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第76話『エルフと人間』(レナ視点)①
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(レナ視点)
この世界に救いはない。
全てが闇に包まれて、暗黒の世界におちていくのだ。
「ふ、ふふ、ふふふ」
「ちょっとレナ! 壊れてないでよ! 早く逃げないと!!」
「あー、もー、全部どうでもいー」
「良くないって! ほら、シーラ様以外にも素敵な人はいっぱい居るから」
私は腕を掴みながら引っ張るヤスミンに怒りの声をぶつけた。
「居ないもん!! シーラちゃん以外に私が好きになる人なんて! 居ないもん!!」
「だったら、それはそれでさっさと逃げるよ! こんな所に居たら、何も残らないよ!」
「……分かった」
私はエルフの里で起こっている大戦争から逃げる様にヤスミンと一緒に走り始めた。
敵のエルフは……あー、よく分からないな。
みんなポンポンポンポン転移してるし、放つ魔法も、森とか里に影響がないようにって基本空に向かって放たれてるけど、威力が大きすぎて、世界の終焉を見ているようだ。
「……でも、なんかおかしくない?」
「何が!? ここ最近はおかしな事ばっかりだけど!」
「そうじゃなくて、シーラちゃんの味方をしてる人が居る様に見える」
「そ、そうなの? 私にはさっぱり分からないけど」
「うん。何人か……でも、なんで」
「それはまぁ。みんなシーラの事が好きだからだねぇ」
「っ!? 貴女は」
「どうもー。エルフのリーンだよ。初めましてだねぇ。人間さん」
「は、初めまして」
「うんうん。挨拶は大事だね。良くできました。挨拶が出来なかったら滅ぼしてた所だよ」
「え」
私はリーンさんの言葉に凍り付き、そのニコニコと楽しそうな笑顔から一歩逃げる。
「そんなに怯えなくても。別に国を二、三個滅ぼしただけなんだからさ」
「いや、だけって規模じゃないと思うんですけど」
「そう? でもまぁ、しょうがないよね。コミュニケーションの基本が出来てなかったんだもの」
「そう、ですか」
「あ。まだ勘違いしてるでしょ。んー。しょうがないなぁ。ちゃんと説明してあげる」
「ありがとうございます」
「うんうん。そう。あれはね。私がまだ若かった頃の話。二千年前くらいかなぁ。森で人間の本を拾ってさ。その本は人間の社会を描いた物だったんだけど。その中に居た女の子がね。何か事件を解決する度に、ごきげんよう。って言いながら去っていくっていう話でさ。その挨拶で物語が締めくくられるんだよ。格好いいなぁー! って思ってね。私も事件を探しに人間の世界に行ったんだ」
「……はい」
「それでさ。戦争をしている国があったから、その争いを止めて、みんなが止まったなって思ったから、『平和が良いですよ。では、ごきげんよう』って言ったの」
「それで」
「本の中だったら、『ごきげんよう』って帰ってくるか。『あぁ、ありがとう。美しき君。貴女に会えて光栄だった』みたいな感じに帰ってくるのにさ。エルフが何の用だ! とか、また我らに害をなす気か! とか、私の話全然聞いてくれないからさ。とりあえず、ていってやったのね?」
「てい……ですか?」
「うん」
この世界に救いはない。
全てが闇に包まれて、暗黒の世界におちていくのだ。
「ふ、ふふ、ふふふ」
「ちょっとレナ! 壊れてないでよ! 早く逃げないと!!」
「あー、もー、全部どうでもいー」
「良くないって! ほら、シーラ様以外にも素敵な人はいっぱい居るから」
私は腕を掴みながら引っ張るヤスミンに怒りの声をぶつけた。
「居ないもん!! シーラちゃん以外に私が好きになる人なんて! 居ないもん!!」
「だったら、それはそれでさっさと逃げるよ! こんな所に居たら、何も残らないよ!」
「……分かった」
私はエルフの里で起こっている大戦争から逃げる様にヤスミンと一緒に走り始めた。
敵のエルフは……あー、よく分からないな。
みんなポンポンポンポン転移してるし、放つ魔法も、森とか里に影響がないようにって基本空に向かって放たれてるけど、威力が大きすぎて、世界の終焉を見ているようだ。
「……でも、なんかおかしくない?」
「何が!? ここ最近はおかしな事ばっかりだけど!」
「そうじゃなくて、シーラちゃんの味方をしてる人が居る様に見える」
「そ、そうなの? 私にはさっぱり分からないけど」
「うん。何人か……でも、なんで」
「それはまぁ。みんなシーラの事が好きだからだねぇ」
「っ!? 貴女は」
「どうもー。エルフのリーンだよ。初めましてだねぇ。人間さん」
「は、初めまして」
「うんうん。挨拶は大事だね。良くできました。挨拶が出来なかったら滅ぼしてた所だよ」
「え」
私はリーンさんの言葉に凍り付き、そのニコニコと楽しそうな笑顔から一歩逃げる。
「そんなに怯えなくても。別に国を二、三個滅ぼしただけなんだからさ」
「いや、だけって規模じゃないと思うんですけど」
「そう? でもまぁ、しょうがないよね。コミュニケーションの基本が出来てなかったんだもの」
「そう、ですか」
「あ。まだ勘違いしてるでしょ。んー。しょうがないなぁ。ちゃんと説明してあげる」
「ありがとうございます」
「うんうん。そう。あれはね。私がまだ若かった頃の話。二千年前くらいかなぁ。森で人間の本を拾ってさ。その本は人間の社会を描いた物だったんだけど。その中に居た女の子がね。何か事件を解決する度に、ごきげんよう。って言いながら去っていくっていう話でさ。その挨拶で物語が締めくくられるんだよ。格好いいなぁー! って思ってね。私も事件を探しに人間の世界に行ったんだ」
「……はい」
「それでさ。戦争をしている国があったから、その争いを止めて、みんなが止まったなって思ったから、『平和が良いですよ。では、ごきげんよう』って言ったの」
「それで」
「本の中だったら、『ごきげんよう』って帰ってくるか。『あぁ、ありがとう。美しき君。貴女に会えて光栄だった』みたいな感じに帰ってくるのにさ。エルフが何の用だ! とか、また我らに害をなす気か! とか、私の話全然聞いてくれないからさ。とりあえず、ていってやったのね?」
「てい……ですか?」
「うん」
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