部屋へ躊躇いなく向かう勝宏に、自分はというと怖々ついて行くだけである。
部屋の前に着くと、勝宏は念のため、と少し下がるように言ってきた。透が離れるのを確認して、彼が扉を叩く。
「おい、いるんだろ? 話がある、出てきてくれ」
返事はない。まあ、これだけで出てきてくれるなら、町の人たちが宿の前に群がることもないか。
しばし考えるような素振りを見せて、勝宏がもう一声かけなおした。
「おまえも転生者なんだよな? ゲームのことで、話が聞きたい」
ややあって、閉じられていた扉が開く。扉の隙間から、中学生くらいの男の子が顔を覗かせた。
……開けた途端攻撃魔法が飛んでくる、なんてことにならなくてよかった。
「……あんたも転生者か?」
「ああ。俺は勝宏。あっちは透だ」
警戒している様子だった男の子へ、勝宏が先に名乗る。勝宏と透を交互に確認し、少年が扉の中へ招き入れてくれた。
少なくとも、奇襲やだまし討ちをするつもりで訪ねたわけではないことは、理解してもらえたようである。
「おれは鷹也。今の名前はホルン・ド・ノルディア。ノルディア子爵家の五男だ」
旅の少年、ホルン――鷹也は貴族だったらしい。
あ、日本名だけじゃなくて、こっちの名前を持っているということは。
「転生して、3歳の頃に記憶を取り戻した。神に言い渡されたゲームの仕様についてもな」
……やっぱりそうか。ホルンは生前と同じ外見で転移もどきの転生をしたのではなく、この世界でやり直したタイプの転生者なのだ。
「単刀直入に聞く。鷹也、ゲームについてどう思ってる?」
勝宏の問いに、鷹也は「あー」と頭を掻いた。
「正直、どんだけ日本人連れてくる気だよとは思うけど。一般の冒険者狩ってまでガチ勢になるつもりはないが、それなりに参加はするさ。欲しいスキルもないわけじゃないしな」
「……やめる気はないんだ?」
「そりゃな。個人主催ならともかく、神様主催のゲームなんだ。従っておいた方が無難じゃないか」
日本でそれなりの年齢だったろうに、3歳からやり直したなんて大変そうだなあ、と蚊帳の外でのんびり考えていたところだったので、勝宏の目が据わった瞬間を目撃してしまった。
静かに怒るの、初めて見たかもしれない。
「クルスを倒したのも鷹也なのか?」
「まあね。俺としては、遭遇した以上はあんたらとも戦っておきたいんだけど?」
ごく自然な流れで自分も頭数に組み込まれているのを知って、透は卒倒しそうになった。
なんだか空気がぴりぴりし始めて、ちょっと息苦しい。許されるならこのままそっと退室したい。
「クルスは、今までずっとゲーム不参加を貫いてきてたんだぞ」
「知ってる。だから町の上空に<滅の彗星>を配置して、いまからこいつをここに落とすって言わないと頷かなかった」
「おまえ……! 無関係の人をたてにしたのか!」
「そうだけど、仕方ないだろ。おれの勝利条件は「相手を逃げられない状況に追いつめて倒すこと」なんだから」
勝宏を除いて初めて出会った転生者、思った以上に怖い人だった。話はもう全部勝宏に任せっぱなしだが、聞いているだけでも寒気がする。
最初に会ったのがこの人じゃなくて勝宏でよかった。
「負けたやつがどうなるか、分かってんの?」
「ああ、光になって消えるな」
「人殺しておいて、よく平然としてられるな」
「殺す? あれでか?」
だめだ。勝宏完全に喧嘩腰だ。鷹也さんもそんな強気の態度じゃなくてもっと穏やかにいこう。
と、言えたらいいのだが会話に割り込めるほど透のメンタルは強靱ではないのである。
「うちの神様からは、負ければ死に戻りするって聞いたが?」
「よく考えてみろよ。このゲームの参加条件は「転生」なんだ。一度日本で死んでるのに、こっちでゲームオーバーになったからって、日本で今までどおり生き返らせてもらえると思うのか?」
勝宏の推測は、分からないでもない。
勝ち残った人間がご褒美として、生前の事故死する前に遡って日本に帰してもらえるとかならまだしも、負けただけのその他大勢をいちいち辻褄合わせしながら現代日本へ復帰させてくれるとは考えにくい。
そんなことをしていたら、せっかく連れてきた転生者のなかでも日本に戻りたい連中はすぐに死に戻りしようとするだろう。
「その時はその時さ」
鷹也はというと、勝宏の言葉にもどこ吹く風である。
その様子に拳を握りしめた勝宏が、信じられない台詞を吐いた。
「……よーく分かった。なら、鷹也。俺と勝負だ」
「勝宏!?」
あれだけ転生者ゲームに忌避感を抱いていた勝宏らしからぬ発言だ。
「いいぞ。その代わり、勝宏だっけ? おまえが負けたら、一緒に居るそいつ――透も俺が倒させてもらう」
「なるほど、これで鷹也の方の条件はクリアってわけ。……確かに負けらんないね」
いつの間にか勝利条件、というか勝負のだしにされている。
勝宏に目を向けると、大丈夫だから、と彼が微笑みかけてきた。
「ごめん、透。レベル上げつき合うって言ってたけど、先にこいつとやらせて」
といっても一応は利用客。宿の体裁上、それ以上のことまでは協力してもらえそうにない。屋内で荒事にはしないようにと強く念押しされてしまった。
