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第7話『たのもー!』②
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「驚きすぎだろう。そんなに驚く事か?」
「いえ、だって、え?」
「大分驚いてるな。まぁ、君みたいな『いい子』には分からんかもしれんが、俺は世界を救うとか、そういう事に興味ねぇんだよ」
「……」
「英雄とか聖人なんてのにも興味ねぇしな。やりたい奴にやらせておけば良いって感じだ。俺がやらなくても誰かがやるだろうしな」
「では、フィンさんの大切な人は誰が守るんですか?」
「ん? なんて?」
「一緒にいるお姉さんたちの事は大切なんですよね? その人たちは誰が守るんですか?」
「そりゃ、俺が守るが」
「でも、闇の力を封印しないと、みんな大変な事になりますよ。もし闇の力が暴走したら、また神話で語られている暗闇の世界に逆戻りですから」
「確かに、そりゃそうだが」
「そうならない為にも、フィンさんの力が必要なんです」
「しかし、あの男が居るだろう! 君だっている」
「でも、私たちが闇の力の封印に失敗したら、おしまいですよ。誰も助からない」
「……」
「だから私たちが失敗して死んでしまった時、フィンさんに代わりをお願いしたいんです」
「君は、自分が何を言っているのか理解しているのか?」
「え? はい。理解していますが」
「本当に理解しているのか? 死ぬかもしれないんだぞ。闇の力の封印は危険な旅だ。それをちゃんと理解しているのか!?」
「しています」
「いいや! してないね!! 分かってない。子供の遊びじゃ無いんだ。命がけなんだぞ!」
「だから、私は分かってます! 死ぬという事の意味も。失敗した時、どうなるかも、だから必死になっているんです」
「……アメリアちゃん」
「私には妹が居ます。お婆ちゃんが居ます。二人とも大切な人です。私が何もせず逃げ出せば二人は命を落とす、苦しみの中で明日を迎える事が出来なくなる。それが私は嫌なんです! だから私は、どんなに苦しい旅であっても諦めません。この目に映る全てを救って、世界を守ります!!」
「そんな事」
「フィン」
私の言葉にフィンさんが一歩後ずさり、もう少しだと意気込んでいた私の後ろから柔らかい手が伸びて来て、私の肩を掴んだ。
そして、フィンさんの名を呼ぶ。
「リーラ! お前、大丈夫か!?」
「えぇ。とてもよくなったわ。この子のお陰でね」
「アメリアちゃんの、おかげ?」
「そう。この子は道端で蹲っている私を気にして癒しの力を使ってくれたのよ」
「……そうか」
「ねぇ、フィン。私たちは貴方に守られてばかりの弱い女じゃないわ。自分の身くらい自分で守れる。でも、この世界を救えるのは貴方しかいない。そうでしょう?」
「しかし!」
「それにね。私、心配なのよ。この猪突猛進な女の子が、先の危険も考えないで酷い目にあうんじゃないかって不安なの。ずっと抱えていた苦しみから、解放してくれた子が」
「っ! お前、傷が」
「えぇ。消してくれた。多分私の中に染みついた嫌な記憶と一緒にね」
「そうか」
「いえ、だって、え?」
「大分驚いてるな。まぁ、君みたいな『いい子』には分からんかもしれんが、俺は世界を救うとか、そういう事に興味ねぇんだよ」
「……」
「英雄とか聖人なんてのにも興味ねぇしな。やりたい奴にやらせておけば良いって感じだ。俺がやらなくても誰かがやるだろうしな」
「では、フィンさんの大切な人は誰が守るんですか?」
「ん? なんて?」
「一緒にいるお姉さんたちの事は大切なんですよね? その人たちは誰が守るんですか?」
「そりゃ、俺が守るが」
「でも、闇の力を封印しないと、みんな大変な事になりますよ。もし闇の力が暴走したら、また神話で語られている暗闇の世界に逆戻りですから」
「確かに、そりゃそうだが」
「そうならない為にも、フィンさんの力が必要なんです」
「しかし、あの男が居るだろう! 君だっている」
「でも、私たちが闇の力の封印に失敗したら、おしまいですよ。誰も助からない」
「……」
「だから私たちが失敗して死んでしまった時、フィンさんに代わりをお願いしたいんです」
「君は、自分が何を言っているのか理解しているのか?」
「え? はい。理解していますが」
「本当に理解しているのか? 死ぬかもしれないんだぞ。闇の力の封印は危険な旅だ。それをちゃんと理解しているのか!?」
「しています」
「いいや! してないね!! 分かってない。子供の遊びじゃ無いんだ。命がけなんだぞ!」
「だから、私は分かってます! 死ぬという事の意味も。失敗した時、どうなるかも、だから必死になっているんです」
「……アメリアちゃん」
「私には妹が居ます。お婆ちゃんが居ます。二人とも大切な人です。私が何もせず逃げ出せば二人は命を落とす、苦しみの中で明日を迎える事が出来なくなる。それが私は嫌なんです! だから私は、どんなに苦しい旅であっても諦めません。この目に映る全てを救って、世界を守ります!!」
「そんな事」
「フィン」
私の言葉にフィンさんが一歩後ずさり、もう少しだと意気込んでいた私の後ろから柔らかい手が伸びて来て、私の肩を掴んだ。
そして、フィンさんの名を呼ぶ。
「リーラ! お前、大丈夫か!?」
「えぇ。とてもよくなったわ。この子のお陰でね」
「アメリアちゃんの、おかげ?」
「そう。この子は道端で蹲っている私を気にして癒しの力を使ってくれたのよ」
「……そうか」
「ねぇ、フィン。私たちは貴方に守られてばかりの弱い女じゃないわ。自分の身くらい自分で守れる。でも、この世界を救えるのは貴方しかいない。そうでしょう?」
「しかし!」
「それにね。私、心配なのよ。この猪突猛進な女の子が、先の危険も考えないで酷い目にあうんじゃないかって不安なの。ずっと抱えていた苦しみから、解放してくれた子が」
「っ! お前、傷が」
「えぇ。消してくれた。多分私の中に染みついた嫌な記憶と一緒にね」
「そうか」
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