聖女の証

とーふ(代理カナタ)

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第8話『私はー! ダンコとしてー、自由の為に戦います!』②

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私はガッカリしながら、限られた範囲の中で動く事にした。

一応ロープにはそれなりに余裕があるし、普通に旅をする分にはそこまで困らない。

ただ、心配なのは途中で困っている人を見つけた時なのだが……。

なんと、なんと! 早速私は見つけてしまっていた。

歩いた先にある小さな茂みの中からこちらを伺っている人が居たのだ。

しかも私と目が合うと、こちらへ来る様に手で合図をしている。

これは! きっと怪我か何かで動けないに違いない!

助けなくては!!

「あ、あのー」

「なんだ。助けなきゃいけない奴なんかいないぞ。まぁ居たとしても無視しろと言うが」

「えぇ!?」

「当たり前だろう。一人、一人手を差し伸べていたら、闇を封印するのに、どれだけ時間が掛かるか分からん」

「そ、そんなぁ」

「甘えた声を出すな。キビキビ歩け!」

私は怒られながら、それとなく草むらの方へ視線を向ける。

草むらの中に居る人は、真剣な眼差しで私を見ていた。

助けを求めている!!

こんなにも強く!!

頑張らないと!

「あ、あの!」

「なんだ。人助けなら駄目だぞ」

「お手洗いに行きたいです!」

「……」

「あれ? あのー!! お手洗いに!!」

「分かったから、そうデカい声を出すな。ったく。羞恥心ってモンはねぇのか。ほれ。隠れてやれ。少し離れた所に居るからな」

「はい!」

私は限界まで伸ばされたロープに喜びつつ、草むらの中へと向かった。

そして、地面に座り、驚いた様に私を見ている男の子へコッソリと話しかける。

「あ、あのー。何か困っているんですよね?」

「……いや、困っているのはそっちだろ?」

「え?」

「奴隷商人か。悪い奴だ。今助けてやる」

「え!? えぇ!?」

「どうした!! アメリア!!」

その男の子は私の腰に巻き付いていたロープを小さな刃物で斬り落とすと、小さな体だというのに、容易く私を抱き上げて、木の上に跳んだ。

「な、なんだぁ!?」

「何者だ! 貴様!!」

私を抱えたまま木の枝に立つ男の子に、木の下からリアムさんとフィンさんが叫ぶ。

しかし、男の子は何も動じた様子は見せず、堂々とした姿で二人に応えるのだった。
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