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第49話『ただ君に逢いたいと』(ナルシス視点)③
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あぁ、私はここで死ぬのだな。
あの者が、この事件を起こしていた者が言っていた様に、苦しみながら死ぬのだろう。
この国を恨んでいると言っていた。憎んでいるのだと。
だから復讐をするのだと。
「殿下!!」
「ぐっ、……ぁぁあああ!!!」
気合と共に剣を振り回し、魔物を倒そうと挑む。
が、やはり危険度Aランクなだけあり、容易くは倒れてくれなかった。
だが、私が囮となっている事で、騎士達は戦いやすいようである。
「殿下! お下がりください!! 殿下!!」
「ナルシス様をお助けしろ!!」
「ここで、こんな所で失ってはならぬ方だ!!」
この様な事を起こしてしまった私にも、必要だと言ってくれる人間が居る事に感謝をしながらも、私はもはや自分が助からぬ事を理解していた。
魔物から受けた傷は深い。
特に横腹の傷がもう駄目だ。
痛みは熱を発し、流れだした血が足を伝っている。
立っているだけで奇跡のような状態だ。
故に。
「っ」
「ナルシス様!!」
私は魔物に囲まれて、正面に居た魔物の攻撃を受けて剣が砕かれるのを見ながら、地面に仰向けで倒れた。
騎士達の声が響くが、もはや間に合わない。
どの道傷は深く、助かったとて、命は長くないだろう。
「……あぁ」
私はやけにゆっくりと世界が動いているのを見ながら、目を閉じた。
終わりを受け入れる為に。
「最後に一目……君に会いたかった」
頭に浮かぶのは、あの少女の笑顔だ。
最初は気に食わない奴だった。
しかし、話してみると面白い人だと分かった。
もっと知りたいと思った。
触れたいと初めて思った女性だった。
最後に君の姿を一目だけでも、見たかった。
「レナ」
「会いたいのなら、そうすれば良いでしょう」
不意によく聞きなれた声が響き、全てを破壊する様な突風が吹き荒れた。
私が急いで目を開けると、そこには珍しく無表情のシーラ様と、涙を流しているレナが居るのだった。
「バカ!! バカバカバカ!! ナルシスのバカ!!」
「……レナ」
「困ってるなら、言いなさいよ! 俺様を助けろって! 言えば良いでしょ」
「なぜ……きみが」
「友達だからに決まってるでしょ!!」
あぁ、まったく。
私はこんな状況だというのに。
レナの言葉に酷く悔しさを覚えてしまった。
そして、そんなレナの言葉を受けながら、私はシーラ様に視線を送り、聞く。
「……シーラ様」
「はい。なんでしょうか」
「我が国を……キッフレイをお助け下さい」
「分かりました。ただし。言うのが一日ほど遅いです。全てが終わったらお説教ですからね」
私はシーラ様が姿を消すのを確認してから、深く息を吐いて地面にまた体を預けるのだった。
あぁ……良かった。
キッフレイ聖国は救われた。
あの者が、この事件を起こしていた者が言っていた様に、苦しみながら死ぬのだろう。
この国を恨んでいると言っていた。憎んでいるのだと。
だから復讐をするのだと。
「殿下!!」
「ぐっ、……ぁぁあああ!!!」
気合と共に剣を振り回し、魔物を倒そうと挑む。
が、やはり危険度Aランクなだけあり、容易くは倒れてくれなかった。
だが、私が囮となっている事で、騎士達は戦いやすいようである。
「殿下! お下がりください!! 殿下!!」
「ナルシス様をお助けしろ!!」
「ここで、こんな所で失ってはならぬ方だ!!」
この様な事を起こしてしまった私にも、必要だと言ってくれる人間が居る事に感謝をしながらも、私はもはや自分が助からぬ事を理解していた。
魔物から受けた傷は深い。
特に横腹の傷がもう駄目だ。
痛みは熱を発し、流れだした血が足を伝っている。
立っているだけで奇跡のような状態だ。
故に。
「っ」
「ナルシス様!!」
私は魔物に囲まれて、正面に居た魔物の攻撃を受けて剣が砕かれるのを見ながら、地面に仰向けで倒れた。
騎士達の声が響くが、もはや間に合わない。
どの道傷は深く、助かったとて、命は長くないだろう。
「……あぁ」
私はやけにゆっくりと世界が動いているのを見ながら、目を閉じた。
終わりを受け入れる為に。
「最後に一目……君に会いたかった」
頭に浮かぶのは、あの少女の笑顔だ。
最初は気に食わない奴だった。
しかし、話してみると面白い人だと分かった。
もっと知りたいと思った。
触れたいと初めて思った女性だった。
最後に君の姿を一目だけでも、見たかった。
「レナ」
「会いたいのなら、そうすれば良いでしょう」
不意によく聞きなれた声が響き、全てを破壊する様な突風が吹き荒れた。
私が急いで目を開けると、そこには珍しく無表情のシーラ様と、涙を流しているレナが居るのだった。
「バカ!! バカバカバカ!! ナルシスのバカ!!」
「……レナ」
「困ってるなら、言いなさいよ! 俺様を助けろって! 言えば良いでしょ」
「なぜ……きみが」
「友達だからに決まってるでしょ!!」
あぁ、まったく。
私はこんな状況だというのに。
レナの言葉に酷く悔しさを覚えてしまった。
そして、そんなレナの言葉を受けながら、私はシーラ様に視線を送り、聞く。
「……シーラ様」
「はい。なんでしょうか」
「我が国を……キッフレイをお助け下さい」
「分かりました。ただし。言うのが一日ほど遅いです。全てが終わったらお説教ですからね」
私はシーラ様が姿を消すのを確認してから、深く息を吐いて地面にまた体を預けるのだった。
あぁ……良かった。
キッフレイ聖国は救われた。
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