聖女の証

とーふ(代理カナタ)

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第10話『私、レッドリザードくんと大親友なんです!』②

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「しかし、俺もそこまでの事はしたくない。分かるだろう? アメリア」

「は、はひ」

「という訳で、今回だけ。今回だけは!! 許してやる」

「っ!」

「ただし!! 次は無い。良いな? 次は目隠し。その次は袋だ。覚悟しておけ!」

「分かりましたー!」

「以上だ」

私はリアムさんが去っていくのを確認して、息を小さく吐きながら火の前に座った。

今日も今日とてレッドリザードくんが頑張って火を起こしてくれている。

可愛い可愛いと燃えているのに熱くない背中を撫でながら、私は鍋の様子を見た。

うん。順調。

リアムさんのお説教が長すぎて焦げちゃうかと思ったけれど、レッドリザードくんが調整していてくれた様だ。

「よく撫でられるな」

「え?」

「ソイツさ。背中燃えてるのに」

「レッドリザードくんですか? 大丈夫ですよ。この子はお友達を燃やしませんから。私、レッドリザードくんと大親友なんです! えへん!」

不思議そうな顔でレッドリザードくんを見ていたフィンさんに私は自慢する。

家を出る時から一緒に付いて来てくれた大親友だ。

この子が居なければ寒い夜を過ごす事になっていただろう。

なるべく美味しい物を食べて貰おうと、私は鍋から良いお肉を取り出して、レッドリザードくんにあげた。

「美味しいですか? ふふ」

「しかし、よく懐いてるな。コイツが居れば火には困らないし。その辺にも居るんだろ? なら上手く捕まえれば、火を起こす手間が全部無くなるぜ。道具も要らないしな」

「止めておけ。フィン。俺も最初はそう思ったが、そのトカゲはアメリアにしか懐かん。その辺にいる連中も同じだ」

「そうなのか。そりゃ勿体ないな」

フィンさんとリアムさんの言葉に私はんー。と考えた。

そして、火の中にいるレッドリザードくんに話しかける。

「では。お願いしてみましょうか。レッドリザードくん。お願いがあるのですが、良いでしょうか?」

「きゅい?」

「誰かにお願いされた時、火を付けてあげて欲しいのです。その人が休める様に。その代わり。美味しい物をレッドリザードくんにあげる様に皆さんにはお願いしておきますね」

「きゅい!」

「ありがとうございます。では、後で他のお友達にもお願いしていただけますか?」

「きゅ!」

「ふふ。ありがとうございます。では、レッドリザードくんには友情の証として、この美味しいお魚を差し上げます。どうぞー。お召し上がりください」

「きゅー」

「美味しいですか?」

「きゅきゅ」

「それは良かったです」

私はレッドリザードくんとの会話が終わり、フィンさんに向き直る。
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