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第4話『貴方が誰か困っている人を見つけた時は、その人に手を差し伸べてあげて下さい』③
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「えへへ。リアムさん。楽しいですね」
「まぁ、そうだな……っ! 待て! お前!!」
「っ!? リアムさん!?」
「……いい度胸だな。お前」
「っ! 離せよ!!」
「誰が離すか。財布泥棒が、ガキとは言え、見逃さんぞ」
人込みの中で、不意にリアムさんが私の手を離し、代わりに捕まえたのはまだ小さな子供だった。
その子供はリアムさんの拘束から逃れようとしている様だったが、体格でも力でも勝てないのだろう、もがくばかりで逃げ出す事は出来ないようだ。
「リアムさん?」
「あぁ、すまんな。アメリア。財布泥棒って奴だ。ちょっと突き出してくるから適当な所で待ってろ」
「離せ! 離せよ!! 妹が病気なんだ!」
「知るか。……っ、その手はなんだ。アメリア」
「いえ。私にも、その子とお話させていただけませんか?」
「断ると言ったら」
「私、頑張ってリアムさんを説得します」
「……はぁ。分かった。話を聞くだけだぞ」
「はい!」
私はリアムさんに許可を貰い、リアムさんが捕まえている子供の所へ向かった。
私とそれほど変わらない年にも見えるが、病気の妹が居るという事は癒しの力を使えないのだろう。
「あの。先ほど聞こえた話なのですが」
「なんだよ! 嘘じゃねぇ! 妹は病気なんだ! でも、治すには大金が必要で、俺じゃどうしようもねぇんだ!」
「なら、私が癒しますね!」
「……は?」
「アメリア」
「一人だけ。一人だけですから!」
「……しょうがねぇな」
私は改めてリアムさんの許可を貰い、子供に笑いかける。
「その妹さんの所へ案内して貰えませんか?」
「……でも」
「あ、私の力がどれほどか分からないんですね、大丈夫です。今から証明しますよ」
「おい! バカ! アメリア!」
私は手袋を取って、果物屋さんからナイフを借り、手のひらを切った。
そしてそれを癒し、力を見せる。
「どうでしょうか? 病気も問題なく治せますよ」
「……聖人様」
「ん?」
「聖人様だ!!」
「聖人様が現れたぞ!!」
「チッ! 行くぞ! アメリア!」
私はあっという間に、リアムさんが捕まえた子供と一緒に抱きかかえられて空中へ飛び上がった。
そして、そのまま家の屋根を走るリアムさんに捕まったまま、人々から離れ、静かな場所へと向かう。
「まぁ、そうだな……っ! 待て! お前!!」
「っ!? リアムさん!?」
「……いい度胸だな。お前」
「っ! 離せよ!!」
「誰が離すか。財布泥棒が、ガキとは言え、見逃さんぞ」
人込みの中で、不意にリアムさんが私の手を離し、代わりに捕まえたのはまだ小さな子供だった。
その子供はリアムさんの拘束から逃れようとしている様だったが、体格でも力でも勝てないのだろう、もがくばかりで逃げ出す事は出来ないようだ。
「リアムさん?」
「あぁ、すまんな。アメリア。財布泥棒って奴だ。ちょっと突き出してくるから適当な所で待ってろ」
「離せ! 離せよ!! 妹が病気なんだ!」
「知るか。……っ、その手はなんだ。アメリア」
「いえ。私にも、その子とお話させていただけませんか?」
「断ると言ったら」
「私、頑張ってリアムさんを説得します」
「……はぁ。分かった。話を聞くだけだぞ」
「はい!」
私はリアムさんに許可を貰い、リアムさんが捕まえている子供の所へ向かった。
私とそれほど変わらない年にも見えるが、病気の妹が居るという事は癒しの力を使えないのだろう。
「あの。先ほど聞こえた話なのですが」
「なんだよ! 嘘じゃねぇ! 妹は病気なんだ! でも、治すには大金が必要で、俺じゃどうしようもねぇんだ!」
「なら、私が癒しますね!」
「……は?」
「アメリア」
「一人だけ。一人だけですから!」
「……しょうがねぇな」
私は改めてリアムさんの許可を貰い、子供に笑いかける。
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「……でも」
「あ、私の力がどれほどか分からないんですね、大丈夫です。今から証明しますよ」
「おい! バカ! アメリア!」
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そしてそれを癒し、力を見せる。
「どうでしょうか? 病気も問題なく治せますよ」
「……聖人様」
「ん?」
「聖人様だ!!」
「聖人様が現れたぞ!!」
「チッ! 行くぞ! アメリア!」
私はあっという間に、リアムさんが捕まえた子供と一緒に抱きかかえられて空中へ飛び上がった。
そして、そのまま家の屋根を走るリアムさんに捕まったまま、人々から離れ、静かな場所へと向かう。
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