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第14話『ミラ。二人きりで会いたい。ヘイムブルの、思い出の湖で君を待つ』 3/3

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同じじゃないのに、オーロさんはまぁ、似たような物だな。なんて言ってて、私はそんなんじゃないのに! と訴えた。

だが、二人は笑うばかりで何も分かってはくれなかった。

「しかし、ミラは結婚に対して大分夢があるようだな」

「それはそうですよ。綺麗なドレスを着て、大好きな人と一緒に過ごせる最初の第一歩ですよ。夢もありますし、願いだって大いにあります」

「そういう物か」

「そういう物です!」

「なるほどなぁ。しかし、確かミラは貴族の子だろう? 好きな相手と結ばれるとは限らないだろう?」

「それは確かにそうですが、まぁ、結婚する相手を好きになれば良いじゃ無いですか。どんな人だって良いところも悪いところもありますし。全てが完璧な人なんていませんよ」

「結婚に夢を見ている割には、妙なところで現実的だな」

「まぁ……そうですね。限られた世界で夢を見る様になったという所でしょうか」

「そうかい」

「ミラ」

「はい。何でしょうか。シュンさん」

「もし、お前が貴族の子だからと、嫌な相手と結ばれる事になるなら、俺を呼べ。世界の果てにまでだって逃がしてやる」

「……!」

真剣な眼差しで、私を射抜くシュンさんに、私は心の奥底から湧き上がる嬉しさを噛みしめながら、小さく頷いた。

その願いは叶わないと知りつつも、今この瞬間だけは、夢を見ていたかったのだ。

「そうですね。もし、そんな機会があれば、お願いします」



すっかり夜も遅くなってしまった時間に、私はふと聞きなれた人の声に目を覚ました。

それは私の持ってきた荷物から聞こえてくる声で、私はそれを手に取って、通信機の向こうに話しかけた。

「テステス。こちらメイラーのミラです」

『こちら、ヴェルクモントのセオ。ミラ。聞こえるか?』

「はい。聞こえておりますよ。殿下」

私は酷く懐かしいやり取りに、笑みを零しながら通信機をキュッと握りしめる。

「殿下……私は」

『ミラ。二人きりで会いたい。ヘイムブルの、思い出の湖で君を待つ』

「殿下……!」

私は通信機の向こうに呼び掛けるが、殿下はそれ以降通信機を切ってしまった為、私の声は届いていない様だった。

「……」

「ミラ。行きたいのだろう?」

「オーロさん」

「後悔しないコツはな。行動する事だ」

「シュンさん」

私はいつの間にか起きていた二人を見据え、強く通信機を握りしめた。

殿下への想いを心に描きながら。

「……私、殿下にお会いしたいです」

「あぁ」

「任せろ」
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