愛され転生エルフの救済日記

とーふ(代理カナタ)

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第39話『その目は曇り理想しか見えない』(ナルシス視点)③

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私はマクシムの呟きを聞きながら、右手を強く握りしめた。

聖女であるシーラ様は子供を愛してらっしゃる。あの女の様な者すら愛したほどだ。

ならば、私との子も愛して下さると思う。

大丈夫。大丈夫だ!

「というか、兄さんってそっちの知識は大丈夫なの? 妙に潔癖だし。僕が居るしで、変な女に引っ掛かる心配は無いだろうけどさ。シーラ様との未来を目指すなら、そっちの知識も付けなきゃね」

「なんだ。その、そっちの知識という奴は」

「子作りの知識だよ。子作り」

「そのくらい知っているわ。バカにするな」

「へぇー。意外。どこで覚えたの?」

「母上に聞いた」

「母上が? 一番兄さんの性教育に反対してたのに。珍しい事もあるもんだ」

「うむ。母上は私が間違いを犯さぬ様にとちゃんとした知識を授けて下さったのだ。そこから考えるに、シーラ様に子を望む場合は、シーラ様への負担が相当大きい事になるであろう事は想像に難くない」

「まぁ、シーラ様見た目は完全に子供だもんね」

「うむ。そうだな。幼い体では神秘の泉へ入るのも危険が多い」

「ん?」

「しかも子が出来るまで泉の中に居続けなくてはいけないとは……私も傍で見守るが、やはり「ちょっと! ちょっと、兄さん!?」どうした?」

急に大声を出して騒ぎ出したマクシムに私はその理由を尋ねる。

「もしかして兄さんは神秘の泉に入れば子供が出来ると思っている?」

「あぁ。そう母上も言っていたぞ」

マクシムは私の答えに頭を押さえながら唸り声をあげる。

「どうした。何かおかしいのか?」

「おかしさしか無いよ。どうして兄さんはそれに疑問を……! って、そうか。兄さんの周りは兄さんに心酔する人ばかりだったね。それで母上の歪んだ教育が正されなかったのか」

「マクシム。一人で納得するな」

「兄さん、僕は割と本気でシーラ様じゃなくて、レナちゃんと接するべきだと思うよ。今の兄さんに大切なのは、兄さんの行動を全肯定してくれる人じゃなくて、兄さんに否と言ってくれる人だ」

「なにぃ!?」

「まぁ、それは追々やっていくとして、今はその間違った情報を正そうか。そのままじゃあシーラ様に呆れられちゃうから」

「シーラ様に!? わ、分かった! すまないが、頼む!」

そして、俺はその日、マクシムより新たな知識を授けられるのだった。
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