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第15話『私にとって、殿下と過ごした時間は何物にも代え難い宝物です』(セオドラー視点) 3/3

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かつて険悪であった双子も、ミラが生まれてからはこうして互いを尊重し合う様に……。

「おい。ハリソン。私がお前を褒めてやってるんだ。素直に受け取ったらどうだ?」

「何が褒めてやってるだ。面倒な事を私に押し付けているだけだろう。そうしてミラとの時間を独り占めしていた事を私は忘れていないぞ」

「細かい事を煩い男だな。ミラの為に働けるのだ。文句を言うな」

「ほぅ。それならば今後外へ向かう際にはお前を護衛として指名する様にしようか」

「なんだと!? 私が居なくなっては誰がミラを護るというのだ!!」

「ミラの護衛ならば、今まさにミラの護衛として動いている人間が二人いるでは無いか。ここまで何も問題は起きていない。とても優秀だ。これからもミラを護ってくれるだろう」

「ふざけるな! ミラは私が一生護っていくんだ。誰にも渡さんぞ! 国連議会が仕掛けた罠を全て粉砕し、私がミラを攫って世界を巡る旅に出る!」

「それこそふざけるな。お前では精々が冒険者をやって小金を稼ぐ程度。私ならばミラに街をくれてやることだって出来る」

「ハン! 街くらいなんだ。私なら容易く手に入れることが出来る!」

「言っておくが、暴力的な手段で手に入れた街などミラは喜ばないぞ。あの子が廃墟を喜んでいるのは、そこに歴史があるからだ。破壊を楽しんでいる訳じゃない」

「その程度の事、分かっている! 私はあくまで街の護衛として入りだな……」

私は終わらない二人の会話を眺めながらため息を吐いた。

変わっている様に見えて、それほど変わっていないという事か。

しょうがない奴らだ。

「まぁ、私なら国をミラに渡す事が出来るがな。騎士団の護衛付きだし、予算を調整すればミラの夢を叶える事も容易い」

「おい! セオ。汚いぞ」

「地位を利用するとは何事か! 誇りは無いのか。誇りは!」

「フン。愛とは戦争だよ。ハリソン、フレヤ……あ、いや。違ったな。義兄上殿。義姉上殿?」

「お前に姉と呼ばれる筋合いはない!」

「言っておくが、まだ君との結婚を認めた訳じゃ無いぞ。私は」

私はギャアギャアと騒がしい二人を放置し、これから聖戦に征くかの様な顔つきで待機している騎士たちへ視線を移した。

「さぁ。いよいよ我らの誇りを掛けた戦いが始まるぞ。形骸化した理想を語る者どもに、聖女の夢を奪わせるな! 皆……ヴェルクモント王国の未来を照らす王妃の為に命を捨てよ!!」

「「「承知いたしました!!」」」

私は騎士たちの声に応え、手を挙げる。

そして、まだ騒がしい二人をそのままに、決戦の地へ向かうのだった。

「おい! 何が王妃だ!」

「セオ! 聞いているのか! セオ!!」

呪われた運命から、聖女を救う為に。
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