聖女の証

とーふ(代理カナタ)

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第34話『はい。これは私がきっと、夢に見ていた景色なんです』

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『……カ! マンマ……団!! 聞こえてるか!?』

「なんだ?」

「ドーラの船からです!!」

「何ィ!? あのババァ何のつもりだ! 通信を聞こえる様にしろ!」

「はい!!」

ボスさんの指示に従って、オークさんが通信機のメモリを弄っていると、不意にノイズが消え、大きな声が飛行機の中に響き渡った。

『バカ共! 早く下に下がんな!!』

「あぁ!? 何のつもりだ! ドーラ!」

『右側の窓から外を見てみなァ!!』

「窓の外だとォ!?」

私も、ボスさんと一緒に小さな丸い窓から外を見ると、そこには大きな大きな雲の塊が存在していた。

「こ、これは……! マズい、すぐに下降準備ィ! 急げ!!」

「え? ボス。これはいったい」

「良いか? あれは『竜の巣だァ!!』人の台詞に被せるな! ババア! いや、今は構っている暇はない! 早くしろ!! 『四十秒で準備しな!』だから俺の言葉に被せるな! だー! もう今はこんな会話してる場合じゃない! あれは暴風の塊だ! アレに巻き込まれたら空中でバラバラにされるぞ!!」

「あ、だめ!」

「え?」

誰が呟いた言葉だっただろうか。

その小さな声が最後の言葉となり、飛行機は一気に安定を失った。

そしてガタガタと大きな音を立てながら地面に向かって落ちてゆく。

私は何とかその落下速度を落とそうと、飛行機の床に触れながら風の魔術で支えようとするが、吹き荒れる風のせいでそれも弾かれてしまう。

「っ!?」

「アメリア嬢!!」

それから、すぐに暴風域へ再び突入した飛行機は一瞬の内に外側が破壊され、外壁がはがされてゆく。

そして、遂に天井が風の中に消え、私とレーニちゃんは吹き荒れる風に自分たちの体を飛行機の中に残す事が出来ず、空に舞い上がった。
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