53 / 246
第16話『世界の正しさは常にシーラ様の傍に』③
しおりを挟む
私は一斉に視線を浴びせられ、思わず後ずさってしまうが、何とか気持ちを奮い立たせて顔を上げる。
大きく息を吐いて、震える手で服を握りしめながら問うた。
「あの、その……怒ってないのですか?」
「怒る? 何をでしょうか。怒る理由が見えません」
「そうですよ。シーラ様。むしろやる気が出てきたというか」
「ここで活躍すれば、シーラ様に好感を持っていただけるというか」
「なにぃ!? お前! そんな邪な気持ちで責任者をやりたいだなんて言っていたのか!?」
「別に良いだろう! どんな形だって! シーラ様が笑顔になって、俺はお褒めいただく! 何も問題はない!」
「問題だらけだ!? 馬鹿野郎!」
私は争う人々を見ながら、ふと前世の事を思い出していた。
あれだ! これは、アレ!
アイドルだ! なんか可愛いアイドルが馬鹿な発言をしても、みんな可愛いねって言って終わらせるアレだ!
まさか私がアイドル扱いをされる日が来るとは!
やはり見た目。見た目は全てを解決する。
幼女ってだけで大体の事が許せるもんね。
な、なるほど……そういうカラクリだったのか。
おかしいと思ってたんだ。
みんな私にやたら構うなぁって。そうか! 全部幼女だったからなんだ!
良かった。良かった。
って、良くなーい!!
全然良くないぞ! 私!
何の為に王城を出たんだ! 子供たちを養う為だろ!
孤児院で働いてくれている人たちを、養う為だろ!!
甘えたままで良いのか?
いーや! 良くない!
汚名返上だ。
「皆さん! 静かにしてください!」
「……」
「あ、いや、少しくらいは、話してても良いですよ?」
「……」
私が静かにしてほしいと言った瞬間に、全員が一切口を開かなくなり、静寂の中で私を見つめる。
その光景はまさに恐怖という言葉が最も相応しかった。
これが果たしてアイドルか? と問われると正直自信がない。
なんかもっと別の存在じゃないかな。
怪しい団体のボスとか。そういうの。
大丈夫かな? 私。何かあった時、捕まったりしないかな?
怖い。
「えと。その、ですね。責任者は私がやります。それで、何かあった時の責任は私で、成功した場合は皆さんの頑張り。これで行きましょう。それで、ですね。まず決めたいのは」
「何か問題が発生した際に、シーラ様の代わりに責任を取る人間ですね?」
「違います! そうではなくて! 責任は私が取ると言っているじゃないですか! その、食料が足りなくなった時は、森で魔物を捕まえてきますし。森の木の実とか、果物とかも取ってきます。そういう責任です」
「なるほど」
「分かってくださいましたか」
「えぇ。このジャック。全てを理解しました」
「ほっ……良かったです」
私は安堵の息を吐いた。
心が落ち着いて。ようやく落ち着ける。
が、そんな風に考えている事が出来たのも少しの間だけだった。
「皆……聞いたな? これは絶対に失敗してはいけない計画だ! 例えその命が尽き果てるとも!! 何を犠牲にしようとも!! 必ず成功させる!! 良いな!?」
「「「おぉ!!」」」
「だから! 違いますってば!!」
私は必死に彼らの言葉を否定した。
しかし、私の声は届かず、農業発展決死隊が結成されてしまったのだった。
大きく息を吐いて、震える手で服を握りしめながら問うた。
「あの、その……怒ってないのですか?」
「怒る? 何をでしょうか。怒る理由が見えません」
「そうですよ。シーラ様。むしろやる気が出てきたというか」
「ここで活躍すれば、シーラ様に好感を持っていただけるというか」
「なにぃ!? お前! そんな邪な気持ちで責任者をやりたいだなんて言っていたのか!?」
「別に良いだろう! どんな形だって! シーラ様が笑顔になって、俺はお褒めいただく! 何も問題はない!」
「問題だらけだ!? 馬鹿野郎!」
私は争う人々を見ながら、ふと前世の事を思い出していた。
あれだ! これは、アレ!
