聖女の証

とーふ(代理カナタ)

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第19話『この世界に広がる悲しみを止める為には!』①

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アルマが奇跡を起こしてから私の生活は一変した。

人々はアルマを崇め、アルマは世界の王となった。

そして私は魔王様も家族の声も聞こえない世界で、日に照らされながらアルマの隣に居続ける事となった。

今までの長い生涯の中で、一度だって消えた事のない彼らの声は、私の心をかき回すには十分な力を持っており、私は『癒しの魔法』以外の魔法が使えなくなった事など気にもせず、ただ、ジーナを、魔王様を、家族を求めた。

しかし、私の中から消えた声はいつまで経っても帰ってくる事は無かったのである。

「母様。他の者など必要ない。私だけを見て下さい」

「アルマ! 私は」

「もし出来ぬと言うのであれば、母様の中からだけでなく、この世界から消し去りましょうか? 忌まわしき者どもを」

「どうして……どうして、その様に憎むのですか?」

「当然ではないですか。私には母様しか居ないのですから」

アルマはいつもの様に笑いながら、私の頬を撫でる。

「それに……母様がいけないのですよ。私の様な者を拾ってしまうから。その優しさが母様の世界を壊すのです」

「私は……」

「ふむ。やはり私だけを見る気にはなれないのですね。ならば仕方ない。例の母様を求める者どもを全て滅ぼしましょう。そして貴女の最も大切な妹を、その首を母様の元に持ってきましょう」

「お願いです! それだけは、それだけは止めてください!」

「残念ですが、お断りします」

アルマは私をベッドに押し倒すと、私の瞳を覗き込んだ。

そして悔しそうに顔を歪めて、怒りのままに口を開く。

「悔やむなら、私だけを見ないその己の心を恨みなさい。だがどの道全てが遅い。私はこの光で貴女を……!」

「ジーナちゃん!! きぃぃいいいいいいっく!!」

「っ!?」

アルマの顔が迫って来た瞬間、私を閉じ込めていた城が、空の彼方より聞こえてきた声と共に訪れた衝撃で大きく揺れた。

「なんだ!?」

「ピカピカ光らせてさ! 良い目印になったよ! おねーちゃんは返して貰うから!」

「ジーナ!?」

「そ。久しぶりだね! お姉ちゃん!」

私は別れた時から少しだけ成長したジーナに抱きかかえられ、崩壊してゆく城を見ながら空中に浮いていた。

そして崩れてゆく城からはアルマが憎しみに満ちた目を向けてくる。

「アルマ……」

「何処へ逃げようと、私は! 必ず!!」

瓦礫の中に消えてゆくアルマから私は目を逸らし、ジーナに縋りついた。

「さぁ。帰ろう。お姉ちゃん。私たちの家に」

「……うん」

そのまま私はジーナにしがみ付いて、遠い故郷である森の奥に帰る事となったのである。
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