愛され転生エルフの救済日記

とーふ(代理カナタ)

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第75話『愛と憎しみは紙一重』(ヤスミン視点)③

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「シーラちゃん!」

「まったく。何の騒ぎですか。これは」

「シーラ。危ないだろう。さ、こっちに来なさい」

「嫌ですけど」

「な、ななな! シーラが、言う事を聞かない!?」

「こんな事は初めてだ!」

「いや、多分結構前からそうですよ。そもそも、ここを出ていく時だって反対を押し切って出て行ったでしょうに」

シーラ様が呆れた様に言った言葉は届かず、エルフたちは皆大騒ぎをしながら各々に好き放題話している。

そんなエルフたちを見ながら、シーラ様は大きなため息を吐いて、私たちに振り返った。

最後に見た時と何も変わらない、穏やかで落ち着いた笑顔だ。

「皆さん。お久しぶり……で良いんでしょうか? どうしてこちらまで?」

「え? あ、それは……」

「シーラ様がレナに怒って学園を出て行ってしまったので、そのお許しをいただこうと」

「あ……」

ここでシーラ様はレナを見て顔を真っ赤にしながら俯く。

そして、レナはそんなシーラ様を見て、どこか居心地が悪そうにしているのだった。

「こ、こほん」

しかし、シーラ様は顔を真っ赤にしながらも、何とか自分を取り戻して話し始めた。

「ま、まぁ? 確かに、動揺があった事は確かです。ですが、私も大人ですからね。いつまでも些細な失敗に囚われていても仕方ないでしょう。という訳で、そろそろ私も学園に戻りましょうかね」

「なら! 私の事はもう怒ってないってこと!? 別れたりしないよね!?」

「……それは、ちょっと色々と考えさせてもらいたいです」

「えぇぇええ!! やだー! ねぇ! ねぇ!! 考え直してよ!」

「いや、だから考え直すんでしょ? レナとの事」

「そっちじゃないって! もー! 意地悪言わないで!」

「ま、どうしようもない時は諦めなって」

「やだ!」

「レナ。お前には俺が居るだろ?」

「帰れ!」

「レナちゃん。僕は今、最高にうれしいよ」

「帰れ!」

「元気を出せ。レナ。何。誠心誠意話せば分かってもらえるさ」

「……! やっぱり私の親友はナルシス君だけだよ! ありがとう! 私、絶対に勝つからね!」

「何に勝つの?」

「シーラちゃんから消えそうな愛に! 再び燃え上がらせて見せる!」

「そ。精々頑張ってね」

私は適当に返事をしながら、シーラ様と話をするオリヴァーさんとエミリーさんを見つめた。

流石というかなんというか。落ち着いている。

どこぞの自称最愛の恋人とは大違いだ。

「じゃ、皆さん帰りましょうか」

「……認めん! 認めんぞ!」

そして、一件落着で終わるかと思われた今回の旅だが、まだ波乱は残っているらしい。

声の方を見れば、怒りに震えるエルフが居るのだった。
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