教えてもらった部屋へ躊躇いなく向かう勝宏に、自分はというと怖々ついて行くだけである。
部屋の前に着くと、勝宏は念のため、と少し下がるように言ってきた。透が離れるのを確認して、彼が扉を叩く。
「おい、いるんだろ? 話がある、出てきてくれ」
返事はない。まあ、これだけで出てきてくれるなら、町の人たちが宿の前に群がることもないか。
しばし考えるような素振りを見せて、勝宏がもう一声かけなおした。
「おまえも転生者なんだよな? ゲームのことで、話が聞きたい」
ややあって、閉じられていた扉が開く。扉の隙間から、中学生くらいの男の子が顔を覗かせた。
……開けた途端攻撃魔法が飛んでくる、なんてことにならなくてよかった。
「……あんたも転生者か?」
「ああ。俺は勝宏。あっちは透だ」
警戒している様子だった男の子へ、勝宏が先に名乗る。勝宏と透を交互に確認し、少年が扉の中へ招き入れてくれた。
少なくとも、奇襲やだまし討ちをするつもりで訪ねたわけではないことは、理解してもらえたようである。
「おれは鷹也。今の名前はホルン・ド・ノルディア。ノルディア子爵家の五男だ」
旅の少年、ホルン――鷹也は貴族だったらしい。
あ、日本名だけじゃなくて、こっちの名前を持っているということは。
「転生して、3歳の頃に記憶を取り戻した。神に言い渡されたゲームの仕様についてもな」
……やっぱりそうか。ホルンは生前と同じ外見で転移もどきの転生をしたのではなく、この世界でやり直したタイプの転生者なのだ。
「単刀直入に聞く。鷹也、ゲームについてどう思ってる?」
勝宏の問いに、鷹也は「あー」と頭を掻いた。
「正直、どんだけ日本人連れてくる気だよとは思うけど。一般の冒険者狩ってまでガチ勢になるつもりはないが、それなりに参加はするさ。欲しいスキルもないわけじゃないしな」
「……やめる気はないんだ?」
「そりゃな。個人主催ならともかく、神様主催のゲームなんだ。従っておいた方が無難じゃないか」
日本でそれなりの年齢だったろうに、3歳からやり直したなんて大変そうだなあ、と蚊帳の外でのんびり考えていたところだったので、勝宏の目が据わった瞬間を目撃してしまった。
静かに怒るの、初めて見たかもしれない。
「クルスを倒したのも鷹也なのか?」
「まあね。俺としては、遭遇した以上はあんたらとも戦っておきたいんだけど?」
ごく自然な流れで自分も頭数に組み込まれているのを知って、透は卒倒しそうになった。
なんだか空気がぴりぴりし始めて、ちょっと息苦しい。許されるならこのままそっと退室したい。
「クルスは、今までずっとゲーム不参加を貫いてきてたんだぞ」
「知ってる。だから町の上空に<滅の彗星>を配置して、いまからこいつをここに落とすって言わないと頷かなかった」
「おまえ……! 無関係の人をたてにしたのか!」
「そうだけど、仕方ないだろ。おれの勝利条件は「相手を逃げられない状況に追いつめて倒すこと」なんだから」
勝宏を除いて初めて出会った転生者、思った以上に怖い人だった。話はもう全部勝宏に任せっぱなしだが、聞いているだけでも寒気がする。
最初に会ったのがこの人じゃなくて勝宏でよかった。
「負けたやつがどうなるか、分かってんの?」
「ああ、光になって消えるな」
「人殺しておいて、よく平然としてられるな」
「殺す? あれでか?」
だめだ。勝宏完全に喧嘩腰だ。鷹也さんもそんな強気の態度じゃなくてもっと穏やかにいこう。
と、言えたらいいのだが会話に割り込めるほど透のメンタルは強靱ではないのである。
「うちの神様からは、負ければ死に戻りするって聞いたが?」
「よく考えてみろよ。このゲームの参加条件は「転生」なんだ。一度日本で死んでるのに、こっちでゲームオーバーになったからって、日本で今までどおり生き返らせてもらえると思うのか?」
勝宏の推測は、分からないでもない。
勝ち残った人間がご褒美として、生前の事故死する前に遡って日本に帰してもらえるとかならまだしも、負けただけのその他大勢をいちいち辻褄合わせしながら現代日本へ復帰させてくれるとは考えにくい。
そんなことをしていたら、せっかく連れてきた転生者のなかでも日本に戻りたい連中はすぐに死に戻りしようとするだろう。
「その時はその時さ」
鷹也はというと、勝宏の言葉にもどこ吹く風である。
その様子に拳を握りしめた勝宏が、信じられない台詞を吐いた。
「……よーく分かった。なら、鷹也。俺と勝負だ」
「勝宏!?」
あれだけ転生者ゲームに忌避感を抱いていた勝宏らしからぬ発言だ。
「いいぞ。その代わり、勝宏だっけ? おまえが負けたら、一緒に居るそいつ――透も俺が倒させてもらう」
「なるほど、これで鷹也の方の条件はクリアってわけ。……確かに負けらんないね」
いつの間にか勝利条件、というか勝負のだしにされている。
勝宏に目を向けると、大丈夫だから、と彼が微笑みかけてきた。
「ごめん、透。レベル上げつき合うって言ってたけど、先にこいつとやらせて」
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