59 / 143
第19話『この世界に広がる悲しみを止める為には!』①
しおりを挟む
アルマが奇跡を起こしてから私の生活は一変した。
人々はアルマを崇め、アルマは世界の王となった。
そして私は魔王様も家族の声も聞こえない世界で、日に照らされながらアルマの隣に居続ける事となった。
今までの長い生涯の中で、一度だって消えた事のない彼らの声は、私の心をかき回すには十分な力を持っており、私は『癒しの魔法』以外の魔法が使えなくなった事など気にもせず、ただ、ジーナを、魔王様を、家族を求めた。
しかし、私の中から消えた声はいつまで経っても帰ってくる事は無かったのである。
「母様。他の者など必要ない。私だけを見て下さい」
「アルマ! 私は」
「もし出来ぬと言うのであれば、母様の中からだけでなく、この世界から消し去りましょうか? 忌まわしき者どもを」
「どうして……どうして、その様に憎むのですか?」
「当然ではないですか。私には母様しか居ないのですから」
アルマはいつもの様に笑いながら、私の頬を撫でる。
「それに……母様がいけないのですよ。私の様な者を拾ってしまうから。その優しさが母様の世界を壊すのです」
「私は……」
「ふむ。やはり私だけを見る気にはなれないのですね。ならば仕方ない。例の母様を求める者どもを全て滅ぼしましょう。そして貴女の最も大切な妹を、その首を母様の元に持ってきましょう」
「お願いです! それだけは、それだけは止めてください!」
「残念ですが、お断りします」
アルマは私をベッドに押し倒すと、私の瞳を覗き込んだ。
そして悔しそうに顔を歪めて、怒りのままに口を開く。
「悔やむなら、私だけを見ないその己の心を恨みなさい。だがどの道全てが遅い。私はこの光で貴女を……!」
「ジーナちゃん!! きぃぃいいいいいいっく!!」
「っ!?」
アルマの顔が迫って来た瞬間、私を閉じ込めていた城が、空の彼方より聞こえてきた声と共に訪れた衝撃で大きく揺れた。
「なんだ!?」
「ピカピカ光らせてさ! 良い目印になったよ! おねーちゃんは返して貰うから!」
「ジーナ!?」
「そ。久しぶりだね! お姉ちゃん!」
私は別れた時から少しだけ成長したジーナに抱きかかえられ、崩壊してゆく城を見ながら空中に浮いていた。
そして崩れてゆく城からはアルマが憎しみに満ちた目を向けてくる。
「アルマ……」
「何処へ逃げようと、私は! 必ず!!」
瓦礫の中に消えてゆくアルマから私は目を逸らし、ジーナに縋りついた。
「さぁ。帰ろう。お姉ちゃん。私たちの家に」
「……うん」
そのまま私はジーナにしがみ付いて、遠い故郷である森の奥に帰る事となったのである。
人々はアルマを崇め、アルマは世界の王となった。
そして私は魔王様も家族の声も聞こえない世界で、日に照らされながらアルマの隣に居続ける事となった。
今までの長い生涯の中で、一度だって消えた事のない彼らの声は、私の心をかき回すには十分な力を持っており、私は『癒しの魔法』以外の魔法が使えなくなった事など気にもせず、ただ、ジーナを、魔王様を、家族を求めた。
しかし、私の中から消えた声はいつまで経っても帰ってくる事は無かったのである。
「母様。他の者など必要ない。私だけを見て下さい」
「アルマ! 私は」
「もし出来ぬと言うのであれば、母様の中からだけでなく、この世界から消し去りましょうか? 忌まわしき者どもを」
「どうして……どうして、その様に憎むのですか?」
「当然ではないですか。私には母様しか居ないのですから」
アルマはいつもの様に笑いながら、私の頬を撫でる。
「それに……母様がいけないのですよ。私の様な者を拾ってしまうから。その優しさが母様の世界を壊すのです」
「私は……」
「ふむ。やはり私だけを見る気にはなれないのですね。ならば仕方ない。例の母様を求める者どもを全て滅ぼしましょう。そして貴女の最も大切な妹を、その首を母様の元に持ってきましょう」
「お願いです! それだけは、それだけは止めてください!」
「残念ですが、お断りします」
アルマは私をベッドに押し倒すと、私の瞳を覗き込んだ。
そして悔しそうに顔を歪めて、怒りのままに口を開く。
「悔やむなら、私だけを見ないその己の心を恨みなさい。だがどの道全てが遅い。私はこの光で貴女を……!」
「ジーナちゃん!! きぃぃいいいいいいっく!!」
「っ!?」
アルマの顔が迫って来た瞬間、私を閉じ込めていた城が、空の彼方より聞こえてきた声と共に訪れた衝撃で大きく揺れた。
