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第72話『向き合う気持ち』(レナ視点)①
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(レナ視点)
学園での授業が終わってからシーラちゃんの部屋に行く。
最近はあの女が居るから、行くたびに微妙な気持ちになるけど、それでも会いたいから……。
「お邪魔します」
「あら。また来たのね。今先輩は居ないわよ」
「そうなんだ」
私はシーラちゃんのベッドに座ってお気に入りのクッションを抱きしめながら横になる。
ベッドは相変わらずシーラちゃんの匂いだけがしていて、落ち着く。
「あなた。まるで先輩の子供みたいね」
「……子供じゃないもん」
「そう? それならそれで良いけどね。そこをちゃんと見ないと後悔するわよ」
「何それ。牽制のつもり?」
「ふっ、ホントに子供」
「私は子供じゃない!!」
「そうやってムキになる所が子供だって言ってるのよ」
女は余裕そうな顔をしつつ、シーラちゃんの部屋に置いた女用のテーブルで仕事をしながら鼻で笑った。
その態度に腹が立つが、この女は魔王としての力は失っても魔法やらその辺りの力を失った訳じゃ無いのだ。
今の私では勝てない。
それが分かっているから、私はギュッとクッションを抱きしめて、睨みつけるだけで終わらせる。
「レナって言ったわね」
「……なに?」
「そう敵意をむき出しにしないで聞いて欲しいんだけど。出来ない?」
「かなり難しい」
「はぁ。なら良いけど。別に伝えてあげる義理なんか無いしね。好きにすれば良いんじゃない?」
「……どういう意味ですか?」
「あら。難しいんじゃなかったの?」
私は女の言葉にムカついて、思わず強く睨みつける。
しかし女は私を憐れむ様に見て、口を開いた。
「別に。あなたがどうなろうとどうでも良いのよ。でもね。何も知らず後悔して一人で泣くのは悲しいでしょ。だから出来る限りの努力をしてから諦めた方が良いって思っただけよ」
「貴女は」
「一度しか言わないからよく聞きなさい」
「……」
「先輩。あー。シーラだったわね。シーラさんは、私から魔王の力を持って行って、ついでに永遠の魔王の力も奪っていったわ。そして、その魔王の力であなたの永遠を消した」
「知ってます」
「だから、このままだとあなたはシーラさんよりも早く死ぬ。同じ時間を生きる事は出来ないわ」
「知ってます!!」
「なら、ウジウジして悩んでないでやる事があるんじゃないの? 言っておくけど、シーラさんは黙っていても分かってくれる。なんて人じゃないし、何なら死んでも言わなきゃ分かってくれないわよ」
「……どうして」
「ん?」
「貴女だってシーラちゃんが好きなんでしょ。なのに、なんでこんな事」
「別にあなたみたいな子、ライバルだなんて思って無いわよ。ただね。あなたが昔の私に少しだけ似てるから。気になっただけ」
「……」
「それにね。どうせ、私とシーラさんは永遠に近い時間を生きるから、これからの五十年くらい、あなたにあげるわよ」
学園での授業が終わってからシーラちゃんの部屋に行く。
最近はあの女が居るから、行くたびに微妙な気持ちになるけど、それでも会いたいから……。
「お邪魔します」
「あら。また来たのね。今先輩は居ないわよ」
「そうなんだ」
私はシーラちゃんのベッドに座ってお気に入りのクッションを抱きしめながら横になる。
ベッドは相変わらずシーラちゃんの匂いだけがしていて、落ち着く。
「あなた。まるで先輩の子供みたいね」
「……子供じゃないもん」
「そう? それならそれで良いけどね。そこをちゃんと見ないと後悔するわよ」
「何それ。牽制のつもり?」
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「レナって言ったわね」
「……なに?」
「そう敵意をむき出しにしないで聞いて欲しいんだけど。出来ない?」
「かなり難しい」
「はぁ。なら良いけど。別に伝えてあげる義理なんか無いしね。好きにすれば良いんじゃない?」
「……どういう意味ですか?」
「あら。難しいんじゃなかったの?」
私は女の言葉にムカついて、思わず強く睨みつける。
しかし女は私を憐れむ様に見て、口を開いた。
「別に。あなたがどうなろうとどうでも良いのよ。でもね。何も知らず後悔して一人で泣くのは悲しいでしょ。だから出来る限りの努力をしてから諦めた方が良いって思っただけよ」
「貴女は」
「一度しか言わないからよく聞きなさい」
「……」
「先輩。あー。シーラだったわね。シーラさんは、私から魔王の力を持って行って、ついでに永遠の魔王の力も奪っていったわ。そして、その魔王の力であなたの永遠を消した」
「知ってます」
「だから、このままだとあなたはシーラさんよりも早く死ぬ。同じ時間を生きる事は出来ないわ」
「知ってます!!」
「なら、ウジウジして悩んでないでやる事があるんじゃないの? 言っておくけど、シーラさんは黙っていても分かってくれる。なんて人じゃないし、何なら死んでも言わなきゃ分かってくれないわよ」
「……どうして」
「ん?」
「貴女だってシーラちゃんが好きなんでしょ。なのに、なんでこんな事」
「別にあなたみたいな子、ライバルだなんて思って無いわよ。ただね。あなたが昔の私に少しだけ似てるから。気になっただけ」
「……」
「それにね。どうせ、私とシーラさんは永遠に近い時間を生きるから、これからの五十年くらい、あなたにあげるわよ」
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