上 下
65 / 66

第20話『……天斬り』(第三者視点) 4/5

しおりを挟む
「バカ、な」

「くっ、ここまでか!」

アダラードは天霧宗謙の敗北を察すると、すぐさま転移を使い、ドラゴンの上にとんで、そのまま天霧宗謙を連れて何処かへ消えた。

残されたドラゴンも、緩やかな風と共に塵となって消えてゆく。

まるで初めから存在していなかったかの様に。

ミラはそれを確認して、雪の上に赤い痕を残しながら倒れる瞬の元へ走り、その体を癒すのだった。

アダラードと天霧宗謙の野望は潰え、ヴェルクモント王国は今回の事件の功労者である天霧瞬とオーロを王城へと招いて、盛大なパーティーを開いていた。

しかし、パーティーだというのに、服を着替えもせずそのまま来たオーロと瞬に、会場の貴族はどう接したら良いか分からず、パーティーの食事を食べる二人を遠巻きに眺めているのだった。

「もう! 二人とも! 少しは周りを気遣う事も覚えて下さい」

「ん?」

「あぁ、ミラか」

「あぁ、ミラか。ではありません。なんですか。その恰好は! オーロさんもシュンさんも武器持ち込んでますし。服も旅で汚れてますし。お洋服は用意したでしょう?」

「あぁ、あれか」

「悪いな。着る気が無かった」

「もう! まったくもう!」

プンプンと怒るミラに二人は肉を食べながら、その肉を酒で流し込んで笑う。

正直な所、マナーは最悪の中の最悪であり、周囲は敬愛するミラ様が野蛮な者たちに何かされないかと心配し、オロオロとしているのであった。

そしてそんな貴族たちの願いを叶える様に、一人の男が三人の所へ来た。

そう。ヴェルクモント王国王太子セオドラーである。

「ハハハ。そう怒るな。ミラ。彼らは事件の功労者だ。格好くらい好きにさせてやれ」

「そうは言いますが殿下!」

「ほら。そんなに怒ってばかりいると、可愛いドレスが悲しんでしまうぞ。折角そんなに似合っているというのに」

「っ! そ、それは、その、ありがとうございます」

「うむ」

セオドラーは頬を赤らめて動揺するミラを見て満足げに笑うと、瞬とオーロに向き直り、友人と語らう様に話しかけた。

「オーロ殿。シュン殿。此度の件、非常に感謝している」

「気にするな」

「まぁ、偶然利害が一致しただけだ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】私の初めての恋人は、とても最低な人でした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:1,514

婚約者に嫌われているので自棄惚れ薬飲んでみました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:10,302pt お気に入り:215

結婚式の前夜、花嫁に逃げられた公爵様の仮妻も楽じゃない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:68,280pt お気に入り:2,894

緑の指を持つ娘

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:17,154pt お気に入り:2,067

処理中です...