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第17話『わ、私が、アメリア。ただのアメリアです』③
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占い師さんがリアムさん達を順番に見た後、私を見て止まる。
そして視線が絡み合うが、私は視線を逸らす事が出来なかった。
「いつまで見てんだ。お前は」
「気になる女の子が居たらアプローチしたくなるのさ。しょうがないだろう?」
「お前にそんな感情があったとは驚きだな」
「僕だって人間だよ? そういう感情を持つ事もある」
占い師さんはそう言うと、スッと地面を滑る様に動き、私の手を取る。
「アメリア。是非二人きりで話をしたいんだ。良いかな?」
「良いワケあるか! アメリアから離れろ!!」
「ふむ? いつから君はアメリアの保護者になったのかな。リアム」
「そいつは俺が連れ出した。だからソイツを護るのは俺の義務だ」
「ふふ。そうか。では護ってみたまえ」
占い師さんはそう言うと、私の手を握り、笑った。
そして、その笑顔が切っ掛けとなったのか、私が見えていた景色は一瞬で変わり、目の前にはまるで知らない部屋が広がっているのだった。
「さて。これで二人きりだ」
「皆さんに何をしたんですか?」
「何かしたとすれば、リアム達じゃなくて君にだよ。ここは僕の部屋だ。転移したんだよ」
「……転移?」
「そう転移魔術さ。ちなみにこの魔術はおよそ二十年後。イザベラという少女が発見し、それから数十年程掛けて何人もの学者が研究を重ね、魔術として完成したという物さ。更に後の世にはドラスケラウという男がポータルという設置型の装置を使って誰でも使える様にしたらしいね。ただ、使う魔力量が多いからか、連続使用は出来ないみたいだ」
「……何故そんな未来の事を」
「本で読んだからさ。この世界の全てが記された書をね。そこには未来で起こる事も、過去にあった事も色々と書かれていたよ」
私はジットリと私を見る瞳に、どこか寒気を感じながら、視線を逸らした。
左手を右手で握り締め、逃げる様に一歩後ろへ下がる。
しかし、占い師さんはそんな私の逃げを許さないとばかりに一歩前へ踏み出した。
「この世界の歴史を知っているかな。アメリア。かつて世界の全ては闇に覆われていた」
「……」
「しかし、そんな闇の世界に光を与えた者がいる。アメリア。君はよく知っているだろう」
「……知らないです」
占い師さんは私の手を掴み、壁に押し付けて、更に言葉を続ける。
「おやおや。随分と可哀想な事を言うじゃないか。君が拾った子供だろう。そして君が名付けた。アルマと」
「っ! な、なぜ」
「先ほども言っただろう? 見たんだよ。この世の全てを記した書をね。そこにはハッキリと書かれていたよ。闇の時代より人々を影から支え導いていた、歴史上最も古き国の姫君! 魔法使いの始祖……アメリア・フェイリ・ルストス・ユイ・ミザス・シルフィニアの歩んできた道がね」
私は逃げられない過去から、それでも逃げる様に、ただ目を伏せるのだった。
そして視線が絡み合うが、私は視線を逸らす事が出来なかった。
「いつまで見てんだ。お前は」
「気になる女の子が居たらアプローチしたくなるのさ。しょうがないだろう?」
「お前にそんな感情があったとは驚きだな」
「僕だって人間だよ? そういう感情を持つ事もある」
占い師さんはそう言うと、スッと地面を滑る様に動き、私の手を取る。
「アメリア。是非二人きりで話をしたいんだ。良いかな?」
「良いワケあるか! アメリアから離れろ!!」
「ふむ? いつから君はアメリアの保護者になったのかな。リアム」
「そいつは俺が連れ出した。だからソイツを護るのは俺の義務だ」
「ふふ。そうか。では護ってみたまえ」
占い師さんはそう言うと、私の手を握り、笑った。
そして、その笑顔が切っ掛けとなったのか、私が見えていた景色は一瞬で変わり、目の前にはまるで知らない部屋が広がっているのだった。
「さて。これで二人きりだ」
「皆さんに何をしたんですか?」
「何かしたとすれば、リアム達じゃなくて君にだよ。ここは僕の部屋だ。転移したんだよ」
「……転移?」
「そう転移魔術さ。ちなみにこの魔術はおよそ二十年後。イザベラという少女が発見し、それから数十年程掛けて何人もの学者が研究を重ね、魔術として完成したという物さ。更に後の世にはドラスケラウという男がポータルという設置型の装置を使って誰でも使える様にしたらしいね。ただ、使う魔力量が多いからか、連続使用は出来ないみたいだ」
「……何故そんな未来の事を」
「本で読んだからさ。この世界の全てが記された書をね。そこには未来で起こる事も、過去にあった事も色々と書かれていたよ」
私はジットリと私を見る瞳に、どこか寒気を感じながら、視線を逸らした。
左手を右手で握り締め、逃げる様に一歩後ろへ下がる。
しかし、占い師さんはそんな私の逃げを許さないとばかりに一歩前へ踏み出した。
「この世界の歴史を知っているかな。アメリア。かつて世界の全ては闇に覆われていた」
「……」
「しかし、そんな闇の世界に光を与えた者がいる。アメリア。君はよく知っているだろう」
「……知らないです」
占い師さんは私の手を掴み、壁に押し付けて、更に言葉を続ける。
「おやおや。随分と可哀想な事を言うじゃないか。君が拾った子供だろう。そして君が名付けた。アルマと」
「っ! な、なぜ」
「先ほども言っただろう? 見たんだよ。この世の全てを記した書をね。そこにはハッキリと書かれていたよ。闇の時代より人々を影から支え導いていた、歴史上最も古き国の姫君! 魔法使いの始祖……アメリア・フェイリ・ルストス・ユイ・ミザス・シルフィニアの歩んできた道がね」
私は逃げられない過去から、それでも逃げる様に、ただ目を伏せるのだった。
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