アイドルだ! なんか可愛いアイドルが馬鹿な発言をしても、みんな可愛いねって言って終わらせるアレだ!
まさか私がアイドル扱いをされる日が来るとは!
やはり見た目。見た目は全てを解決する。
幼女ってだけで大体の事が許せるもんね。
な、なるほど……そういうカラクリだったのか。
おかしいと思ってたんだ。
みんな私にやたら構うなぁって。そうか! 全部幼女だったからなんだ!
良かった。良かった。
って、良くなーい!!
全然良くないぞ! 私!
何の為に王城を出たんだ! 子供たちを養う為だろ!
孤児院で働いてくれている人たちを、養う為だろ!!
甘えたままで良いのか?
いーや! 良くない!
汚名返上だ。
「皆さん! 静かにしてください!」
「……」
「あ、いや、少しくらいは、話してても良いですよ?」
「……」
私が静かにしてほしいと言った瞬間に、全員が一切口を開かなくなり、静寂の中で私を見つめる。
その光景はまさに恐怖という言葉が最も相応しかった。
これが果たしてアイドルか? と問われると正直自信がない。
なんかもっと別の存在じゃないかな。
怪しい団体のボスとか。そういうの。
大丈夫かな? 私。何かあった時、捕まったりしないかな?
怖い。
「えと。その、ですね。責任者は私がやります。それで、何かあった時の責任は私で、成功した場合は皆さんの頑張り。これで行きましょう。それで、ですね。まず決めたいのは」
「何か問題が発生した際に、シーラ様の代わりに責任を取る人間ですね?」
「違います! そうではなくて! 責任は私が取ると言っているじゃないですか! その、食料が足りなくなった時は、森で魔物を捕まえてきますし。森の木の実とか、果物とかも取ってきます。そういう責任です」
「なるほど」
「分かってくださいましたか」
「えぇ。このジャック。全てを理解しました」
「ほっ……良かったです」
私は安堵の息を吐いた。
心が落ち着いて。ようやく落ち着ける。
が、そんな風に考えている事が出来たのも少しの間だけだった。
「皆……聞いたな? これは絶対に失敗してはいけない計画だ! 例えその命が尽き果てるとも!! 何を犠牲にしようとも!! 必ず成功させる!! 良いな!?」
「「「おぉ!!」」」
「だから! 違いますってば!!」
私は必死に彼らの言葉を否定した。
しかし、私の声は届かず、農業発展決死隊が結成されてしまったのだった。
21
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
好色一代勇者 〜ナンパ師勇者は、ハッタリと機転で窮地を切り抜ける!〜(アルファポリス版)
朽縄咲良
ファンタジー
【HJ小説大賞2020後期1次選考通過作品(ノベルアッププラスにて)】
バルサ王国首都チュプリの夜の街を闊歩する、自称「天下無敵の色事師」ジャスミンが、自分の下半身の不始末から招いたピンチ。その危地を救ってくれたラバッテリア教の大教主に誘われ、神殿の下働きとして身を隠す。
それと同じ頃、バルサ王国東端のダリア山では、最近メキメキと発展し、王国の平和を脅かすダリア傭兵団と、王国最強のワイマーレ騎士団が激突する。
ワイマーレ騎士団の圧勝かと思われたその時、ダリア傭兵団団長シュダと、謎の老女が戦場に現れ――。
ジャスミンは、口先とハッタリと機転で、一筋縄ではいかない状況を飄々と渡り歩いていく――!
天下無敵の色事師ジャスミン。
新米神官パーム。
傭兵ヒース。
ダリア傭兵団団長シュダ。
銀の死神ゼラ。
復讐者アザレア。
…………
様々な人物が、徐々に絡まり、収束する……
壮大(?)なハイファンタジー!
*表紙イラストは、澄石アラン様から頂きました! ありがとうございます!
・小説家になろう、ノベルアッププラスにも掲載しております(一部加筆・補筆あり)。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!
加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。
カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。
落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。
そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。
器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。
失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。
過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。
これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。
彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。
毎日15:10に1話ずつ更新です。
この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる