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第33話『まだ、彼らの願いは生きていたのですね』②
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ウィルバーさんが深く息を吐いた時、木造の家で物音がした。
何だろうかと視線を向けると、大きな扉からウィルバーさんによく似たオークさんが出てくる。
「なんだ? 客か?」
「あぁ。飛行機の事を知ってるお客さんだ。オーヴィル」
「そうか……人間でも知っている奴は居るんだな」
オーヴィルさんはそんな風に呟きながら、ウィルバーさんの近くに座った。
そして、彼が座った事を確認してから、ウィルバーさんは先ほどの話の続きを語り始める。
「それでだ。今は居ないんだが、俺たちの一番下の弟であるマルコがな。人間たちと話してみたいと言って……俺もオーヴィルも何となくそれに頷いて、その人間たちを匿う事にした」
「それからの日常は嵐の時の空の様に変わっていったよ。俺たちは彼らの話す夢にのめり込んでいった。いつか空の向こうに居る女神様に会いに行くんだという彼らの途方もない夢にな」
「しかし、時間の流れは残酷だ。魔族である俺たちは長い時を生きるが、人間はそうじゃない。彼らはいつしか老いて、やがてその命を静かに閉じた。俺たちにこの魂を遺してな」
私はここに降り立ったという、おそらくは彼らの子孫を思って目を閉じた。
もっと早く私がここへ来ていれば、彼らに何か出来たのではないかと思う。
「……っ! ……だ!! ……に!!」
「ん? なんだ。外が騒がしいな」
オーヴィルさんの言葉に、私も何だろうと外へ目を向けて、何となく椅子を立ち上がった。
そして、一番外への出口に近かった事もあり、私が外へ行こうとして、不意に現れた何かに弾かれる。
「アメリア!!」
「っ! っと。なんだ? 子供、か?」
しかし、その外から入ってきた主に私は支えられ、何とか地面に寝る事なく助かったのであった。
「あなたは」
「俺はマルコって言うもんだ。ここに住んでる。お嬢ちゃんは?」
「私はアメリアです。ウィルバーさんに誘われて、家の中にお邪魔していました」
「兄貴に……? 人間を招待とは、中々珍しい事もあるもんだ」
その外からやってきた黒く丸い眼鏡を掛けたオークさんは、マルコと名乗って、そのまま私を抱えて家の中に入り、私を元々座っていた椅子に座らせてくれた。
「おぅ。マルコ。連中はどうだった?」
「準備万端って所だな。今度は負けねぇと息まいてたよ」
「相変わらず口ばかりデカい連中だ」
「ちげぇねぇ。ワハハハハハ!!!」
何だろうかと視線を向けると、大きな扉からウィルバーさんによく似たオークさんが出てくる。
「なんだ? 客か?」
「あぁ。飛行機の事を知ってるお客さんだ。オーヴィル」
「そうか……人間でも知っている奴は居るんだな」
オーヴィルさんはそんな風に呟きながら、ウィルバーさんの近くに座った。
そして、彼が座った事を確認してから、ウィルバーさんは先ほどの話の続きを語り始める。
「それでだ。今は居ないんだが、俺たちの一番下の弟であるマルコがな。人間たちと話してみたいと言って……俺もオーヴィルも何となくそれに頷いて、その人間たちを匿う事にした」
「それからの日常は嵐の時の空の様に変わっていったよ。俺たちは彼らの話す夢にのめり込んでいった。いつか空の向こうに居る女神様に会いに行くんだという彼らの途方もない夢にな」
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私はここに降り立ったという、おそらくは彼らの子孫を思って目を閉じた。
もっと早く私がここへ来ていれば、彼らに何か出来たのではないかと思う。
「……っ! ……だ!! ……に!!」
「ん? なんだ。外が騒がしいな」
オーヴィルさんの言葉に、私も何だろうと外へ目を向けて、何となく椅子を立ち上がった。
そして、一番外への出口に近かった事もあり、私が外へ行こうとして、不意に現れた何かに弾かれる。
「アメリア!!」
「っ! っと。なんだ? 子供、か?」
しかし、その外から入ってきた主に私は支えられ、何とか地面に寝る事なく助かったのであった。
「あなたは」
「俺はマルコって言うもんだ。ここに住んでる。お嬢ちゃんは?」
「私はアメリアです。ウィルバーさんに誘われて、家の中にお邪魔していました」
「兄貴に……? 人間を招待とは、中々珍しい事もあるもんだ」
その外からやってきた黒く丸い眼鏡を掛けたオークさんは、マルコと名乗って、そのまま私を抱えて家の中に入り、私を元々座っていた椅子に座らせてくれた。
「おぅ。マルコ。連中はどうだった?」
「準備万端って所だな。今度は負けねぇと息まいてたよ」
「相変わらず口ばかりデカい連中だ」
「ちげぇねぇ。ワハハハハハ!!!」
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