125 / 246
第39話『その目は曇り理想しか見えない』(ナルシス視点)③
しおりを挟む
私はマクシムの呟きを聞きながら、右手を強く握りしめた。
聖女であるシーラ様は子供を愛してらっしゃる。あの女の様な者すら愛したほどだ。
ならば、私との子も愛して下さると思う。
大丈夫。大丈夫だ!
「というか、兄さんってそっちの知識は大丈夫なの? 妙に潔癖だし。僕が居るしで、変な女に引っ掛かる心配は無いだろうけどさ。シーラ様との未来を目指すなら、そっちの知識も付けなきゃね」
「なんだ。その、そっちの知識という奴は」
「子作りの知識だよ。子作り」
「そのくらい知っているわ。バカにするな」
「へぇー。意外。どこで覚えたの?」
「母上に聞いた」
「母上が? 一番兄さんの性教育に反対してたのに。珍しい事もあるもんだ」
「うむ。母上は私が間違いを犯さぬ様にとちゃんとした知識を授けて下さったのだ。そこから考えるに、シーラ様に子を望む場合は、シーラ様への負担が相当大きい事になるであろう事は想像に難くない」
「まぁ、シーラ様見た目は完全に子供だもんね」
「うむ。そうだな。幼い体では神秘の泉へ入るのも危険が多い」
「ん?」
「しかも子が出来るまで泉の中に居続けなくてはいけないとは……私も傍で見守るが、やはり「ちょっと! ちょっと、兄さん!?」どうした?」
急に大声を出して騒ぎ出したマクシムに私はその理由を尋ねる。
「もしかして兄さんは神秘の泉に入れば子供が出来ると思っている?」
「あぁ。そう母上も言っていたぞ」
マクシムは私の答えに頭を押さえながら唸り声をあげる。
「どうした。何かおかしいのか?」
「おかしさしか無いよ。どうして兄さんはそれに疑問を……! って、そうか。兄さんの周りは兄さんに心酔する人ばかりだったね。それで母上の歪んだ教育が正されなかったのか」
「マクシム。一人で納得するな」
「兄さん、僕は割と本気でシーラ様じゃなくて、レナちゃんと接するべきだと思うよ。今の兄さんに大切なのは、兄さんの行動を全肯定してくれる人じゃなくて、兄さんに否と言ってくれる人だ」
「なにぃ!?」
「まぁ、それは追々やっていくとして、今はその間違った情報を正そうか。そのままじゃあシーラ様に呆れられちゃうから」
「シーラ様に!? わ、分かった! すまないが、頼む!」
そして、俺はその日、マクシムより新たな知識を授けられるのだった。
聖女であるシーラ様は子供を愛してらっしゃる。あの女の様な者すら愛したほどだ。
ならば、私との子も愛して下さると思う。
大丈夫。大丈夫だ!
「というか、兄さんってそっちの知識は大丈夫なの? 妙に潔癖だし。僕が居るしで、変な女に引っ掛かる心配は無いだろうけどさ。シーラ様との未来を目指すなら、そっちの知識も付けなきゃね」
「なんだ。その、そっちの知識という奴は」
「子作りの知識だよ。子作り」
「そのくらい知っているわ。バカにするな」
「へぇー。意外。どこで覚えたの?」
「母上に聞いた」
「母上が? 一番兄さんの性教育に反対してたのに。珍しい事もあるもんだ」
「うむ。母上は私が間違いを犯さぬ様にとちゃんとした知識を授けて下さったのだ。そこから考えるに、シーラ様に子を望む場合は、シーラ様への負担が相当大きい事になるであろう事は想像に難くない」
「まぁ、シーラ様見た目は完全に子供だもんね」
「うむ。そうだな。幼い体では神秘の泉へ入るのも危険が多い」
「ん?」
「しかも子が出来るまで泉の中に居続けなくてはいけないとは……私も傍で見守るが、やはり「ちょっと! ちょっと、兄さん!?」どうした?」
急に大声を出して騒ぎ出したマクシムに私はその理由を尋ねる。
「もしかして兄さんは神秘の泉に入れば子供が出来ると思っている?」
「あぁ。そう母上も言っていたぞ」
マクシムは私の答えに頭を押さえながら唸り声をあげる。
「どうした。何かおかしいのか?」
「おかしさしか無いよ。どうして兄さんはそれに疑問を……! って、そうか。兄さんの周りは兄さんに心酔する人ばかりだったね。それで母上の歪んだ教育が正されなかったのか」
「マクシム。一人で納得するな」
「兄さん、僕は割と本気でシーラ様じゃなくて、レナちゃんと接するべきだと思うよ。今の兄さんに大切なのは、兄さんの行動を全肯定してくれる人じゃなくて、兄さんに否と言ってくれる人だ」
「なにぃ!?」
「まぁ、それは追々やっていくとして、今はその間違った情報を正そうか。そのままじゃあシーラ様に呆れられちゃうから」
「シーラ様に!? わ、分かった! すまないが、頼む!」
そして、俺はその日、マクシムより新たな知識を授けられるのだった。
3
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!
楠ノ木雫
恋愛
貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?
貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。
けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?
※他サイトにも投稿しています。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
その悪役令嬢はなぜ死んだのか
キシバマユ
ファンタジー
前世で死を迎えた菊池奈緒は異世界で転生した。
奈緒は満身創痍の体で目覚め、助けてもらった先生の元で治療魔法の見習いとして新たな人生を歩み始める。
しかし、自分が今宿っている体の前の持ち主が「重大な悪事」を繰り返していたらしいことを知り、次第に運命の謎に巻き込まれていく。
奈緒は自身の過去と向き合い今の体の秘密を探る中で、この異世界でどのように生き延びるかを模索していく。
奈緒は「悪役令嬢」としての運命とどう向き合うのか__
表紙はillustACのものを使わせていただきました
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します
みおな
ファンタジー
王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。
それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。
死んだはずの私が目覚めたのは・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる