聖女の証

とーふ(代理カナタ)

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第27話『私にしか出来ない事があります!』③

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気が付けば、テーブルの向こう側に居た陰魔さん達の姿は消えていて、広がっていく霧の中から陰魔さん達の声が響く。

リアムさんはすっかり立っている事も難しくなってしまったようで、ぐったりとしていた。

「どうしましょうか」

『ふふ。姫様はいつ頃お休みになるのかしら』

『さぁ。深い夢の世界へ行きましょう姫様。眠りに落ちた貴女は一つの完成された美となる。それは多くの物語を我々に授けて下さるでしょう。神話の様に』

「……」

『向こうをご覧下さい。姫様』

「っ! アレは、フィンさん! カー君! キャロンさん!!」

『皆さま姫様のお仲間なのでしょう? 大丈夫。寝ているだけですよ』

『そう。そして、これから永遠に夢の中で共に在り続けるのです』

『遊び人、勝気な少年、影のあるお姉さん。さぁ、姫様の相手はどなたが良いでしょうか』

霧が一気に濃くなり、私は風の魔術も使いつつ、自分の手でも引っ張って、何とかリアムさんをフィンさん達の所へ連れて来る事に成功した。

しかし、全員リアムさんと同じ様に寝ているし、霧は動いた私たちを囲むように更に濃くなった。

流石にこうも霧が濃いとどうにも出来ない。

何か打開策は無いか……。

私も意識を保つのがだんだんと厳しくなってきた。

『私としてはやはり王道はリアム様からですね』

『いやいやおねショタも捨てがたい』

『それを言うなら、おねロリも良いのでは?』

『姫様がロリかどうかは議論の余地がありますけれども』

『こちらのお姉さんからしたらロリみたいなモンでしょ!』

『ロリとは相対評価ではなく、絶対評価で考えるべきだ!!』

理由は分からないが、霧が荒れ、一瞬だが、森と空が見えた。

そして方角も何となくだが分かる。

私は風の魔術を爆発させて全員の体を、陰魔さん達が住む森の近くにあった大きな湖へと飛ばした。

『っ!? な、何を!』

『姫様は逃がしませんよ!』

しかし、私の体が霧に絡めとられてしまい、そのまま一気に麻酔毒を吸い込んで瞼が重くなった。

そして何か柔らかい物に受け止められながら、指の一つも動かなくなる。

『残念。リアム氏たちは逃がしてしまいましたな』

『まぁ良いでしょう。元より私たちの目的は姫様ですから』

『そうですな。それに……』

『ふふ。そうね』

『もしかしたら、姫様を取り返そうと彼らが来るかもしれませんからな』

『ふふ、アハハ。アハハハハ!!』

消えていく意識の中で、私は遠くへ飛ばした希望に後の事を託すのだった。
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