異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-少女たちの冒険譚-

とーふ(代理カナタ)

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第16話『オーロさん。何かお話をしていただけませんか?』 1/3

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湖を翼で渡り、行きと同じく途中で翼が消えてしまった私は地面を転がり、そのまま空を仰ぎ見た。

涙が浮かぶのは地面を転がって痛かったからだ。

殿下の優しさを跳ね除けて、自分の想いばかり口にした私が、悲しい訳がない。

悲しんでいい訳がない。

「……っ、セオ……でんか」

唇を噛みしめて、瞼を強く閉じて涙を振り切る。

しかし、それでも涙はいつまでも溢れてきて、止まらなかった。



それから私はひとしきり泣いた後、オーロさんとシュンさんが待っている場所へと戻っていった。

二人は、私が出て行った時と同じく火の傍で目を閉じており、日常へと戻ってきたような気持ちになる。

まだ二人と出会ってから、それほど時間が経っていないというのに、不思議だ。

「終わったか?」

「はい」

「そうか」

シュンさんは片目を開き、感情の見えない瞳で私を見つめてから言葉を投げかける。

そして私が言葉を返すと、短く言葉を返してそのまま目を閉じた。

「ミラ」

「何でしょうか。オーロさん」

「コイツをやろう」

「これは……?」

「俺の弟分がな。よく食べていた物だったのだが、甘く美味いぞ。金平糖という菓子だ」

「こんぺーとー、ですか」

私はその不思議な形をしたお菓子を一粒口の中に入れて、目を閉じる。

すると、口の中に甘さがスッと広がって、心が温かくなるのだった。

「美味しいです」

「そうか。それは良かった」

オーロさんは私の頭に手を乗せながら、笑う。

その微笑みは、頼りになるお兄さんのようで、私は安堵してそのままその場に座るのだった。

「オーロさん。何かお話をしていただけませんか?」

「ふむ。そうだな。では、面白いか分からんが、家族の話をしようか」

「ご家族の話ですか?」

「そうだ。地面の上では冷たいだろう。こっちに来ると良い」

「……はい」

私はオーロさんの足の上に座らせてもらい、そのまま寄りかかって話を聞く事にした。

そしてオーロさんは緩やかに話を始める。

「前にも言ったがな。俺は戦場で生まれた。つまり両親の事も知らないし、兄弟なんかも知らない。だがな。ある時、そんな俺にも家族が出来たんだよ」

遠くを見ながら、懐かしい事でも思い出す様に呟く。

「ある戦場でな。ヘマをした俺は、動けないくらいの怪我をしてしまったんだ。それでな。戦場を離れて、街で休んでいたんだが、金も無くてな。俺は街の外れで一日を過ごしていた。俺の鎧が血に汚れていたからか、街の人々は俺を避けていた。それは別にその街の人間が特別だった訳じゃない。どこでも同じさ。好き好んで殺し合いなんてしている奴なんて近づきたくないと思うのが普通だ」
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