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第6話『接客業の闇再び』③

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何? ただお話するだけでしょ?

何がそんなに駄目なの。

口で言って欲しいんだけどなぁ。

ウィルベン王国の人たち、みんな全力で首を横に振ってるんだけど、ジェスチャーじゃなくてさ。口で話して欲しいんだけど。

「ふむ。どうやらありもしない疑いを持っている様だ。ではアイヴィを呼べ。エルフであるシーラ殿と友人になれるかもしれないとな」

オジサンは相変わらずニヤニヤと笑っているが、娘に友達を作りたいという気持ちで動いているのは分かる。

なら、それほど悪い人では無いのだろうか。

うむ。人を見た目で判断するなんて良くないな。

そして、アイヴィさんを待っている間も、ウィルベン王国の人たちは必死に何かを私に訴えていた。

しかし、分からない。

口で言わなければ、分からないでしょ!

「んー。もー。しょうがないですねぇ。どなたか一緒に来て貰えますか? 話を聞きます」

「承知いたしました! では私が!」

私が我慢できずに椅子から立ち上がりながら言った言葉に、オリヴァー君が反応するが、私が歩き出す前に皇帝さんが、待ったをかけてきた。

「おっと。城内で妙な行動は止めていただこう。敵対行動とみなすぞ?」

「……っ!」

そして歩き出そうとした私や、オリヴァー君の周りでキッフレイ大神聖帝国の兵隊さんが動き、私達に近づいて行動を制限しようとする。

戦いかと私はゴーグルを付けて、魔力を高めた……のだが、張り詰めた空気を破壊する様に、扉が勢いよく開き、一人の少女が部屋に飛び込んできた。

「お待たせしましたわ!!」

「……?」

「あぁ! そのお美しいお姿は! 輝く様な白銀の髪と、まるでお人形の様に小さくきめ細やかな肌! そして、伝承通りの長い耳! 間違いないわ! 貴方がエルフなのね!?」

「ふぇ?」

「私はアイヴィ! 私とお友達になって下さるというお話でしたよね!? では是非今からお部屋に行きましょう! お父様よろしいですか!?」

「あぁ、構わない」

「キッフレイ皇帝! その様な勝手な真似を!」

「フン。騒がしい連中だ。では聞こうではないか。エルフのシーラよ。我が娘アイヴィと話をしてくれるか? 何。話をするだけだ」

「え、えぇ。それくらいなら」

「シーラ様!!」

いや、そんなに怒らないでよ。

だってこの状況じゃあ断るのも難しいでしょ。

話するだけだって言ってるんだしさ。

私が居ても大して役に立たないし。

後はお願いしますという事で。

いや、いやや? 逆にこれはチャンスなんじゃないかな。

皇帝はわざわざ娘の友達に、なんて私に言ってくるくらいだ。

きっと娘の事を大切に思っているのだろう。

なら、娘であるアイヴィちゃんと仲良くなれば交渉も有利に運ぶのでは?

うーん。これは天才。

「では行きましょう! シーラさん!」

「はい。そうですね」

「シーラ様!」

「大丈夫ですよ。ただ話をしてくるだけですから」

私は笑いながら手を振って、部屋を後にするのだった。
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