「なんだ!?」
「ピカピカ光らせてさ! 良い目印になったよ! おねーちゃんは返して貰うから!」
「ジーナ!?」
「そ。久しぶりだね! お姉ちゃん!」
私は別れた時から少しだけ成長したジーナに抱きかかえられ、崩壊してゆく城を見ながら空中に浮いていた。
そして崩れてゆく城からはアルマが憎しみに満ちた目を向けてくる。
「アルマ……」
「何処へ逃げようと、私は! 必ず!!」
瓦礫の中に消えてゆくアルマから私は目を逸らし、ジーナに縋りついた。
「さぁ。帰ろう。お姉ちゃん。私たちの家に」
「……うん」
そのまま私はジーナにしがみ付いて、遠い故郷である森の奥に帰る事となったのである。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ヘンリエッタの再婚約
桃井すもも
恋愛
ヘンリエッタは学園の卒業を半年後に控えたある日、縁談を打診される。
それは王国の第二王子殿下からの勧めであるらしく、文には王家の金色の封蝋が見えていた。
そんな事ってあるだろうか。ヘンリエッタは第二王子殿下が無理にこの婚約を推し進めるのであれば、一層修道院にでも駆け込んで、決して言うがままにはされるまいと思った。
それもその筈、婚約話しの相手とは元の婚約者であった。
元婚約者のハロルドとは、彼が他に愛を移した事から婚約を解消した過去がある。
あれ以来、ヘンリエッタはひと粒の涙も零す事が無くなった。涙は既に枯れてしまった。
❇短編から長編へ変更致しました。
❇R15短編にてスタートです。R18なるかな?どうかな?
❇登場人物のお名前が他作品とダダ被りしておりますが、皆様別人でございます。
❇相変わらずの100%妄想の産物です。史実とは異なっております。
❇外道要素を含みます。苦手な方はお逃げ下さい。
❇妄想遠泳の果てに波打ち際に打ち上げられた妄想スイマーによる寝物語です。
疲れたお心とお身体を妄想で癒やして頂けますと泳ぎ甲斐があります。
❇座右の銘は「知らないことは書けない」「嘘をつくなら最後まで」。
❇例の如く、鬼の誤字脱字を修復すべく公開後から激しい微修正が入ります。
「間を置いて二度美味しい」とご笑覧下さい。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
異界冒険譚シリーズ外伝【ミラ編前日譚】-その恋の始まりは、暗闇へと繫っている-
とーふ(代理カナタ)
ファンタジー
その日、世界に一人の少女が誕生した。
彼女の誕生に人々は歓喜し、世界へ感謝を告げた。
その整った容姿、素晴らしい精神性は人々の心を惹きつけ、奪う。
しかし彼女の誕生は喜びばかりを人々に与えはしなかった。
そう。彼女を求め、争いが始まってしまったのだ。
これは一人の少女を巡り、戦う者たちの物語(かもしれない)
☆☆この物語は『異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-少女たちの冒険譚-』の前日譚となっております。
単独でも読めますが、本編の方も読んでいただけると、より一層楽しめるかと思います!☆☆
白の皇国物語
白沢戌亥
ファンタジー
一人の男が、異なる世界に生まれ落ちた。
それを待っていたかのように、彼を取り巻く世界はやがて激動の時代へと突入していく。
魔法と科学と愛と憎悪と、諦め男のラブコメ&ウォークロニクル。
※漫画版「白の皇国物語」はアルファポリス様HP内のWeb漫画セレクションにて作毎月二〇日更新で連載中です。作画は不二まーゆ様です。
勇者はいいですって言ったよね!〜死地のダンジョンから幼馴染を救え!勇者?いらないです!僕は好きな女性を守りたいだけだから!〜
KeyBow
ファンタジー
異世界に転生する時に神に対し勇者はやっぱいいですとやらないとの意味で言ったが、良いですと思われたようで、意にそぐわないのに勇者として転生させられた。そして16歳になり、通称死地のダンジョンに大事な幼馴染と共に送り込まれた。スローライフを希望している勇者転生した男の悲哀の物語。目指せスローライフ!何故かチート能力を身に着ける。その力を使い好きな子を救いたかっただけだが、ダンジョンで多くの恋と出会う?・・・
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる