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第10話『これはリヴィアナ様の最後が記された書。言うなればリヴィアナ様自身です』(オーロ視点) 2/3
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「では探索しましょう! オーロさん! シュンさん!」
「あぁ」
俺はミラの言葉を合図にして、部屋の中にある書籍を一冊一冊確認する事にした。
何日ここに居るのだろうか。
もはや時間感覚もなくなってきたが、貯蔵されている書籍があまりにも多いため、俺たちは中を確認するのに想定より時間が掛かっていた。
「しかし、どれだけあるんだ?」
「おそらく二千冊から五千冊だと思います。ただ、調べるのはリヴィアナ様が直接記された書籍ですから、百冊程度ですね」
「百冊もあるのか……」
「はい。テオドール博士がその当時、あまりにも書く事が多いという事で自動書記の魔導具を造りまして、それを従妹のリヴィアナ様にもプレゼントしたとか。晩年は毎日の様に本を書いていた様ですね」
「なるほどな」
俺は今開いている日記の様な本を読みながら、頷く。
これが晩年に書いた物だろうか。と推察するのは、ひたすらに死への恐怖が綴られているからだ。
一部の突き抜けた人間以外、誰だって終わりは怖い物だ。
であるなら、このリヴィアナという人物も、ごく普通のどこにでもいるありふれた人間だったという事だろう。
どれだけ後世に名を残していたとしてもだ。
俺はチラっと、ミラを盗み見てこれからどうするべきかを考える。
少なくとも俺が見る限り、ミラは歴史に名を残した勇者たちの様な突き抜けた人間ではない。普通の子供だ。
かつて俺が家族となった子供たちと同じ、どこにでもいる普通の子供だ。
それが世界の為に使い潰される事が正しい事かと問われれば、間違っていると即座に返すだろう。
しかし、少なくとも本人はその未来を望んでいる。自分の夢を押し殺して。
「んあー。駄目です! これじゃあ!」
「どうした?」
「あー。いえ。見つけたんですよ。リヴィアナ様が遺したと思われる蘇生術を」
「っ! 本当か!?」
「はい」
俺は急いでミラの元へ駆け寄って、その書籍を受け取る。
一行ずつ確かめる様に指をなぞりながら、内容を確かめていった。
「人体蘇生術。魔力の使い過ぎや、過剰魔力の使用などにより胸の鼓動が止まった際の蘇生術……? 停止が確認されてからすぐに胸の圧迫を……ミラ。これは」
「はい。恐らくは命を落とした直後のみ有効な方法ですね。しかも欠損等がないという前提もありますし。状況は分かりませんが、オーロさんには」
「あぁ。俺の探している物じゃない」
「……そうですよね」
正直なところを言えば、初めから多くを期待していない俺は、こんな結果になろうとも、やはりかという気持ちしかない。
しかし、どうやらミラは違うようだ。
申し訳なさそうに俯いて、涙を滲ませている。
「ミラ」
「っ! っく、ご、ごめん、なさい。無理に、付いて来て、貰ったのに」
「泣くな。俺は気にしてない。夢みたいな話だったんだ。こうなる方がむしろ当然さ」
「でも、オーロさん」
「どの道、未来では会えるんだ。そう焦る事もない。そういう事なんだと俺は思うぜ。人間にはいつか終わりが来る。そうなればあの子たちにもまた会える。なら、今を生きる方が大事。そういう事かもな」
「っ」
慰めの様な事を言ったが、ミラはより涙を溢れさせて泣くばかりであった。
俺は鎧を解除しミラを抱きかかえると、泣き止むまでその背中を撫で続けるのだった。
どこか懐かしさを覚えながら。
「あぁ」
俺はミラの言葉を合図にして、部屋の中にある書籍を一冊一冊確認する事にした。
何日ここに居るのだろうか。
もはや時間感覚もなくなってきたが、貯蔵されている書籍があまりにも多いため、俺たちは中を確認するのに想定より時間が掛かっていた。
「しかし、どれだけあるんだ?」
「おそらく二千冊から五千冊だと思います。ただ、調べるのはリヴィアナ様が直接記された書籍ですから、百冊程度ですね」
「百冊もあるのか……」
「はい。テオドール博士がその当時、あまりにも書く事が多いという事で自動書記の魔導具を造りまして、それを従妹のリヴィアナ様にもプレゼントしたとか。晩年は毎日の様に本を書いていた様ですね」
「なるほどな」
俺は今開いている日記の様な本を読みながら、頷く。
これが晩年に書いた物だろうか。と推察するのは、ひたすらに死への恐怖が綴られているからだ。
一部の突き抜けた人間以外、誰だって終わりは怖い物だ。
であるなら、このリヴィアナという人物も、ごく普通のどこにでもいるありふれた人間だったという事だろう。
どれだけ後世に名を残していたとしてもだ。
俺はチラっと、ミラを盗み見てこれからどうするべきかを考える。
少なくとも俺が見る限り、ミラは歴史に名を残した勇者たちの様な突き抜けた人間ではない。普通の子供だ。
かつて俺が家族となった子供たちと同じ、どこにでもいる普通の子供だ。
それが世界の為に使い潰される事が正しい事かと問われれば、間違っていると即座に返すだろう。
しかし、少なくとも本人はその未来を望んでいる。自分の夢を押し殺して。
「んあー。駄目です! これじゃあ!」
「どうした?」
「あー。いえ。見つけたんですよ。リヴィアナ様が遺したと思われる蘇生術を」
「っ! 本当か!?」
「はい」
俺は急いでミラの元へ駆け寄って、その書籍を受け取る。
一行ずつ確かめる様に指をなぞりながら、内容を確かめていった。
「人体蘇生術。魔力の使い過ぎや、過剰魔力の使用などにより胸の鼓動が止まった際の蘇生術……? 停止が確認されてからすぐに胸の圧迫を……ミラ。これは」
「はい。恐らくは命を落とした直後のみ有効な方法ですね。しかも欠損等がないという前提もありますし。状況は分かりませんが、オーロさんには」
「あぁ。俺の探している物じゃない」
「……そうですよね」
正直なところを言えば、初めから多くを期待していない俺は、こんな結果になろうとも、やはりかという気持ちしかない。
しかし、どうやらミラは違うようだ。
申し訳なさそうに俯いて、涙を滲ませている。
「ミラ」
「っ! っく、ご、ごめん、なさい。無理に、付いて来て、貰ったのに」
「泣くな。俺は気にしてない。夢みたいな話だったんだ。こうなる方がむしろ当然さ」
「でも、オーロさん」
「どの道、未来では会えるんだ。そう焦る事もない。そういう事なんだと俺は思うぜ。人間にはいつか終わりが来る。そうなればあの子たちにもまた会える。なら、今を生きる方が大事。そういう事かもな」
「っ」
慰めの様な事を言ったが、ミラはより涙を溢れさせて泣くばかりであった。
俺は鎧を解除しミラを抱きかかえると、泣き止むまでその背中を撫で続けるのだった。
どこか懐かしさを覚えながら。
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