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第1話『私たちが暮らすこの世界にはいくつかの神話があります』③
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「お姉ちゃんと、お風呂! お風呂!」
「楽しそうですね、リリィ」
「うん! 毎日この瞬間が一番好きなんだ! 今日もお話。聞かせてくれる?」
「そうですね。では、今日は光の神話について話しましょうか」
「わー!」
手を叩くリリィに笑いかけながら、私はゆっくりと語り継がれる神話を話す。
「私たちが暮らすこの世界にはいくつかの神話があります。有名なものだと二つですね」
「一つは暗闇が支配する世界に光の護りをもたらした勇者アルマ様のお話」
「そしてもう一つは人々が闇に住まう者たちと戦う為に精霊の加護という武器を与えて下さった聖女シャーラペトラ様のお話です」
「そして今日話すのは、光の勇者アルマ様のお話になります」
ワクワクという風な顔をしながら話を聞くリリィの横で、窓から見える星空を眺めながら私は続きを語る。
「これは今からずっと昔のお話です。その頃は今よりも世界が暗く、人々の顔も暗く沈んでおりました」
「人々は未だ見えぬ明日に怯え、暗闇より襲い来る魔なる物から隠れる様に生きておりました」
「昨日まで共に笑っていた仲間が、次の日には永遠の眠りにつく様な恐ろしい世界。それが私たちのご先祖様が生きていた世界でした」
「しかし、そんな世界でも人々は諦めず、一日でも長く、一人でも多く生き残ろうと世界の闇と戦っていました」
「そんなある日、厚く暗い雲の隙間から一条の光が地上に差し込んだのです」
「その光は一人の女性を照らしていました」
「そして彼女はその聖なる光の中で、一人の赤子を生みました。その少年こそ、後の世に世界を救済されるアルマ様だったのです」
「アルマ様は人々にはない不思議な力を持っていました。その力によって、魔なる物は人々に危害を加える事が出来なくなり、人々は安心して生きていける家を手に入れる事が出来たのでした」
「この時アルマ様が使用していた聖剣は、今もなお大聖堂の奥深くで人々を護っているのです」
「おしまい」
そして、私はリリィの手を取り、その右手に刻まれた『聖なる刻印』の赤い十字を指でなぞる。
「そしてこのお話に出てきたアルマ様の証が、この刻印に刻まれた横の線になります。これは、人々を護るための盾を意味していると言われていますね」
「うん。それでこの縦の線がシャーラペトラ様が人に託した精霊の加護。つまりは人間の武器を示してるんだよね?」
「よく覚えていますね。リリィ」
「とーぜん! お姉ちゃんのお話は全部ちゃんと覚えてるんだから」
「ふふ。良い子良い子。これからもお勉強をちゃんと頑張って下さいね」
「うん!!」
私はリリィの頬を撫でながら、自分に刻んだ刻印と完全に同一の刻印を見つめた。
そして、お風呂から出てすぐにリリィの刻印を視えぬよう隠すのだった。
誰も見つける事が出来ぬようにと。
「楽しそうですね、リリィ」
「うん! 毎日この瞬間が一番好きなんだ! 今日もお話。聞かせてくれる?」
「そうですね。では、今日は光の神話について話しましょうか」
「わー!」
手を叩くリリィに笑いかけながら、私はゆっくりと語り継がれる神話を話す。
「私たちが暮らすこの世界にはいくつかの神話があります。有名なものだと二つですね」
「一つは暗闇が支配する世界に光の護りをもたらした勇者アルマ様のお話」
「そしてもう一つは人々が闇に住まう者たちと戦う為に精霊の加護という武器を与えて下さった聖女シャーラペトラ様のお話です」
「そして今日話すのは、光の勇者アルマ様のお話になります」
ワクワクという風な顔をしながら話を聞くリリィの横で、窓から見える星空を眺めながら私は続きを語る。
「これは今からずっと昔のお話です。その頃は今よりも世界が暗く、人々の顔も暗く沈んでおりました」
「人々は未だ見えぬ明日に怯え、暗闇より襲い来る魔なる物から隠れる様に生きておりました」
「昨日まで共に笑っていた仲間が、次の日には永遠の眠りにつく様な恐ろしい世界。それが私たちのご先祖様が生きていた世界でした」
「しかし、そんな世界でも人々は諦めず、一日でも長く、一人でも多く生き残ろうと世界の闇と戦っていました」
「そんなある日、厚く暗い雲の隙間から一条の光が地上に差し込んだのです」
「その光は一人の女性を照らしていました」
「そして彼女はその聖なる光の中で、一人の赤子を生みました。その少年こそ、後の世に世界を救済されるアルマ様だったのです」
「アルマ様は人々にはない不思議な力を持っていました。その力によって、魔なる物は人々に危害を加える事が出来なくなり、人々は安心して生きていける家を手に入れる事が出来たのでした」
「この時アルマ様が使用していた聖剣は、今もなお大聖堂の奥深くで人々を護っているのです」
「おしまい」
そして、私はリリィの手を取り、その右手に刻まれた『聖なる刻印』の赤い十字を指でなぞる。
「そしてこのお話に出てきたアルマ様の証が、この刻印に刻まれた横の線になります。これは、人々を護るための盾を意味していると言われていますね」
「うん。それでこの縦の線がシャーラペトラ様が人に託した精霊の加護。つまりは人間の武器を示してるんだよね?」
「よく覚えていますね。リリィ」
「とーぜん! お姉ちゃんのお話は全部ちゃんと覚えてるんだから」
「ふふ。良い子良い子。これからもお勉強をちゃんと頑張って下さいね」
「うん!!」
私はリリィの頬を撫でながら、自分に刻んだ刻印と完全に同一の刻印を見つめた。
そして、お風呂から出てすぐにリリィの刻印を視えぬよう隠すのだった。
誰も見つける事が出来ぬようにと。
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