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第56話『未来へ踏み出す勇気』②

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私は思考の海から浮き上がって、未だベッドの上で悶えているレナちゃんへと視線を向ける。

「うぅぅううう」

「レナちゃん」

「……なに?」

「レナちゃんは恋をするのが怖いですか?」

「別に怖くなんて!! ……ちょっとだけあるかもしれないけどさ」

「はい」

起き上がってベッドの上に座り、いじけた子供の様に唇を尖らせる。

そんな姿も可愛いが、今は可愛い可愛いと喜んでいる状況でもない。

レナちゃんは真剣に悩んでいるのだ。

「人を知るという事は怖い事だと思います。でも、知らない人と話し、触れ合うからこそ世界が広がるという事もあると思います」

「シーラちゃんも、そうだったの?」

「えぇ。もちろん」

私はレナちゃんの隣に座り、懐かしい話を思い出しながら語りだした。

「昔、私はエルフの里で生きていたのですが、ある時、どうしようもなく人の世界に行ってみたくなり、外に飛び出したのです。周りのエルフには止められましたが、私自身はもう我慢の限界だったのです」

「ふふ。シーラちゃんらしいね。今と全然変わってない」

「そうですか? 昔とは随分と変わった様な気がしているのですが」

「昔のシーラちゃんは分からないけど、何となく想像できるよ」

レナちゃんは私の手に指を絡めて繋げると、目を閉じて私に寄りかかってきた。

ともすれば体格の差で潰れてしまいそうだが、そこはレナちゃんが体重をかけている訳では無いので、大丈夫そうだ。

「そして、里を出て、すぐに会ったのがオリヴァー君でした。あの頃はまだまだ幼い子供でしたね」

「へぇー。そうなんだ。オリヴァーさんってあの格好いいおじ様でしょ? そんな時代もあったんだねぇ」

「えぇ。どんな子も最初は小さい子供でしたよ。って、レナちゃんの中でオリヴァー君は格好いいって判定なんですね」

「まぁ、格好いいと思うよ。あの人が一番スマートにシーラちゃんを守ってるし。強いし。私の目標なんだ」

「……なるほど」

乙女ゲーム的な格好良いではなく、少年漫画的な格好良さだったか。

ちょっと残念。

「それからオリヴァー君の国に行く事になりまして、色々な国と関わる様になった。という訳ですね。特に長い付き合いのエミリーちゃんもキッフレイ聖国と関わる様になってから一緒に暮らしたりするようになったんですよ? 今はもう別の場所で生活していますが」

「……そうなんだ」

「一人一人話していくと長くなってしまいますが、私は二人以外にも多くの人と出会って、話をして、触れ合って、人を理解し、世界を理解して人の中で生活が出来る様になりました。しかし、これはエルフだからという事では無いと思います。多くの人も、他者と触れ合う事で世界を広げていくのだと私は考えていますよ」

レナちゃんはスッと目を開いて私を見つめた。
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