聖女の証

とーふ(代理カナタ)

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第42話『……私は神様なんかじゃないです』②

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猫の獣人さんだけでなく、周りを囲んでいた様々な獣人さん達が怒りの声を上げた。

私はそれを見ながら、小さく息を吐いた。

そして、その音に反応したのか、一人の獣人さんが私に向かって飛び込んできた。

「レオ!!! 止めろ!!」

「っ! な、なんで逃げない」

「逃げる理由がありません」

私の首を、大きな犬の獣人さんが半分くらい獣となった体で捕まえ、私の体は床に押し倒された。

その直後、レオと呼ばれた獣人さんを他の獣人さん達が囲み、その急所に爪を向ける。

「皆さん。争いは止めてください」

「っ! しかし、我らはアメリア様を護る為に」

「だとしても、私には必要ありません」

レオさんに向けられていた爪は、ゆっくりと下がり、獣人さん達も少し離れた所から見守ってくれる様だ。

「何故、何故怒らない! 何故逃げない!! 何故抵抗しない!!」

「その必要が無いからです」

「俺が手を出さないと思っているのか!?」

「いえ。手を出されたとしても、構わないと思っているからです」

「っ!」

レオさんはよろよろと私から離れ、後ずさった。

それを見つめながら、私は起き上がり、再び座る。

「かつて私は皆さんの先祖を見捨てました。その争いを止める事なく、私が消える事が最良の道であると信じて」

「……」

「しかし、現実に私の行動は獣人同士の争いから人間と獣人の争いへと変えただけです。ただ意味もなく憎しみを広げただけでした」

「違う! アメリア様のせいじゃない!! 人間が! それも全て人間どもが!」

「私がここに留まり、皆の女神として存在していれば……その憎しみは生まれましたか?」

「っ! そ、それは」

「私は生まれなかっただろうと思います。無論種族間の争いを止める必要はありましたが、それも言葉を尽くせば良かった。全ては今更な事ですが」

「……アメリア様」

「はい。なんでしょうか」

私は左側から話しかけてきた狸の獣人さんに目を向けた。

そして、穏やかに笑う狸の獣人さんは表情を変えぬまま口を開く。

「過ぎた事はどうする事も出来ますまい。それよりも我らは未来の話がしたい」

「はい。それは私も同じです」

「アメリア様はどこかへ向かっているご様子であった。それは間違いないでしょうか?」

「えぇ。間違いないです。私はこの地で強い土の精霊を探しておりました」

「そうですか。ではそちらは我らも調査しましょう」

「ありがとうございます」

「それが終わった場合、その先は何をされるご予定でしょうか?」

「その後は世界の果てへ闇の力を封印しに行きます」
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