23 / 143
第7話『たのもー!』②
しおりを挟む
「驚きすぎだろう。そんなに驚く事か?」
「いえ、だって、え?」
「大分驚いてるな。まぁ、君みたいな『いい子』には分からんかもしれんが、俺は世界を救うとか、そういう事に興味ねぇんだよ」
「……」
「英雄とか聖人なんてのにも興味ねぇしな。やりたい奴にやらせておけば良いって感じだ。俺がやらなくても誰かがやるだろうしな」
「では、フィンさんの大切な人は誰が守るんですか?」
「ん? なんて?」
「一緒にいるお姉さんたちの事は大切なんですよね? その人たちは誰が守るんですか?」
「そりゃ、俺が守るが」
「でも、闇の力を封印しないと、みんな大変な事になりますよ。もし闇の力が暴走したら、また神話で語られている暗闇の世界に逆戻りですから」
「確かに、そりゃそうだが」
「そうならない為にも、フィンさんの力が必要なんです」
「しかし、あの男が居るだろう! 君だっている」
「でも、私たちが闇の力の封印に失敗したら、おしまいですよ。誰も助からない」
「……」
「だから私たちが失敗して死んでしまった時、フィンさんに代わりをお願いしたいんです」
「君は、自分が何を言っているのか理解しているのか?」
「え? はい。理解していますが」
「本当に理解しているのか? 死ぬかもしれないんだぞ。闇の力の封印は危険な旅だ。それをちゃんと理解しているのか!?」
「しています」
「いいや! してないね!! 分かってない。子供の遊びじゃ無いんだ。命がけなんだぞ!」
「だから、私は分かってます! 死ぬという事の意味も。失敗した時、どうなるかも、だから必死になっているんです」
「……アメリアちゃん」
「私には妹が居ます。お婆ちゃんが居ます。二人とも大切な人です。私が何もせず逃げ出せば二人は命を落とす、苦しみの中で明日を迎える事が出来なくなる。それが私は嫌なんです! だから私は、どんなに苦しい旅であっても諦めません。この目に映る全てを救って、世界を守ります!!」
「そんな事」
「フィン」
私の言葉にフィンさんが一歩後ずさり、もう少しだと意気込んでいた私の後ろから柔らかい手が伸びて来て、私の肩を掴んだ。
そして、フィンさんの名を呼ぶ。
「リーラ! お前、大丈夫か!?」
「えぇ。とてもよくなったわ。この子のお陰でね」
「アメリアちゃんの、おかげ?」
「そう。この子は道端で蹲っている私を気にして癒しの力を使ってくれたのよ」
「……そうか」
「ねぇ、フィン。私たちは貴方に守られてばかりの弱い女じゃないわ。自分の身くらい自分で守れる。でも、この世界を救えるのは貴方しかいない。そうでしょう?」
「しかし!」
「それにね。私、心配なのよ。この猪突猛進な女の子が、先の危険も考えないで酷い目にあうんじゃないかって不安なの。ずっと抱えていた苦しみから、解放してくれた子が」
「っ! お前、傷が」
「えぇ。消してくれた。多分私の中に染みついた嫌な記憶と一緒にね」
「そうか」
「いえ、だって、え?」
「大分驚いてるな。まぁ、君みたいな『いい子』には分からんかもしれんが、俺は世界を救うとか、そういう事に興味ねぇんだよ」
「……」
「英雄とか聖人なんてのにも興味ねぇしな。やりたい奴にやらせておけば良いって感じだ。俺がやらなくても誰かがやるだろうしな」
「では、フィンさんの大切な人は誰が守るんですか?」
「ん? なんて?」
「一緒にいるお姉さんたちの事は大切なんですよね? その人たちは誰が守るんですか?」
「そりゃ、俺が守るが」
「でも、闇の力を封印しないと、みんな大変な事になりますよ。もし闇の力が暴走したら、また神話で語られている暗闇の世界に逆戻りですから」
「確かに、そりゃそうだが」
「そうならない為にも、フィンさんの力が必要なんです」
「しかし、あの男が居るだろう! 君だっている」
「でも、私たちが闇の力の封印に失敗したら、おしまいですよ。誰も助からない」
「……」
「だから私たちが失敗して死んでしまった時、フィンさんに代わりをお願いしたいんです」
「君は、自分が何を言っているのか理解しているのか?」
「え? はい。理解していますが」
「本当に理解しているのか? 死ぬかもしれないんだぞ。闇の力の封印は危険な旅だ。それをちゃんと理解しているのか!?」
「しています」
「いいや! してないね!! 分かってない。子供の遊びじゃ無いんだ。命がけなんだぞ!」
「だから、私は分かってます! 死ぬという事の意味も。失敗した時、どうなるかも、だから必死になっているんです」
「……アメリアちゃん」
「私には妹が居ます。お婆ちゃんが居ます。二人とも大切な人です。私が何もせず逃げ出せば二人は命を落とす、苦しみの中で明日を迎える事が出来なくなる。それが私は嫌なんです! だから私は、どんなに苦しい旅であっても諦めません。この目に映る全てを救って、世界を守ります!!」
「そんな事」
「フィン」
私の言葉にフィンさんが一歩後ずさり、もう少しだと意気込んでいた私の後ろから柔らかい手が伸びて来て、私の肩を掴んだ。
そして、フィンさんの名を呼ぶ。
「リーラ! お前、大丈夫か!?」
「えぇ。とてもよくなったわ。この子のお陰でね」
「アメリアちゃんの、おかげ?」
「そう。この子は道端で蹲っている私を気にして癒しの力を使ってくれたのよ」
「……そうか」
「ねぇ、フィン。私たちは貴方に守られてばかりの弱い女じゃないわ。自分の身くらい自分で守れる。でも、この世界を救えるのは貴方しかいない。そうでしょう?」
「しかし!」
「それにね。私、心配なのよ。この猪突猛進な女の子が、先の危険も考えないで酷い目にあうんじゃないかって不安なの。ずっと抱えていた苦しみから、解放してくれた子が」
「っ! お前、傷が」
「えぇ。消してくれた。多分私の中に染みついた嫌な記憶と一緒にね」
「そうか」
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星河由乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる