愛され転生エルフの救済日記

とーふ(代理カナタ)

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第13話『色とりどりの光は、空を染めて』(ダン視点)②

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しかし、そんな日々は唐突に終わりを迎えることになる。

そう。シーラ様がこの町に視察という形で来たのだ。

シーラ様は世界中にいる親を無くした子供の為に、孤児院なる建物を建てる必要があるとして、とにかく広い土地を探していたのだ。

そこで見つけたのが、ムイゼンであった。

俺は初めてシーラ様がムイゼンに来た時の事を今でも覚えている。

ムイゼンの広い土地を見て喜ぶシーラ様と、ここは良くない場所だと必死に訴えているおそらくは国の偉い連中の姿を。

「良いじゃないですか。広いですし。景色も良いですし」

「いえ! シーラ様。ここはとても危険な場所なのです! 魔物の被害が多く! シーラ様がもうここへ来ないという事でしたら、私共も頷くのですが」

「いやいや。孤児院を作るだけ作って放置とかあり得ないですよ。何ならこちらに住もうかと考えているくらいで」

「ムイゼンに住む!!? とんでもない!! いけません! この様な町に!」

「こんな町って……いや、住んでいる方が居るんですよね? ではそういう言い方はどうかと思いますが」

「彼らは望んでこの町に住んでいるだけなのです! あえて住む必要など「おい!! 黙って聞いてれば! なんだお前たちは!!」……兵よ。あの者を排除せよ。シーラ様に近づけるな!」

偉そうに喋っていた男に、町のリーダー的な存在であった男、ジャックは怒りながら突撃した。

しかし、偉そうな男はジャックを兵隊に捕まえさせると地面に倒して、それ以上喋らせないようにする。

酷い横暴だ。

俺も怒りのままにあの野郎を叩きのめしてやると扉のすぐ向こう側にいる連中の前に飛び出そうとしたが、震えるレオニーに腕を掴まれ動けず、怒りを噛み締めたまま状況を見守るのだった。

いざという時はレオニーを隠して俺も突撃してやると思いながら。

しかし、そんなもしもは起こらなかった。

当然だ。あの場所にはいけ好かない国の連中だけでなく、シーラ様が居たのだから。

「ちょっ! 国王様!? 何をされているのですか!? 可哀想じゃないですか」

「シーラ様。この者はシーラ様に危害を加えようとしたのです。厳罰に処さねば」

「私にはその様に見えませんでした。何かを訴えるような雰囲気でした」

「そうでしょうか?」

「はい。もし違うとしても、兵隊さんが捕まえている状況なのですから、危害を加えるも何も無いでしょう。兵隊さん。お願いです。そちらの方がお話できるようにして下さい」

「……っ!」

「これでお話出来ますか?」

「感謝は言わないぞ」

「えぇ。構いません。ただ私がお話を聞きたいだけですから」

「チッ、お気楽なお姫様だ」

「なんと不敬な」

「やはり首を落とすべきだ!」

「皆さん。お静かに! お話が聞けません」
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