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第44話『シーラちゃんではない人』(レナ視点)③
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次に目を覚ました時、私は誰かに背負われながら移動している最中だった。
その感覚に懐かしさを覚える。
そうだ。昔、まだ魔力の制御が上手く出来なかった頃、外で魔法を使い過ぎてしまい、シーラちゃんに背負われて、家まで帰っていたんだ。
「……しーらちゃん?」
「あぁ、兄さん! 目を覚ましたみたいだよ!」
「そうか! では暫し待て。休める場所を見つけたからな!」
私はそのシーラちゃんではない声に薄く目を開くと、そこには汗だくになりながら走っているナルシスと、コピーシーラちゃんを抱えながら走っているマクシム君がいた。
そこまで確認してから、私は自分が意識を失ってしまっていた事を思い出す。
「そうか、私……ごめんね。偉そうな事言っておいて」
「良い! 謝るのは私の方だ。すまぬ。レナ!」
「……じゃあ、少しだけ甘えさせて。ナルシス君」
「あぁ!」
私はまだ怠い体をナルシス君に預けて、その休めるという場所まで向かうのだった。
そして、洞窟の中で横になっていた私は、足に鈍い痛みを感じながらも、目を開いて周囲を見る。
「落ち着け、落ち着け。魔力を周囲の魔力に溶かすように……っく」
「……落ち着いて」
「レナ。目を覚ましたのか」
「うん。今。それより、索敵をしようとしていたんだよね?」
「あ、あぁ。大丈夫だ。すぐに」
私は動揺しているナルシス君の手に触れて、落ち着くようにと笑った。
そのままナルシス君の体に魔力を通して、ナルシス君と一緒に周囲に魔力を通してゆく。
「……すまないな」
「別に大丈夫だよ。私は子供の頃から何度も」
「そちらではない! あ、いや。それもだな」
「……?」
「先ほどはレナのお陰で助かった。小型の魔物も、大型の魔物も」
「あぁ、その事ね。別に大した事じゃないよ。ナルシス君が殺されたら目覚めが悪いから。ただそれだけ」
「……ふっ、お前は素直じゃないな」
「君程じゃないよ」
私はクスリと笑いながら、息を吐いた。
しかし、体の中が熱い。
あの蛇。毒は持ってなかったけど、変な魔法を使うみたいだ。
何か風邪をひいた時みたいに気だるかった。
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫か?」
「そんなに不安そうな顔をしないでよ。別に大した事無いからさ」
「そういう訳にもいかないだろう! 私を庇ったせいでお前は」
「だからさ。恩を着せたかったワケじゃないし。ただ戦力が落ちたら困るだけ」
「何を言うか。お前が倒れては同じ事だろう。戦力は落ちてるではないか」
「ふふ。確かにね」
私は自分の言葉をすぐ反論されて、おかしくて笑ってしまった。
こんなくだらない会話が、何故か楽しくて心が落ち着く。
体調が悪くて落ち着かないせいか。
分からないけれど。
今は傍に誰かが居るのが嬉しかった。
その感覚に懐かしさを覚える。
そうだ。昔、まだ魔力の制御が上手く出来なかった頃、外で魔法を使い過ぎてしまい、シーラちゃんに背負われて、家まで帰っていたんだ。
「……しーらちゃん?」
「あぁ、兄さん! 目を覚ましたみたいだよ!」
「そうか! では暫し待て。休める場所を見つけたからな!」
私はそのシーラちゃんではない声に薄く目を開くと、そこには汗だくになりながら走っているナルシスと、コピーシーラちゃんを抱えながら走っているマクシム君がいた。
そこまで確認してから、私は自分が意識を失ってしまっていた事を思い出す。
「そうか、私……ごめんね。偉そうな事言っておいて」
「良い! 謝るのは私の方だ。すまぬ。レナ!」
「……じゃあ、少しだけ甘えさせて。ナルシス君」
「あぁ!」
私はまだ怠い体をナルシス君に預けて、その休めるという場所まで向かうのだった。
そして、洞窟の中で横になっていた私は、足に鈍い痛みを感じながらも、目を開いて周囲を見る。
「落ち着け、落ち着け。魔力を周囲の魔力に溶かすように……っく」
「……落ち着いて」
「レナ。目を覚ましたのか」
「うん。今。それより、索敵をしようとしていたんだよね?」
「あ、あぁ。大丈夫だ。すぐに」
私は動揺しているナルシス君の手に触れて、落ち着くようにと笑った。
そのままナルシス君の体に魔力を通して、ナルシス君と一緒に周囲に魔力を通してゆく。
「……すまないな」
「別に大丈夫だよ。私は子供の頃から何度も」
「そちらではない! あ、いや。それもだな」
「……?」
「先ほどはレナのお陰で助かった。小型の魔物も、大型の魔物も」
「あぁ、その事ね。別に大した事じゃないよ。ナルシス君が殺されたら目覚めが悪いから。ただそれだけ」
「……ふっ、お前は素直じゃないな」
「君程じゃないよ」
私はクスリと笑いながら、息を吐いた。
しかし、体の中が熱い。
あの蛇。毒は持ってなかったけど、変な魔法を使うみたいだ。
何か風邪をひいた時みたいに気だるかった。
「はぁ……はぁ……」
「大丈夫か?」
「そんなに不安そうな顔をしないでよ。別に大した事無いからさ」
「そういう訳にもいかないだろう! 私を庇ったせいでお前は」
「だからさ。恩を着せたかったワケじゃないし。ただ戦力が落ちたら困るだけ」
「何を言うか。お前が倒れては同じ事だろう。戦力は落ちてるではないか」
「ふふ。確かにね」
私は自分の言葉をすぐ反論されて、おかしくて笑ってしまった。
こんなくだらない会話が、何故か楽しくて心が落ち着く。
体調が悪くて落ち着かないせいか。
分からないけれど。
今は傍に誰かが居るのが嬉しかった。
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