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第35話『完璧な入学式』③

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「しかし、今年は遂に入学してきましたな」

「そうですね」

私は不意に始まった先生たちの話を聞きながら資料を見る。

そこにはレナちゃんの詳細な情報が書かれていた。

「聖女ですか……厄介なものですな」

「既にシーラ様によって保護されている以上、どこの国も荒事は起こさないでしょうが、それでも彼女を巡り、各国が動くでしょう」

「幸いというべきか、彼女自身に野心などは無いようだ」

「だが、だからこそ厄介だという話もある。彼女の気分で世界の地図が変わるなど、こちらとしては容認できる事ではない」

「皆さん」

私はレナちゃんが、何か危険物の様な言い方をされているのが気に入らなくて、思わず声を掛けてしまった。

確かに聖女という存在は厄介かもしれないが、それでもレナちゃんは一生懸命な良い子なのだ。

たまに、ちょっと、アレな所もあるけれど。

それでも、レナちゃんは私の可愛い子だ。悪し様に言われたくはない。

「レナちゃんは普通の女の子です。確かに聖女という特異な力を持っているかもしれません。それでも、普通の女の子なのです。どうか、その事を忘れないでいただきたいです」

「シーラ様……」

「どの様な事情があろうとも、レナちゃんも、他の子もこの学園で魔法を学び、将来の為に頑張っているのです。それを私たちが邪魔してはいけないと思います。はい」

「シーラ様のお考え、よく理解しました」

「では、かの生徒は他の生徒と変わらず、一般生徒として扱いますが、よろしいでしょうか」

「はい。その様にお願いします」

私は頭を下げてから、私は次なる議題へと挑む。

そして、会議を終わらせてから孤児院へと帰った。



孤児院へ帰ると子供達が駆け寄ってくれて、仕事で疲れた体が一気に癒されるのを感じる。

「ただいま帰りました」

「シーラ様! 今日のご飯はねー。私が手伝ったのー!」

「そうなんですか? それは楽しみですねぇ」

「ね! ね! 僕はね! 僕はね!」

「はいはい。順番に聞きますよ」

子供達に手を引かれながら、食堂へと向かい、食事をする。

そして、お風呂に入り、全てが終わってから自室へ戻って、明日からの生活についてレナちゃんと話をする事にした。

「明日からレナちゃんも寮生活ですね。準備は大丈夫ですか?」

「うん。初めからその約束だもんね。大丈夫。準備は出来てるよ」

「それは良かったです」

「でも、本当はシーラちゃんも一緒に連れて行きたいくらい」

「ふふ。寂しがってくれるのは嬉しいですが、独り立ちする事も大事ですからね」

「分かってるよー」

レナちゃんは私のベッドに座ると横になり、いじけた様に私の枕を抱きしめる。

まだ子供の様な姿を見て、私は笑みを零した。

「終わってしまう昨日は惜しく感じるものだが、未だ見えぬ明日への希望に比べれば些細なものだ」

「……どっかの偉い人の言葉?」

「そうですね。そんな感じです」

「そっか。楽観的な人だったんだろうね」

「そうかもしれないですね」

「でも、シーラちゃんも前に進み続けてるんだもんね。なら、私も頑張らないと」

「応援していますよ。レナちゃん」

「うん! 私、頑張るよ!」

いよいよ物語が始まる。
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