愛され転生エルフの救済日記

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
上 下
75 / 246

第23話『新時代の始まり』③

しおりを挟む
出た出た。いつもの奴。

私の話をしているのに、私に黙ってろって、どう考えてもおかしいでしょ?

でも私以外は誰もその事をおかしいとは言わないし、挙句の果てに無視である。

なんか考えたら、だんだんと腹が立ってきたぞ?

良いよ。良いよ。要するに、トーナメントして勝った人がオリヴァー君なら納得するんでしょ?

なら、オリヴァー君に全力の全力で支援魔法をかけるから。

ただでさえ最強なオリヴァー君を、シナリオ上も最強無敵にしてやる。

これで文句ないだろ。

私はコソコソと冒険者組合の中を移動しながら、オリヴァー君の近くまで移動して、支援魔法をオリヴァー君の体に触れながら与えようとした。

どんな魔法も全部弾いて、早く走れる様になって、剣を振るうだけで爆発とかする様にしてやる。

しかし、その手は誰でもないオリヴァー君自身に止められてしまう。

「シーラ様」

「……なんですか?」

「俺は必ず勝ちますよ。信じて、待っていて下さい」

「嫌です」

「シーラ様……」

「私は騎士様が来るまで待っている大人しいお姫様じゃないんです」

「……」

「でも、確かに、最強の二人! をやるなら、互いを信頼し合うのが大事ですもんね。だから、信じます」

私は右手の魔法を消して、力を抜いた。

そしてしょうがないなぁと苦笑する。

オリヴァー君はそんな私の前で跪くと、私の右手を取って、手の甲にキスするのだった。

「必ずや、シーラ様に勝利をお届けします」

「……はい」

どこで、こんなキザな事を覚えてきたのか。

って、そうか。騎士団か。

私は右手を抱きしめながら、何とか頷いて、すぐ後ろの椅子に座り込んだ。

何だか頬が酷く熱い。

ま、まぁ? こんな人が多い場所でこんな事をされれば、誰だって恥ずかしいと思う。

だから、私の反応は、別に普通だ。

そう。普通なのだ。

「シーラ様」

「あ、その……私、応援してますから!」

何だかオリヴァー君と顔を合わせるのも恥ずかしくなって、私は冒険者組合から逃げ出した。

いや、違う!

逃げ出したわけじゃない。

そう! 用事! 用事が終わったから帰る事にしたのだ。

ただ、それだけなのだ。

私は孤児院に駆け込み、扉を勢いよく閉めてから、床に座り込んで、荒い鼓動を何とか整えようとしていた。

しかし、どれだけ深呼吸しても、鼓動はドクドクと早く鳴り響くばかりだ。

「……別に、オリヴァー君の事なんて、何とも思ってないですからね」

そう。だって、オリヴァー君の事は子供の時からよく知っているのだ。

だから、こんな気持ちは嘘っぱちだ。

オリヴァー君の事を男の人として意識してしまっているだなんて事は……勘違いなのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...