聖女の証

とーふ(代理カナタ)

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第31話『……やりたい事。ですか』①

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全てが終わった後、私はリアムさん達にこっぴどく怒られた。

特にリアムさんの怒りは凄まじく、ユニコーンの様に魔力を当てるだけで怒りを収めてはくれないのだった。

そして、頭にそれはそれは痛い拳骨を受ける事になった。

「うぅ……まだ痛いです」

「アメリア可哀想。リアムは酷い奴だ。レーニが仕返ししてくる?」

「止めておいた方が良いぜ」

「フィンさん!」

「おっす。頭のたんこぶは治さないのかい?」

「はい。反省の為にも、痛みはちゃんと残しておきます。冷やしはしますけど」

「そっか。それは良い事だ」

フィンさんは穏やかに笑いながら、私の横に座った。

それが嫌だったのか反対側からレーニちゃんが私の体を引っ張り、ピッタリとくっつく。

まるで子供みたいなその仕草に私は笑ってしまった。

「なに?」

「いいえ。レーニちゃんは可愛いなと思いまして」

「え? そう? レーニ。可愛い?」

「はい」

「そっか。えへへ」

嬉しそうにはにかんで、私の足の上でゴロゴロと寝始めたレーニちゃんの頭を撫でつつ、私はフィンさんに視線を向けた。

「リアムさんはまだ怒ってましたか?」

「そりゃあもう。激怒も激怒。宴会だってのに、近づく奴が誰も居ないぜ」

「それは申し訳ない事をしました。次からはもっと上手くやりますね」

「違うだろ」

フィンさんは私のデコを人差し指でピンと弾くと、やや真剣な表情で口を開いた。

私は足の上で暴れるレーニちゃんを撫でて落ち着かせながら、フィンさんの話を聞く。

「アメリアちゃんが駄目だった所は俺たちを頼らなかった事だ。世界の危機だってんで気負ってるのかもしれないけどさ。命を張るのは大人の役目だ。アメリアちゃんはもっと気楽に、旅行気分で良いんだぜ?」

「旅行気分……ですか。考えた事も無かったです」

「そう。例えばそうだな。アメリアちゃんはどっか行ってみたい所とか、やってみたい事は無いか?」

「うーん。うーん。ちょっと思いつかないです」

「なら、少しずつ探していこう。君はまだ子供だ。それが許される年齢だろう? 大人には大人の。子供には子供の役割があるんだ。無理して背伸びする必要は無いさ。それよりもだ。もっと自分のやりたい事を優先しても良いんだぜ」

「……やりたい事。ですか」

「そう。アメリアちゃんが心から望む事さ」

私はフィンさんの言葉を自分の中で溶かしながら、目を閉じて大きく息を吸って、吐いた。

そして目を開き、昨日よりやや欠けた月を見上げながら、今度は小さく息を吐く。

「私の心から、望むもの。うん。考えておきますね」

心に浮かんだ。微かな気持ち。願い。私はまだ小さなそれを抱きしめて、フィンさんに笑いかけるのだった。
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