愛され転生エルフの救済日記

とーふ(代理カナタ)

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第20話『罪を赦す強さ』①

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私はオリヴァー君に助けられながら立ち上がり、吹き飛んでいった魔王へと視線を向けた。

普通に考えればオリヴァー君の攻撃を受けて無事な訳がない。

が、魔王とは不死の存在であり、どれだけバラバラにしようが、塵にしようが、消滅させようが、時間が経てば復活してしまうのだ。

とんだ世界のバグである。

しかも、人間に対して友好的な魔王は非常に少ないため、基本的に戦う事になる。

そして当然な話にはなるが、人形遣いの魔王は人類の……私の敵である。

私は隣に立っているオリヴァー君の体に触れて、魔法で魔力の線が見える様にし、剣に私の魔力を通して、傀儡魔法の線が斬れるようにした。

「シーラ様、これは?」

「魔王の魔法を打ち破る為の魔法です。かの魔王は傀儡魔法という魔法を使い、対象を魔力の線で操ります。ですので、その線を切ってください」

「承知いたしました」

「あ、でも無理な時は私に任せてくださいね? 魔王は触れるだけで傀儡魔法を使えるので、絶対に触れない様に」

「承知いたしました。では、シーラ様は後ろにお下がりください」

「え?」

「ここは俺が」

オリヴァー君は私の前に立つと、剣を綺麗に構える。

そして、冒険者組合の窓を破壊しながら飛び込んできた冒険者さんたちにも動揺する事なく、冒険者さんたちの武器を受け流しながら一人、また一人と魔力の線を切ってゆき、解放していった。

「……す、すごい」

「シーラ様! このままここで戦うのは不利です。外へ出ましょう」

「は、はい!」

「俺から離れないで!」

「はい!」

私はオリヴァー君に言われるまま、傍に近づき、オリヴァー君と共に冒険者組合の建物から外へと出た。

走っている間もホラーゲームよろしく、うめき声をあげながら襲い掛かってくる人たちを、オリヴァー君は次から次へと魔力の線を切って解放し、広い場所に出てから再び剣を構えた。

「どうした。魔王。たった一回切られただけで、もう俺が怖くなってしまったか!? まぁ、コソコソと隠れる事しか出来ないお前は、正面から戦う勇気などありはしないのだから仕方ないか!」

オリヴァー君は周囲が見渡せる広場で魔王を挑発しながら、周囲を警戒し続ける。

そして、その挑発を受けてか、魔王はゆるりと姿を現した。
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