79 / 246
第24話『第1回シーラ様杯開幕』④
しおりを挟む
そして、始まった準決勝。
私の相手は何てこともない優男であったが、戦ってすぐにこいつが危険だという事が分かった。
そう。目が。
かつて、魔王の影響を受けていたアイヴィにそっくりな目をしているのだ。
「ようやく男以外と当たったか。しかし、既に純粋さは失われているな」
「……」
「やはり、私にはかの乙女しか居ないようだ」
ねっとりと、ねばりつく様な視線を観客席に居るシーラ様へ向けているのをみて、私は審判の合図も聞かず、武器を構えて突っ込んでいた。
反則だとかルールだとか関係ない。
こいつはここで排除しないといけない。そう感じたからだ。
しかし、私の攻撃はあっさりと受け止められ、まず武器が奪われた。
そして口を手で塞がれたまま、魔法か何か分からないが、薄い刃で全身を切り刻まれる。
「脆いものだな。人間。本来であれば悲鳴の一つでも楽しみたい所なのだがね。敗北宣言をされてしまえば、この遊びも終了だ。だからせめて楽しませてくれ」
私は悪趣味な男に向かって握りしめた拳で殴り掛かった。
しかし、その手は容易く受け止められて、ゆっくりと曲がらない方向に力を入れられてゆく。
折れる……!
私は恐怖から逃げ出そうとした。
しかし、力では勝てず、腕は踏みつけた小枝の様になってしまった。
痛みが全身をめぐるが、いくら声を出してもそれは音となる事は無かった。
「そ、そこまで!!」
「ん? なんだ。審判。それはどういう意味だ?」
「いや、彼女はもう戦える状態じゃあ」
「おいおい。まだこの女は敗北宣言をしていないだろう。それとも君には聞こえたのかね?」
「それは」
「なぁ、まだ戦うだろう? どうする? 敗北するか?」
熱を出して寝込んでいた時の様に、全身が熱く痛みに支配されていた私は敗北という言葉を聞いて、このまま終わる事が出来ると頷こうとした。
そして、いつかの時の様に、シーラ様が枕元で私の頬を撫でて、「無理はしないで下さい」と言っていた事を思い出し……。
「まぁ、お前が終われば、私はあの乙女を自由に出来る訳だからな。実に楽しみだ。そう考えれば、ここで続ける意味も……」
瞬間、怒りで意識がハッキリとして、魔力の刃で私を捕まえている奴の首を狙った。
しかし、それは外れ、優男の皮膚をわずかに切るだけであった。
「っ」
「ふふ。どうやらまだやれるようだ。しかし」
優男は私を浮かせ、わき腹に強い衝撃を与えた。
おそらくは蹴ったのだろう。
そして、その勢いで私は闘技場の中を転がる。
「私の体を傷つけた罰だ。苦しみながら逝くと良い。大会とやらのルールがあるからな。夜明けに合わせて死ぬ様にしてやろう」
優男は右手を上げ、魔力を集めてそれを私に向かって振り下ろした。
既に体は動かない。
逃げる事は出来ない。
あぁ、私はここで死ぬのか……。
「それなら、最期にシーラ様に、会いたかったな……」
そして、魔法がぶつかり、周囲は閃光と爆炎に包まれるのだった。
私の相手は何てこともない優男であったが、戦ってすぐにこいつが危険だという事が分かった。
そう。目が。
かつて、魔王の影響を受けていたアイヴィにそっくりな目をしているのだ。
「ようやく男以外と当たったか。しかし、既に純粋さは失われているな」
「……」
「やはり、私にはかの乙女しか居ないようだ」
ねっとりと、ねばりつく様な視線を観客席に居るシーラ様へ向けているのをみて、私は審判の合図も聞かず、武器を構えて突っ込んでいた。
反則だとかルールだとか関係ない。
こいつはここで排除しないといけない。そう感じたからだ。
しかし、私の攻撃はあっさりと受け止められ、まず武器が奪われた。
そして口を手で塞がれたまま、魔法か何か分からないが、薄い刃で全身を切り刻まれる。
「脆いものだな。人間。本来であれば悲鳴の一つでも楽しみたい所なのだがね。敗北宣言をされてしまえば、この遊びも終了だ。だからせめて楽しませてくれ」
私は悪趣味な男に向かって握りしめた拳で殴り掛かった。
しかし、その手は容易く受け止められて、ゆっくりと曲がらない方向に力を入れられてゆく。
折れる……!
私は恐怖から逃げ出そうとした。
しかし、力では勝てず、腕は踏みつけた小枝の様になってしまった。
痛みが全身をめぐるが、いくら声を出してもそれは音となる事は無かった。
「そ、そこまで!!」
「ん? なんだ。審判。それはどういう意味だ?」
「いや、彼女はもう戦える状態じゃあ」
「おいおい。まだこの女は敗北宣言をしていないだろう。それとも君には聞こえたのかね?」
「それは」
「なぁ、まだ戦うだろう? どうする? 敗北するか?」
熱を出して寝込んでいた時の様に、全身が熱く痛みに支配されていた私は敗北という言葉を聞いて、このまま終わる事が出来ると頷こうとした。
そして、いつかの時の様に、シーラ様が枕元で私の頬を撫でて、「無理はしないで下さい」と言っていた事を思い出し……。
「まぁ、お前が終われば、私はあの乙女を自由に出来る訳だからな。実に楽しみだ。そう考えれば、ここで続ける意味も……」
瞬間、怒りで意識がハッキリとして、魔力の刃で私を捕まえている奴の首を狙った。
しかし、それは外れ、優男の皮膚をわずかに切るだけであった。
「っ」
「ふふ。どうやらまだやれるようだ。しかし」
優男は私を浮かせ、わき腹に強い衝撃を与えた。
おそらくは蹴ったのだろう。
そして、その勢いで私は闘技場の中を転がる。
「私の体を傷つけた罰だ。苦しみながら逝くと良い。大会とやらのルールがあるからな。夜明けに合わせて死ぬ様にしてやろう」
優男は右手を上げ、魔力を集めてそれを私に向かって振り下ろした。
既に体は動かない。
逃げる事は出来ない。
あぁ、私はここで死ぬのか……。
「それなら、最期にシーラ様に、会いたかったな……」
そして、魔法がぶつかり、周囲は閃光と爆炎に包まれるのだった。
13
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい
うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。
ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。
ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。
時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。
だから――。
「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」
異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ!
============
小説家になろうにも上げています。
一気に更新させて頂きました。
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)
朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】
バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。
それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。
ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。
ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――!
天下無敵の色事師ジャスミン。
新米神官パーム。
傭兵ヒース。
ダリア傭兵団団長シュダ。
銀の死神ゼラ。
復讐者アザレア。
…………
様々な人物が、徐々に絡まり、収束する……
壮大(?)なハイファンタジー!
*表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます!
・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる