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第30話『原作の始まり』②

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いや、これじゃ完全に悪役なんですけど。

って、まぁそれはしょうがないか。

この世界じゃあ聖女って分かっただけで、誘拐されたり、貴族に奪われたりと、子を愛する親からしたら許せん話ばっかりだからな。

「一応先に言っておきますが、私はレナさんを攫いに来た訳でも、奪いに来た訳でもありません。私にとって嫌いな物は愛する親子を引き裂く存在ですから」

「で、では」

「これから先、どうあってもこの子は聖女という役割をこなさなくてはいけなくなります。ですから、その事でこの子が傷つかない様に、守る為にここへ来ました」

「シーラ様……! なんとお礼を言えば良いか!」

「いや、お礼とかは良いですよ。趣味ですから」

「もしそうなのだとしても、私にとってはこれ以上のない救いでございます」

「あぁ、という訳でお金はお渡しするので、私をこの家に泊めていただいてもよろしいでしょうか?」

「はい! この様な汚い家ですが、いくらでも! あぁ、ベッドは私の物をお使いください。私は床で眠れば十分ですので!」

「いや、大丈夫ですから。買いますから。お母さんもお母さんでゆっくりと休んでください」

「母! 私の事を母と……! レナ。良かったわね。素晴らしい方が貴女を」

「ちょいちょい! 待ってください! 待ってください! 今のはそういうアレじゃないですから。レナちゃんのお母さんという意味ですから!」

「そうでしたか。これは大変な勘違いを」

何とも慌ただしい事だが、何とか説得は成功し、私は主人公レナちゃんの家に潜り込むのだった。



私の潜入作戦は順調に進んでいる。

学園には複製魔法で私そっくりの複製体を用意しておいたし。

レナちゃんの住んでいる村でも私の正体に気づいている人は居ない。

「あー。シー、シー」

「村長。シール様です。シール様」

「おー! そうだった。そうだった! シール様。本日も良い天気ですな」

「えぇ。そうですね。村長さん」

「あー。それで、折り入ってご相談があるのですが」

「はい。なんでしょうか? 一般エルフの私に出来る事であれば何でも」

「村の畑に祝福をかけていただけないかと」

「えっ」

「……」

「畑への祝福って、一般エルフには可能でしょうか……?」

「と、当然ですよ! ねぇ! 村長! いやー! 俺も前に見たことあるけど、エルフはみんなやってたなぁ!」

「そうね! 私も見たことあるわー! もう普通かなって感じでしたねー!」

「あ、そうなんですね。では引き受けましょう。私は一般エルフですからね。普通のエルフに出来る事は普通にできます」

「ほっ」

「では、畑はどちらに」

「今、案内します!」

私は畑に祝福をかけ、元気にしてから、再びレナちゃんの所へと戻った。
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