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第23話『新時代の始まり』③
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出た出た。いつもの奴。
私の話をしているのに、私に黙ってろって、どう考えてもおかしいでしょ?
でも私以外は誰もその事をおかしいとは言わないし、挙句の果てに無視である。
なんか考えたら、だんだんと腹が立ってきたぞ?
良いよ。良いよ。要するに、トーナメントして勝った人がオリヴァー君なら納得するんでしょ?
なら、オリヴァー君に全力の全力で支援魔法をかけるから。
ただでさえ最強なオリヴァー君を、シナリオ上も最強無敵にしてやる。
これで文句ないだろ。
私はコソコソと冒険者組合の中を移動しながら、オリヴァー君の近くまで移動して、支援魔法をオリヴァー君の体に触れながら与えようとした。
どんな魔法も全部弾いて、早く走れる様になって、剣を振るうだけで爆発とかする様にしてやる。
しかし、その手は誰でもないオリヴァー君自身に止められてしまう。
「シーラ様」
「……なんですか?」
「俺は必ず勝ちますよ。信じて、待っていて下さい」
「嫌です」
「シーラ様……」
「私は騎士様が来るまで待っている大人しいお姫様じゃないんです」
「……」
「でも、確かに、最強の二人! をやるなら、互いを信頼し合うのが大事ですもんね。だから、信じます」
私は右手の魔法を消して、力を抜いた。
そしてしょうがないなぁと苦笑する。
オリヴァー君はそんな私の前で跪くと、私の右手を取って、手の甲にキスするのだった。
「必ずや、シーラ様に勝利をお届けします」
「……はい」
どこで、こんなキザな事を覚えてきたのか。
って、そうか。騎士団か。
私は右手を抱きしめながら、何とか頷いて、すぐ後ろの椅子に座り込んだ。
何だか頬が酷く熱い。
ま、まぁ? こんな人が多い場所でこんな事をされれば、誰だって恥ずかしいと思う。
だから、私の反応は、別に普通だ。
そう。普通なのだ。
「シーラ様」
「あ、その……私、応援してますから!」
何だかオリヴァー君と顔を合わせるのも恥ずかしくなって、私は冒険者組合から逃げ出した。
いや、違う!
逃げ出したわけじゃない。
そう! 用事! 用事が終わったから帰る事にしたのだ。
ただ、それだけなのだ。
私は孤児院に駆け込み、扉を勢いよく閉めてから、床に座り込んで、荒い鼓動を何とか整えようとしていた。
しかし、どれだけ深呼吸しても、鼓動はドクドクと早く鳴り響くばかりだ。
「……別に、オリヴァー君の事なんて、何とも思ってないですからね」
そう。だって、オリヴァー君の事は子供の時からよく知っているのだ。
だから、こんな気持ちは嘘っぱちだ。
オリヴァー君の事を男の人として意識してしまっているだなんて事は……勘違いなのだ。
私の話をしているのに、私に黙ってろって、どう考えてもおかしいでしょ?
でも私以外は誰もその事をおかしいとは言わないし、挙句の果てに無視である。
なんか考えたら、だんだんと腹が立ってきたぞ?
良いよ。良いよ。要するに、トーナメントして勝った人がオリヴァー君なら納得するんでしょ?
なら、オリヴァー君に全力の全力で支援魔法をかけるから。
ただでさえ最強なオリヴァー君を、シナリオ上も最強無敵にしてやる。
これで文句ないだろ。
私はコソコソと冒険者組合の中を移動しながら、オリヴァー君の近くまで移動して、支援魔法をオリヴァー君の体に触れながら与えようとした。
どんな魔法も全部弾いて、早く走れる様になって、剣を振るうだけで爆発とかする様にしてやる。
しかし、その手は誰でもないオリヴァー君自身に止められてしまう。
「シーラ様」
「……なんですか?」
「俺は必ず勝ちますよ。信じて、待っていて下さい」
「嫌です」
「シーラ様……」
「私は騎士様が来るまで待っている大人しいお姫様じゃないんです」
「……」
「でも、確かに、最強の二人! をやるなら、互いを信頼し合うのが大事ですもんね。だから、信じます」
私は右手の魔法を消して、力を抜いた。
そしてしょうがないなぁと苦笑する。
オリヴァー君はそんな私の前で跪くと、私の右手を取って、手の甲にキスするのだった。
「必ずや、シーラ様に勝利をお届けします」
「……はい」
どこで、こんなキザな事を覚えてきたのか。
って、そうか。騎士団か。
私は右手を抱きしめながら、何とか頷いて、すぐ後ろの椅子に座り込んだ。
何だか頬が酷く熱い。
ま、まぁ? こんな人が多い場所でこんな事をされれば、誰だって恥ずかしいと思う。
だから、私の反応は、別に普通だ。
そう。普通なのだ。
「シーラ様」
「あ、その……私、応援してますから!」
何だかオリヴァー君と顔を合わせるのも恥ずかしくなって、私は冒険者組合から逃げ出した。
いや、違う!
逃げ出したわけじゃない。
そう! 用事! 用事が終わったから帰る事にしたのだ。
ただ、それだけなのだ。
私は孤児院に駆け込み、扉を勢いよく閉めてから、床に座り込んで、荒い鼓動を何とか整えようとしていた。
しかし、どれだけ深呼吸しても、鼓動はドクドクと早く鳴り響くばかりだ。
「……別に、オリヴァー君の事なんて、何とも思ってないですからね」
そう。だって、オリヴァー君の事は子供の時からよく知っているのだ。
だから、こんな気持ちは嘘っぱちだ。
オリヴァー君の事を男の人として意識してしまっているだなんて事は……勘違いなのだ。
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